新婚旅行として全国各地を巡り、見えてきた「心の距離」とは。ー 田舎と田舎の二拠点生活6
2019.10.03 UP

新婚旅行として全国各地を巡り、見えてきた「心の距離」とは。ー 田舎と田舎の二拠点生活6

LOCAL

 私たちは「新婚旅行」として、昨年の7月から3年かけて全国の発酵処を巡る予定だ。

 3年というのは「新婚さんいらっしゃい」に出演できる期間を参考にしている。

新婚旅行=挨拶と勉強の旅。

 そもそも世の新婚旅行は、いつもの旅よりちょっと贅沢な旅をし、回数も1回ぽっきり。結婚情報誌『ゼクシィ』によると、行き先1位はハワイ(30・7パーセント)で、2位はヨーロッパ(17.3パーセント)と、華やかな印象の場所が多い。

 それがなぜ長期にわたり何度も出かけ、行き先が発酵処なのか。まずは、夫が「麹屋」で妻が「醤油ソムリエール」と、お互い「発酵」に関わる仕事をしているから。そして、夫と話し合った結果、私たちが新婚旅行をする目的は「挨拶回りと勉強の旅をし、今後の夫婦生活の糧にすること」と結論づけたからだ。

 そこで、私が日頃から仲よくさせてもらっている全国の蔵元を中心に出かけることになった。1回目は三重県の伊勢へ。夫が「農家」という立場で毎年伊勢神宮に参拝しているから。2回目は関東へ。『ソトコト』編集部が東京にあるから(笑)。3回目は四国へ。小豆島の人に夫を紹介したいから。4回目は北陸+滋賀県へ。富山県にある『石黒種麹店』という種麹店で学び、麹の質を上げたいから。愛知県の蔵元はタイミングを見てコンスタントに訪ねている。

 これまで訪ねた発酵処は、醤油蔵やみりん屋、酒蔵や麹屋、お酢屋や桶屋、発酵茶の生産者やビール工場、発酵食品の研究所や販売店など約30か所にわたる。

物理的な距離よりも、心の距離が大切。

 ありがたいことに行く先々で温かく迎え入れてもらっている。蔵だけではなく地域を案内してくれたり、ご飯をご馳走してくれたり、次の蔵まで車で送り届けてくれたり、中には泊めてくれる蔵元も。挨拶と勉強ができるだけで理解が深まり、心惹かれるが、こうやって人と触れ合う時間が積み重なると、より一層心の距離が縮まっていく。

 旅をして実感していることは、「地域間の線引きや壁はあるようでない。あるのは、その土地に根付く歴史と文化。そしてその土地で暮らす人がいる」ということだ。

 全国各地を旅し続け、小豆島と愛知を行き来している私にとっては、全国各地に家族のような人がたくさんいる。一方、これまでの人生では、隣の家の人と一度も顔を合わせないまま終わったこともあったし、同級生のなかでも近く想える人と遠く感じる人はいた。大切なのは物理的な距離ではなく、心の距離なのだ。そんな思いを胸に「私たちの新婚旅行」はまだまだ続く。

 さ、私たち夫婦は別々の場所にいることが多い分、心だけは傍にないと!(笑)。

ある日の新米夫婦

 新婚旅行で学んだことをシェアしたい。素晴らしい蔵元を知ってもらいたいと強く思い、「新婚旅行という名の発酵旅」というWebサイトを立ち上げて写真と動画と文章で記録している。ありがたいことに、カメラメーカー『オリンパス』が「オリンパスアンバサダー」としてカメラを貸してくれており、2018年2月末〜3月始めには東京にあるオリンパスプラザで展示をする予定だ。

文 ● 黒島慶子
イラスト ● 宮本貴史

記事は雑誌ソトコト2018年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

キーワード

黒島慶子 

くろしま・けいこ
醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときから小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、様々な人やコトを結びつけ続ける。2017年7月6日に、愛知県の幡豆で無農薬で大豆と米を育て、米・豆・麦の麹を作る『宮本農園・みやもと糀店』の宮本貴史と結婚。高橋万太郎との共著『醤油本』を出版。