柏まちなかカレッジ(千葉県柏市) ー ソーシャル系大学案内 第37回
2019.10.20 UP

柏まちなかカレッジ(千葉県柏市) ー ソーシャル系大学案内 第37回

SOCIAL

ソーシャルでエシカルな関心をもつ人を惹きつける、街の中に広がる学びの場「ソーシャル系大学」。5月初旬の平日の夜、「柏まちなかカレッジ」の拠点のひとつ、コワーキングスペース『Noblesse Oblige』(千葉県柏市)にて開催された講座「デンマーク 『働く』のユートピアを求めて」に参加した。

柏のフューチャーセンター機能を担う「まちカレ」に、新しい知見をもたらす講座。

 「柏まちなかカレッジ」(まちカレ)は、2010年に開校し、千葉県柏市の多様な大人たちが集まる場となっている。学長の山下洋輔さんによると、「まちカレ」の特徴は、対話を大切にしているところである。少人数でも大人数でも、集まった人たちが自由に意見を表明し合い、互いの声に耳を傾け合う場を意識してつくり出してきた。この日の講座も、未来のワークスタイルをデザインする雑誌『WORK MILL with Forbes JAPAN ISSUE 02』の特集、デンマークにおける働き方、学び、暮らしについてを読み、語り合う会として計画された。

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 講師は柏市在住で、同誌編集長を務める遅野井宏さん。『柏の葉オープンイノベーションラボKOIL』の会員でもある遅野井さんは、『キヤノン』、『日本マイクロソフト』を経て、新しいオフィス環境や働き方について提案する『オカムラ』のワークスタイル変革コンサルタントでもある。雑誌創刊号では世界のコワーキングスペースを探訪し、第2号では、世界の幸福度調査の上位国デンマークを取り上げた。

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 遅野井さんのデンマークに対するイメージは、「hygge(ヒュッゲ)」。居心地がいいという意味で、英語圏を中心にデンマークの温かな暮らしを称える本が相次いで出版されている。そうはいっても高い税金に不満はないのか、いつも本当に定時で仕事が終わるのか、家族と長い時間を過ごしていて窮屈ではないのか、といった疑問が編集部でも話題となり取材に出かけることになったという。

 取材先では、起業家、大企業社員、クリエイター、幼稚園児、高校生、ビジネススクールの教職員や大学生たちといったさまざまな属性の人と話をする機会を持ったが、遅野井さんによると、取材中もっとも多く聞かれた言葉は「Democratic」と「Alternative」だった。「Democratic」というのは、あなたは何をするのかという問いに答え、公的な意思決定に参加するという意味で、観察していると、幼稚園の中でも議会と同様に意見調整が行われていた。

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 「Alternative」というのは、コースを外れてもその先に何かが用意されているという意味で、いつどのように選択するかは個人の意思が尊重されるということである。遅野井さんは取材を通して「あなたは何を大事にして、誰と、どんな社会を生きたいのか」と常に問われているように感じた、と話す。

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 この日集まった15名の参加者は、それぞれに『WORK MILL』を読み込み、森の幼稚園、公共図書館、ワークライフ・バランス、クリエイティビティとビジネスといった関心をもつ大人たちだった。まちづくり、自然、教育、図書館、公民館、公園のあり方など、今では柏のフューチャーセンター機能を担う「まちカレ」に、新しい知見をもたらす講座だった。

柏まちなかカレッジ
Facebook: www.facebook.com/machicolle

記事は雑誌ソトコト2018年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

写真・文●坂口 緑
illustration by Verve Iwashita

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坂口 緑

さかぐち・みどり
明治学院大学社会学部教授。2000年、東京大学大学院博士課程単位取得退学。
研究領域は生涯学習論。共著に『ポストリベラリズム』、共訳書にアーリー・ラッセル・ホックシールド『タイム・バインド』など。