まなマルシェ(東京都港区) ー ソーシャル系大学案内 第39回
2019.10.18 UP

まなマルシェ(東京都港区) ー ソーシャル系大学案内 第39回

SOCIAL

ソーシャルでエシカルな関心をもつ人を惹きつける、街の中に広がる学びの場「ソーシャル系大学」。今回は東京都港区が「みなと学びの循環事業」として取り組む『まなマルシェ』を取り上げる。昼間人口ランキング不動の第1位に輝く働く人のまち・港区に、夜、大人が集まり自由に学び合う場をと始まったプログラムである。
この『まなマルシェ』には、筆者もコーディネーターとして3年前から関わってきた。
秋に控えた数々のイベントに向けて徐々に熱気を帯びるミーティングを見学した。

自分たちのアイデアを持ち寄り、話し合い、企画を立て、それを実現する。

  ビジネスパーソンで賑わうJR新橋駅から徒歩1分のところに、港区立生涯学習センター『ばるーん』はある。小学校の統廃合により113年の歴史の幕を閉じた桜田小学校の校舎を利用して、1998年に開館した港区の生涯学習施設である。教室の面影を残す一室で、月に1回、港区在住・在勤・在学の多様な人が集まる『まなマルシェ』の会合は開かれる。集まってくるのは、港区在住で各地の地域活動に関心を持つ60代、70代の人たち、港区内の企業に勤める会社員、そして港区内の大学に在学している学生など、関心も年代の異なる20名のメンバー。ここは、区民が区民のための学びを考えながら、企画の実現を通して自分たちの学びを深める実験室である。

本文画像

 運営を担当する港区の寺﨑周子さんと三輪さんによると、この事業は、すでに十分な学びの機会に恵まれた都市の住民に区として何ができるのかというところから始まった。課題として共有されていたのは、区民の学びが循環するシステムを構築することだったという。

本文画像

 『まなマルシェ』では、趣味を極めるタイプの習いごと、誰かに何かを教えてもらう講座ではなく、能動的な学び、すなわち自分たちのアイデアを持ち寄り、話し合い、企画を立て、それを実現する、という一連のサイクルを通して、学びの成果が区民に還元されるような生涯学習の循環を目指している。

本文画像

 今年の秋から冬にかけて実現しようとメンバーが持ち寄った企画には、港区をもっと知るための手づくり検定試験「知っとこ!みなと」、「全国交流物産展in新橋」に出展する地方自治体と港区民との交流を図るトークイベント、区の花と木であるバラやハナミズキを撮影したフォトジェニックな一枚をSNSで投票し合う写真コンテスト、港区内の大使館員と区民が一緒になって楽しむタグ・ラグビーのミニミニ・ワールドカップなどがある。

本文画像

 ビジネスの経験が長い人にとっても、一から企画を立ち上げ、最後までそれを見届ける機会はあまりない。話し合いを重ね、企業と交渉し、公共性を考え、チラシをデザインし、手探りで細部を詰めていくうちに、一人では実現できない企画が現実のものとなっていく。とにかくみんなでわいわい話し合うのが好き、というメンバーたちは、2018年12月8日に港区内で開催する一日イベント「Wanabeeマナビー」を予定している。

まなマルシェ
tel.03-3578-2742(東京都港区教育委員会事務局教育推進部生涯学習スポーツ振興課生涯学習係)
HP:www.city.minato.tokyo.jp/shougaigakushu/map.html

記事は雑誌ソトコト2018年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

写真・文●坂口 緑
illustration by Verve Iwashita

キーワード

坂口 緑

さかぐち・みどり
明治学院大学社会学部教授。2000年、東京大学大学院博士課程単位取得退学。
研究領域は生涯学習論。共著に『ポストリベラリズム』、共訳書にアーリー・ラッセル・ホックシールド『タイム・バインド』など。