佐渡島の『café ガシマシネマ』店主|堀田弥生さんが選ぶ『地域を編集する本』
2021.05.25 UP

佐渡島の『café ガシマシネマ』店主|堀田弥生さんが選ぶ『地域を編集する本』

SUSTAINABILITY

「人生をイメージするのが好き。そのイメージづくりを手伝ってくれるのが映画と本」と、映画と本の共通性を語る堀田弥生さん。なかでも絵本は、絵の力やおもしろさからどんどんイメージが膨らんでいくんですと、とっておきの本を選んでくれた。

堀田弥生さんが選んだ、地域を編集する本5冊

(左上から時計回りに)2.『ぶたぶたくんのおかいもの』/1.『だいちゃんとうみ』/3.『君だけのシネマ』/4.『そして映画館はつづく』/5.『庭をつくろう!』 

 人生は近く(クローズアップ)で見ると悲劇だが、遠く(ロングショット)から見れば喜劇だ」と、チャーリー・チャップリンは言いました。私は、人は大なり小なり“自分の物語”を生きていると思っています。先の言葉は、たとえ辛い苦労や失敗があっても、自分の思い描く結末への通過点として見れば、大概笑い話となって乗り越えていける、と解釈しています。そんな“自分の物語”をイメージするのに、映画や絵本は少なからずヒントを与えてくれるのではないか、と最近思うのです。なので、選書の依頼を受け、真っ先に思い浮かんだのが絵本でした。絵本を中心に、私が映画館をつくる過程で無意識に影響を受けた気がする本を紹介します。

『だいちゃんとうみ』は、海の近くの集落に暮らすいとこの家に遊びに来ただいちゃんのひと夏の思い出を描いた物語で、私が東京から新潟県・佐渡島に移住したきっかけになった出来事とイメージがぴったり重なります。佐渡島にいた知人のところに遊びに来た時、海の岩場に潜り、獲った魚介をその場でさばいて食べたのですが、そのおいしさが五臓六腑に染み渡りました。私は感動し、「子どもたちにも幼少時にこのような自然体験をたくさん積んでほしい」と、その後の暮らしを思い描き、二人目の子どもの出産をきっかけに佐渡島へ移住しました。

 2017年に立ち上げた『café ガシマシネマ』は、かつて佐渡金山で栄えた旧・相川町(現・佐渡市)の旧・鉱山住宅をリノベーションしています。シネマスペースの観客席は20席ほど。映画館と呼んでいいのかというほどの小さな規模ですが、相川のまちの規模感には合っていると思います。小さなまちの小さな映画館という感じ。映画のチケットは1本1200円。実際に住んでみて、物価や家賃、席数、消費税の増税等々を鑑み、試行錯誤した末、今の値段設定に落ち着きました。『ぶたぶたくんのおかいもの』で、ぶたぶたくんが買い物をするまちも、歩いて一周すればその日の食べ物は手に入るという小さなまち。映画館は現在、都市部に偏在しているのが実情ですが、まちの規模に合わせた映画館運営をしていけないかと、試行している真っただ中です。

 そんな『café ガシマシネマ』をモデルに、一冊の本が誕生しました。相川ご出身の高田由紀子さんが書かれた小説、『君だけのシネマ』です。当店の雰囲気や佐渡の風景を感じることができます。手に取って読んでみてください。

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photographs by Yuichi Maruya text by Kentaro Matsui

記事は雑誌ソトコト2021年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。