未来のファッションの“Good”を探る。エシカルファッションの“ミュージアム”で、学ぶこと。
2019.10.17 UP

未来のファッションの“Good”を探る。エシカルファッションの“ミュージアム”で、学ぶこと。

DIVERSITY

地球環境にも生産者にも”Good“でありながら、ファッションビジネスで経済的利益も上げる──。2018年、アムステルダムにオープンした施設『Fashion For Good』では、世界中の企業のそうした先進的取り組みが紹介されています。

ファッションビジネスに、”Good“なイノベーションを。

 『Fashion For Good(ファッション・フォー・グッド)』は、2018年にオープンしたファッション業界の未来に向けた取り組みを育成する施設だ。そして地球環境や社会、労働環境に配慮したファッション業界やアパレル製造業の取り組みを数多く展示している。そのため「エシカルファッション・ミュージアム」としても知られている。出展企業には『Adidas(アディダス)』のようなグローバル企業から、次の担い手として注目されている新興企業も含まれている。

歴史を感じさせる建物の中に、カラフルな展示空間が広がっている。展示では、服作りにおける新しい気づきを与え、生活の中でも服を着る・服を買うときに意識的になるよう、仕掛けられている。
歴史を感じさせる建物の中に、カラフルな展示空間が広がっている。展示では、服作りにおける新しい気づきを与え、生活の中でも服を着る・服を買うときに意識的になるよう、仕掛けられている。

 『Fashion  For  Good』は共同創業者のウィリアム・マクダナーさんが、欧州の大手ファッション企業(シー・アンド・エー・ファウンデーション)の財団『C&A Foundation』や『Bestseller(ベストセラー)』、『Kering(ケーリング)』ほか、グローバル企業から出資を受けて設立された。彼は「クレイドル・トゥ・クレイドル(Cradle to Cradle)」という考え方を提唱した人物としても知られている。「クレイドル・トゥ・クレイドル」とは「ゆりかごから、ゆりかごまで」を意味し、一つの商品の製造に使用された資源を廃棄せず、リユースやリサイクルを通して、もう一度資源として活用するという考え方だ。世界では毎年大量の衣類が廃棄されており、そうした衣類をもう一度資源として活用できれば地球環境によいだけでなく、企業としても新たに資源を調達するよりも費用を抑えられるとして考え出された。

 『Fashion  For  Good』では、そんな企業の取り組みを「クレイドル・トゥ・クレイドル」やエシカルファッションの側面から紹介している。また、館内の案内を担当するアンネロ・クレヴァント・グロエンさんによると、ここでの体験は学びとして持ち帰ることもできるという。来館者が入り口で受け取るブルーの腕時計型ブレスレットを腕にはめ、展示物の側のタッチポイントにかざすと、その展示情報をブレスレットが記録。退館時に自分のメールアドレスに送信すると、日常でもファッションのことを考えるきっかけになるという仕掛けになっている。

上/腕時計型ブレスレットを受け取り、そこから“Good Fashion Journey”体験がスタート。左/各箇所に設置されている腕時計型ブレスレットをかざすタッチポイント。中/腕時計型ブレスレットは施設の入り口で受け取る。右/施設案内担当のアンネロさん。
上/腕時計型ブレスレットを受け取り、そこから“Good Fashion Journey”体験がスタート。左/各箇所に設置されている腕時計型ブレスレットをかざすタッチポイント。中/腕時計型ブレスレットは施設の入り口で受け取る。右/施設案内担当のアンネロさん。

”Good”と捉える、5つのファッションの観点。

 アンネロさんによると、『Fashion  For  Good』は素材・経済・エネルギー・水・生活の分野で「5つの”Good“」を理念に掲げており、展示されているものもそのいずれかの”Good“を推進しているものが選ばれているという。「5つのGood」のうち「Good Materials(よい素材)」とは、可能な限り有害な化学薬品を使用せず消費者にとって健康な素材であること。また、使用済み衣類が、リユースやリサイクル可能であれば「よい素材」に該当し、この点は「クレイドル・トゥ・クレイドル」の理念にも合致している。2つめの「Good Economy(よい経済)」とは、地球環境や健康に配慮した衣類でありつつも、経済的な利益も生み出せるものが対象だ。「Good Energy(よいエネルギー)」は、将来的な枯渇が不安視されている石油や災害リスクの高い原子力ではなく、自分たちの地域で安全に生み出すことができる再生可能エネルギーが評価されることを提唱している。「Good Water(よい水)」はファッション業界が与える水汚染への影響を減少させ、地球上のすべての人が安全な水を手にできるような取り組みを対象としている。そして5つ目の「Good Lives(よい生活)」では、生産者の労働環境を安全に整備し、公平な賃金を支払うことで、生産者にもよい生活がもたらされることを評価の対象としている。

最新の技術が取り入れられている製品のため、展示方法にも未来を感じさせる工夫がなされている。
最新の技術が取り入れられている製品のため、展示方法にも未来を感じさせる工夫がなされている。

描いた”Good”は、少しずつ現実に。

 また『Fashion For Good』では「5つの”Good“」の理念に共感する個人が利用できるコワーキングスペースやシェアオフィスの提供、企業を招いたトークイベントなども行っている。こうした活動は、大きな企業と新興企業をつなぐネットワーキングの役割も果たしている。例えば『Bext360(ベクスト360)』と欧州ファッション業界で力を持つパートナーとの協定を結ぶサポートだ。『Bext360』は、コットンが生産者から製造業者、小売業者を経て、消費者に渡るまでの情報を最先端技術で管理する方法を発案した新興企業で、この協定でより一層大きな市場をターゲットにできるようになった。

 このように、グローバル企業の中からも、「5つのGood」に賛同し、新興企業とパートナーシップを結ぶ企業も現れてきている。この施設が描いた提唱は、少しずつ実現されつつある。

展示から学ぶ「5つの“Good”」。

Good Lives

劣悪な労働環境による事故の例。

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Good Water

衣類製造現場での節水技術を紹介。

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Good Energy

再生可能エネルギーの導入事例。

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Good Economy

ビジネスモデルの事例紹介。

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Good Materials

素材の元となるものに触れる展示。

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Information
Fashion For Good
Rokin 102, 1012 KZ Amsterdam
月〜金曜:11:00〜19:00/土・日曜:11:00〜18:00
なし
https://fashionforgood.com

記事は雑誌ソトコト2019年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

photographs by Yuki Inui
text by Akihiro Yasui

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