かわさき市民アカデミー(神奈川県川崎市) ー ソーシャル系大学案内 第40回
2019.10.17 UP

かわさき市民アカデミー(神奈川県川崎市) ー ソーシャル系大学案内 第40回

SOCIAL

ソーシャルでエシカルな関心をもつ人を惹きつける、街の中に広がる学びの場「ソーシャル系大学」。
今回は市民大学の老舗、年間受講生約7000人という全国でも最大級の生涯学習機関である『かわさき市民アカデミー』を取り上げる。
1993年の設立から市の生涯学習財団が運営してきたアカデミーは、2011年からはNPOによる運営となり、以前にも増して企画運営に市民が関わる協働の仕組みが出来上がっている。
2018年に設立25周年を迎えた『かわさき市民アカデミー』の地域協働講座を見学した。

川崎市に暮らす人々が時間をかけて育んできた、“市民の、市民による、市民のための”「大学」。

 タワーマンションが立ち並び、ファッショナブルな装いの家族連れが行き交う武蔵小杉駅から徒歩で10分ほど離れた住宅街に、『川崎市生涯学習プラザ』はある。この建物で25年間、雨の日も雪の日も開講されてきた伝統ある市民大学が『かわさき市民アカデミー』である。アカデミーの構想は1970年代、川崎市に公立大学をと願う市民を中心に市立大学設立構想が練られたことから始まっているという。

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 1993年に開学したアカデミーが当初、目指していたのは、受講生が「自立した市民」に成長するための場所であること。そのため専攻によっては講義だけではなくゼミもセットで開講され、受講生同士が切磋琢磨しながら学び合う仕組みが導入されている。開講科目は、政治、社会、経済、心理、福祉、教育、文学、思想、歴史、音楽、美術、生命科学、環境等、多岐にわたる。特徴的なのは、これらの講座編成を、受講生の有志が大学教員や研究者とともに担っている点である。第一線で活躍する各分野の研究者たちが現代的で高度な課題について市民と膝を付き合わせて学び合うというスタイルが、現在も脈々と受け継がれている。

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 2018年11月下旬に開催されていたのは、地域活動に関心を持つ人たち向けに企画された講座の、「行政との協働事業〜具体的取り組みの事例紹介と『生きがい就労』」という授業だった。講師の大下勝巳さんは、全国初の事例として知られる1982年に設立された『おやじの会いたか』を立ち上げ、後に川崎市宮前区で初の民間出身の区長を務めたことでも知られる。地域全体の健康寿命を延ばすためには、人と関わり合うこと、そして誰かのために動くことがどれだけ有効なのかがよく伝わる授業だった。

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 受講していたのは、アカデミーに何度も通っているという人から、地域活動に興味を持ち初めて参加したという人までさまざまで、授業後もどうすれば地域で孤立している人にアプローチできるのか、若い世代とどのように活動を共にすることができるのか、と熱心な質問が相次いだ。かわさき市民アカデミーは評判どおり、川崎市に暮らす人々が時間をかけて育んできた、“市民の、市民による、市民のための”「大学」である。

かわさき市民アカデミー
神奈川県川崎市中原区今井南町28-41川崎市生涯学習プラザ3階
HP:http://npoacademy.jp

記事は雑誌ソトコト2019年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

写真・文●坂口 緑
illustration by Verve Iwashita

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坂口 緑

さかぐち・みどり
明治学院大学社会学部教授。2000年、東京大学大学院博士課程単位取得退学。
研究領域は生涯学習論。共著に『ポストリベラリズム』、共訳書にアーリー・ラッセル・ホックシールド『タイム・バインド』など。