「仕事に没頭する拠点」と、「家庭を大切にする拠点」を分けるメリット。ー 田舎と田舎の二拠点生活4
2019.10.01 UP

「仕事に没頭する拠点」と、「家庭を大切にする拠点」を分けるメリット。ー 田舎と田舎の二拠点生活4

LOCAL

 小豆島にいる間は「仕事」が中心の生活。家事の大半は母に甘え、起きてから寝るまで仕事をしている。母には頭が上がらない。

 一方、夫がいる新拠点の幡豆にいる間は「家庭」を支えることが中心。家事をし、夫の仕事を手伝い、合間を見計らって私の仕事のタスクをこなしていく。私は、このメリハリを気に入っている。

自分に合った生活のリズムを探す。

 会社勤めなら会社の取り決めで「仕事」と「休み」のメリハリがつくかもしれないけれど、私も夫も個人事業主でオンとオフの線引きがそもそもない。

 それに加え、私は夫と出会うまで、遊びにも恋愛にも縁がなく、365日「起きてから寝るまで仕事」を行う仕事人間。いつも半年先まで仕事の予定を抱えていた。

 いざ夫(当初は彼)とつき合いだし、膨大な仕事を抱えたまま夫のいる幡豆に行くと、新しい暮らしに慣れなくてあらゆることがもたもた……。しかも仕事が溜まっていくのに、「私が彼の仕事を手伝ったほうがスムーズだな」「私がご飯をつくらなきゃ」と、お願いをされてもいないのに勝手に夫の仕事や家事を行う日々。

 キャパを完全に超えて「仕事が終わらない!」と、焦りを夫にぶつけたことも多々あった。夫はそんな焦りをいつも温かく親身に聞いてくれ、「いつもありがとう。今日のご飯は俺がつくるよ。仕事をして」などと私が仕事に没頭できるように動き、締め切りを守らせてくれた。その度に、幡豆にいる自分自身に「幡豆ではどのように生きるべきか」を問い、その度「家庭」を大切にしたいと想うのだった。

二拠点生活の思わぬ利点。

 夫を支えたい。新しい拠点である幡豆に馴染みたい。子どもができたらもっと仕事ができなくなるんだから、今から新しいライフスタイルを整えておきたい。

 焦りを抱えつつも、「家庭」の時間を大切にすると、仕事だけじゃ生まれない景色が広がり、気づきも多く、心豊かな日々になった。景色の広がりは見解を深め、気づきの多さは仕事上の説得につながった。私は、仕事を厳選して減らし、幡豆で「家庭」を大切にできる体制を考え、整えた。

 仕事には生きがいを感じる。家庭を大切にする時間は幸せだ。両方が大切なのに、拠点の空気に引っ張られて、どちらかに重きを置いてしまう、そんな不器用な私にとって二拠点生活は「仕事」に集中する期間と、「家庭」を大切にする期間、その両方にメリハリがつき、逆に今まで以上に充実させてくれる、うってつけのライフスタイルになっていた。

ある日の新米夫婦

 実は夫はシェアハウスを運営していて、私たち新米夫婦も「寝る」以外はシェアハウスで生活をしている。私がみんなにご飯をつくることもあれば、みんながご飯をつくってくれることもある。私が掃除を頑張れば、用事が延びて干したままになった洗濯物を、シェアメイトが取りこんでくれることもある。「一人でなんでもやらなきゃ」と思って生きてきた私にとって、刺激のある助け合いの日々。

記事は雑誌ソトコト2017年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

文 ● 黒島慶子
イラスト ● 宮本貴史

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黒島慶子 

くろしま・けいこ
醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときから小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、様々な人やコトを結びつけ続ける。2017年7月6日に、愛知県の幡豆で無農薬で大豆と米を育て、米・豆・麦の麹を作る『宮本農園・みやもと糀店』の宮本貴史と結婚。高橋万太郎との共著『醤油本』を出版。