古くて新しい文化的長屋暮らし。千鳥文化 ーSUSTAINABLE DESIGN
2019.10.08 UP

古くて新しい文化的長屋暮らし。千鳥文化 ーSUSTAINABLE DESIGN

LOCAL

 文化住宅と聞いてその姿が浮かぶ人はどのくらいいるだろうか? なんとなく聞いたことがあるという人も、文化住宅と呼ばれるものが2つあることまで知る人は少ないかもしれない。一つは関東に大正期に流行った洋風住宅で、『となりのトトロ』に出てくる「サツキとメイの家」がまさにこの文化住宅である。

 もう一つの文化住宅は、1950〜60年代につくられた集合住宅のことで、高度経済成長で都市に集まる労働者向けにつくられた。より「文化的な」長屋ということでそう呼ばれたらしい。長屋との違いは、共用だった便所や台所を各住戸につくった程度だが、大工さんがあれこれ工夫をしながら1つずつ建てていったので、不思議な味わいがある。近畿圏を中心にたくさんつくられたが、いまや“絶滅危惧種”である。

「千鳥文化」 住所:大阪府大阪市住之江区北加賀屋5-2-28 施工年: 2017年
「千鳥文化」 住所:大阪府大阪市住之江区北加賀屋5-2-28 施工年: 2017年

 「千鳥文化」は、そんな長屋型の文化住宅に新しい命を吹き込もうというプロジェクトである。外壁を取っぱらっただけにも見える大胆な「引き算のデザイン」だ。引き算で創造的な空間をつくるには、決断の思い切りのよさが重要になるが、そのあたりは2009年から「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ(KCV)構想」を仕掛ける不動産屋の『千島土地』と、初期から構想に関わる建築家ユニット『dot architects』の阿吽の呼吸が素晴らしい。

 「千鳥文化」は暮らしにおいても長屋に新しい命が吹き込まれている。例えばバーには街に暮らすクリエーターがバーテンダーとして立つのだが、バーに立つだけでなく、建物の裏手のシェア農園で農作業もするのだという。ふらっと「千鳥文化」に飲みにいったら、たまたまアーティストのレクチャーをやっていて、裏の農園で採れた野菜を食べつつ、レクチャーを聞いてみる。そんな創造的な暮らしが、この場所では日常になっている。

記事は雑誌ソトコト2019年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

©Yoshiro Masuda

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藤原徹平

ふじわら・てっぺい
建築家。1975年横浜生まれ。2009年より『フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所』主宰。2010年より『一般社団法人ドリフターズインターナショナル』理事。建築、地域計画、まちづくり、展覧会空間デザイン、芸術祭空間デザインと領域を越境していくプロジェクトを多数手がける。2012年より横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞など。