愛媛県西条市の移住ガイドブック「We LOVE SAIJO Life」表紙。全14ページ・A5・フルカラー
2021.05.23 UP

住みたい田舎“日本一”のまち愛媛県西条市に一家移住を決めた二児の母、その条件とは

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愛媛県西条市が2021年3月に発行した移住ガイドブック。14ページからなるこの冊子の表紙には「住みたい田舎“日本一”のまち愛媛県西条市のリアルな暮らし」とキャッチコピーが堂々と記されている。
それもそのはず、愛媛県西条市は宝島社発行『田舎暮らしの本』(2021年2月号)の「2021年版住みたい田舎ベストランキング」で史上初の4冠、若者世代部門で2連覇を達成したのだ。
そんな西条市移住ガイドブックの表紙で仲睦まじい家族写真が掲載されているのは2020年、西条市に東京から一家四人で移住した近藤家。二児の母である近藤優依さんに移住先選びに欠かせなかった“リアルな”条件を聞いた。

住みたい田舎“日本一”のまち愛媛県西条市

愛媛県西条市。北は穏やかな瀬戸内海に面し臨海工業地帯がある一方、南には日本百名山に数えられる西日本最高峰・石鎚山(1982m)がそびえ立つ。
県庁所在地松山市から車で約1時間。海と山との距離がコンパクトで地下水源にも恵まれる自然環境豊かな人口11万人の地方都市だ。

愛媛県西条市を一望した風景(【LOVE SAIJO】愛媛県西条市への移住・定住サポートサイトより)
愛媛県西条市を一望した風景(【LOVE SAIJO】愛媛県西条市への移住・定住サポートサイトより)

 

その愛媛県西条市は、2021年3月に移住ガイドブックを発行した。14ページからなるこの冊子の表紙には「住みたい田舎“日本一”のまち愛媛県西条市のリアルな暮らし」とキャッチコピーが堂々と記されている。

愛媛県西条市の移住ガイドブック
愛媛県西条市の移住ガイドブック「We LOVE SAIJO Life」表紙。全14ページ・A5・フルカラー


それもそのはず、愛媛県西条市は宝島社発行『田舎暮らしの本』(2021年2月号)の「2021年版住みたい田舎ベストランキング」で史上初の4冠、若者世代部門で2連覇を達成したのだ。

「田舎暮らしの本」での快挙を伝える画像(【LOVE SAIJO】愛媛県西条市への移住・定住サポートサイトより)
「田舎暮らしの本」での快挙を伝える画像(【LOVE SAIJO】愛媛県西条市への移住・定住サポートサイトより)

このニュースをソトコトオンラインでは以下のように報じた。

宝島社(千代田区)が発行する『田舎暮らしの本』(2021年2月号)の中で「2021年版 住みたい田舎ベストランキング」が発表され、人口10万人以上の「大きな市」グループで、愛媛県西条市が総合部門・若者世代部門・子育て世代部門・シニア世代部門の全4部門において全国1位、史上初の4冠を獲得しました。4部門の中でも若者世代部門では昨年に引き続き2連覇も達成しています。
https://sotokoto-online.jp/4035

記事では『田舎暮らしの本』が紹介した西条市の住みやすさを以下のポイントでまとめている。

・西日本最高峰の石鎚山がもたらす名水百選「うちぬき」が各所で湧く「水の都」
・瀬戸内海に面し、豊かな自然に恵まれ、人気のアウトドアアクティビティが充実
・四国屈指の農業・工業都市で求人も豊富
・四国第1位の合計特殊出生率(1.75)、ICT教育など、就労・子育て環境も充実


また行政によって「積極的かつ時代に即した移住支援を用意し、移住者と地元の人との交流を促進することにより地域が活性化され、より住みやすい田舎まちになるという好循環が生れている」としている。

さて西条市移住ガイドブック「We LOVE SAIJO Life」の表紙で仲睦まじい家族写真が掲載されているのは、2020年に東京から一家四人で移住した近藤家。

ガイドブックでは5組の移住者を代表して「西条市役所移住推進課のサポートの手厚さが移住の決め手だった」と振り返っているが、今回二児の母である近藤優依さんに移住先選びに欠かせなかった“リアルな”条件を詳しく聞いた。

 

