大ナゴヤ大学(愛知県名古屋市) ー ソーシャル系大学案内 第35回
2019.10.22 UP

大ナゴヤ大学(愛知県名古屋市) ー ソーシャル系大学案内 第35回

SOCIAL

「街中がキャンパス。誰でも先生、誰でも生徒」をテーマに設立から9年目となる大ナゴヤ大学。企業や行政、メディアとの連携も試みながら、現在は街のコアな情報をおもしろがる多様な世代が交流する場となっている。
今回、学長の山田卓哉さんに案内してもらったのは「みんなで朝ごはん!」という授業。朝8時に名古屋駅に集合し、「駅西」を巡る授業が始まった。

 JR名古屋駅太閤通口側の地域は、以前は闇市や寄せ場が広がる独特な場所で、地元の人からは避けられる場所だった。そこにリニア開発計画が浮上し、近年、街並みも変化している。そのようなエリアに、2017年10月から3か月間だけ、週末の朝5時に開店する食堂『駅西あさごはん』があった。これは、名古屋市立大学の学生たちが社会調査の実習として関わった駅西エリアの活性化を目指し、独自に始めたプロジェクトだという。

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 社会学を学ぶ学生がなぜ食堂を始めたのか。調査を通じて『駅西あさごはん』代表の高原潮さんたちは時間帯によって商圏が異なることを発見する。多くの居酒屋は朝4時までで閉店するが、夜行バスは朝5時台に到着する。朝6時に開店するファストフード店はすぐに満席となるが、ほかに行く場所はない。名古屋にはモーニング文化があるといいながら、駅周辺には早朝にゆっくりする場所がない。これが朝ごはんの食堂に決定した理由だった。資金はクラウドファンディングで集め、調理は料亭の指導を受け、店舗は「ヤドカリ」方式で焼き鳥店『竹橋』を借り受け、こうして駅西で仕入れた魚と野菜で、鯛茶漬けを提供する食堂が始まった。

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 客足が伸び悩んだ時期もあったけれどもSNSで評判を呼び、開店時には多くの人が訪れるようになった。「一番うれしかったのは夜勤明けの人にこういう場所が欲しかった、と言ってもらえたこと」と話す高原さん。街全体の応援を受けての活動だったが、「街のためにと驕らない」を心に朝ごはんを提供し続けた。学業、アルバイト、デートのかたわら、毎週末、共に働き続けた稲葉直也さん、白木いくみさんら学生メンバーも、商売は甘くない、それでもチームで協力するおもしろさを十分に味わったと話してくれた。

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 活動の裏側まで知ってほしいと、主催者の本音に迫る授業を企画した山田学長。授業の参加者たちは、変化する駅西の様子を見たくて参加したという人や、東京からの深夜バスで到着し、その足でやってきたという人もいた。参加者の感想に耳を傾けるうちに、自分だったら何ができるかと考えさせられた。授業後も立ち去りがたい人たちがあちこちで楽しそうに話し込む。駅西エリアの新しさをコアな視点で伝えてくれる大ナゴヤ大学の授業だった。

大ナゴヤ大学
HP: http://dai-nagoya.univnet.jp Facebook: www.facebook.com/dainagoya Instagram: www.instagram.com/dainagoya

写真●坂口 緑、井上麻衣
文●坂口 緑
illustration by Verve Iwashita

記事は雑誌ソトコト2018年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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坂口 緑

さかぐち・みどり
明治学院大学社会学部教授。2000年、東京大学大学院博士課程単位取得退学。
研究領域は生涯学習論。共著に『ポストリベラリズム』、共訳書にアーリー・ラッセル・ホックシールド『タイム・バインド』など。