検討した移住先は、巡り巡って夫の出身地「愛媛」

近藤優依さん(以下、優依さん)「それまで地方の方とお付き合いしたことがなかったので、当時愛媛出身の近藤さんと聞いて、オッ!と思いました(笑)」

夫・近藤信也さんとの出会いをそう振り返る近藤優依さん38歳。

札幌で高校卒業までの18年間を過ごし、美大進学のため上京。そのまま学生時代から手伝っていた映画美術助手として働きだした。
その後東京では私立高校の教職員を経て、アパレルメーカーのデザイナーとして勤めていた。

転機は教職員時代、カメラマンの夫・信也さんと結婚直後の2011年に訪れた。東日本大震災で被災したのだ。

優依さん「東京ってそんなに被災してないって思われがちですけど、うちは団地の4階で。ビルにヒビが入って、家具も倒れて。水道管が破裂して断水もしました。それで愛媛の夫の実家に一時避難したんですよ。」

被災の経験は大きく心を動かした。
互いに山あい育ちで、ずっと東京に居るつもりもなかった近藤夫妻だったが、これ機に移住を検討し始めた。しかし優依さんはどこか本気ではなかったという。

優依さん「検討したのは奈良、和歌山、山梨、長野・・温泉旅行しつつ探して。いいところだな、住んでみたいな、とは思いましたけどね。私の中ではどこかで『愛媛』の存在があったんですよ。結婚以来毎年お盆には夫の里帰りで愛媛に来ていて、なんて良いところなんだろう、なのになんで夫は帰らないんだろうって思ってましたから」

その後一男一女に恵まれた近藤家。移住したい気持ちはありながら東京で子育てをする毎日。
一方夫はいつでも移住ができるようにと会社を辞め独立。フリーカメラマンとなっていた。
2018年頃、その夫が突如「愛媛に帰る」と言い出したという。

お盆に愛媛に帰省。付近の川で遊ぶ
お盆に愛媛に帰省。付近の川で遊ぶ

優依さん「それまでは絶対帰らないって言ってたんですけどね。両親も高齢になってきて、そばに居たいって感じたんだと思います。私は彼が愛媛に帰るって言ったタイミングで移住を本格的に進めよう、と待ち構えていました」

それから愛媛県での移住先探しを開始する。
移住サイトでの検討や空き家バンクでの家探しを経て、夫が幼少期を過ごした地域にほど近い西条市内の住居の購入を決めた。

近藤家が空き家バンクで出会った住居
近藤家が空き家バンクで出会った築100年の古民家

優依さん「愛媛に決めたとはいえ、夫の実家の近くとまでは決めていませんでした。4つくらいの市や町を検討していて、2019年の春と夏には候補の家をいくつか見に訪れました。秋には西条市の主催する移住ツアーに参加して、それで決めました」

この移住ツアーは、移住希望者が一泊二日・費用負担なしで市内のあちこちを見学し、移住の先輩や地域住民と交流して移住の不安を取り除き、移住後の生活をイメージしてもらうという西条市の目玉企画である。

優依さん「街中も里山も色々見せてもらいました。担当の方もゴリ押ししてこないのが良かったですね。でも西条の魅力について語り出したら止まらない、熱い方でした(笑)」

2020年6月に無事愛媛へ一家四人での移住が完了した近藤家。西条市内のなかでも里山の広がる自然豊かな丹原地区で、海も一望できるロケーションで暮らしている。

瀬戸内海を一望できる移住先付近からの眺め
瀬戸内海を一望できる移住先付近からの眺め

全国各地を検討し、やがて夫の出身地・愛媛県に絞って移住先を決めた近藤家。
優依さんが外せなかった移住先の条件を聞いた。

条件その1:ゆるやかな子育て環境

優依さん「私自身、昔から人が多いのが苦手で。2クラスの小学校から転校した先が3クラスあって、それでしんどい思いをしたんですよね。子供らの通学予定先は学校全体で40人と聞いて、最高じゃん!って思いました」

東京で暮らしていた地域では子供に中学受験させるのが当たり前の環境だったという。

優依さん「小学2年生から塾に行く子も多くて。そんな小さな頃から子供の将来を決めたくないと思いました。子供が好きなように、したい時にしたいことをすればいいって」

周囲の子の様に、都会で習い事に週五回通わせるとなると教育コストもそれなりにかかってくる。

優依さん「同じようなことはしてあげられないので・・そうすると自分もしんどくなるな、と思いました」

競争から少し離れ、ゆるやかな子育て環境を望んだのである。

条件その2:目指すはオフグリッド。家庭菜園のできる、山が近くの庭付き一軒家

二つ目の条件は住宅環境だ。震災以降「海」に対して恐怖心を抱くようになってしまった優依さん。海からなるべく距離を置き、かつ自身の原風景でもある山が見える生活を求めた。空き家バンクでたどり着いたのは庭付きの一軒家。築100年の古民家だ。

優依さん「札幌の実家付近がそうだったんですけど、山が見えると落ち着くんですよね。東京じゃ見えなくて。それと自給自足とまではいかないですけど、食べるものを作りたいなと。家庭菜園ができるくらいの庭が欲しかったです」

電気・ガス・水道のライフラインをできるだけ依存せず、オフグリッドな生活を志向する優依さん。庭では井戸が掘れることも確認済みだ。

優依さん「震災の影響が大きくて。最低限の生活が自分たちでできればとは思ってますね。薪ストーブを設置してガスの消費量も減りました。今は太陽光発電にも興味があります。家はいかにカスタムできるかという視点でも選びました。梁や骨組みがしっかりしていれば、色々バラして改装できます。自分の生活空間を自由にできるのが嬉しいですね」

改装中の自宅
改装中の自宅

ところで長男が生まれて以来アパレルメーカーのデザイナーとしてリモートワークで働いていた優依さん。移住を決め会社に引っ越すと伝えると、そのまま愛媛でも働いて欲しいと打診された。

優依さん「インターネットがあってそのまま愛媛でも仕事を続けられてますね。会社には感謝です。でもネット環境が無いっていう地区もあるって後から聞いてビックリしました」

引越し以来近藤家は自宅を大工さんらとともに改装し、写真館として撮影スタジオの完成にまで漕ぎ着けた。優依さんの仕事だけに限らず、カメラマンである夫・信也さんの仕事にもインターネットは必須である。

自宅の一角を夫婦で営む写真スタジオとしてオープンした
自宅の一角を夫婦で営む写真スタジオとしてオープンした

条件その3:あたたかさは豊かさ

優依さん「北国育ちなので、あたたかさには憧れがあるんですよね。あたたかさイコール豊かさだって思います。実際移住してみると、住んでいるところは山に近いので、愛媛も冬はそれほどあったかくなかったですけど(笑)あとは温泉がとにかく好きで。近くに温泉がたくさんあるのも条件ですね(笑)」

柑橘栽培の盛んな四国・愛媛には温暖なイメージがある。実際多くの場所は気候が穏やかだが、四国山地は急峻で、標高が高く冬の寒さの厳しい居住地もあるのだ。また日本最古と言われる道後温泉が最もメジャーだが、他にも温泉は愛媛に広く分布している。優依さんはお盆の帰省や住居探しの都度温泉を楽しんだという。

さてこのような物理的な暖かさだけでなく、周囲の精神的な温かさはどうだろうか。例えば移住先のコミュニティやそこに属する人々の人柄について。コミュニティが閉鎖的かどうかは気になったか?という質問をした。

優依さん
「それはもちろん気になりますけどね。でもそれは(コミュニティに)入っていくしか無いですよね」

移住を決めたからには覚悟をして来たという優依さん。

「あたたかさが豊かさ」という優依さんが地域に溶け込み、愛媛の人や風土の「あたたかさ」に触れた時、移住生活はより豊かなものになるはずだ。

最後に移住して約一年の感想を聞いた。

優依さん「大満足です」

即答する優依さんからは自ら前向きに移住生活を豊かにしようとする意思を感じた。その自信は自分に課した条件がクリアになった移住先だからでもあるだろう。

優依さんの移住に外せなかった条件は「子育て環境・住宅環境・あたたかさ」だ。この3つが揃うのが「移住したい田舎ナンバーワン」の愛媛県西条市だったのだ。

一家四人で。完成したスタジオにて
一家四人で。完成したスタジオにて

 

文:皆尾裕
写真:近藤信也、近藤優依、皆尾裕
取材協力:山山写真館、西条市
http://yamayama-photostudio.com/