個人事業主が二拠点生活をする場合、家庭内リスクヘッジが重要。ー 田舎と田舎の二拠点生活9
2019.10.22 UP

個人事業主が二拠点生活をする場合、家庭内リスクヘッジが重要。ー 田舎と田舎の二拠点生活9

LOCAL

 これまで、私は私の都合に合わせて小豆島と幡豆を行き来してきた。どちらにいるか数か月先までを決めて、その予定に応じて仕事のスケジュールを組んできたため、仕事も問題なく進んでいた。が、2月頭に事件が起こった。夫がインフルエンザにかかったのだ。大変だったのは「看病」ではない。「予定が崩れた」ことだ。

夫の仕事の代理と看病と家事を距離を越えて行う。

 2月初めは、たまたま私も夫も仕事が1年間のうちで一番忙しい時期だった。夫婦それぞれの拠点で仕事に集中する予定だった。しかし、夫がインフルエンザにかかった。誰かが夫の看病をし、誰かが夫の仕事を進めなければならない。組織で働いていたら、組織内で調整するだろうが、あいにく夫婦揃って個人事業主。代わりがいない。*ウーファーが1人ずつ入れかわり立ち代わり手伝っているが、数日しか経験していないので任せるには心もとない。私は意を決して膨大な仕事を抱えたまま幡豆にいき、夫の仕事と、看病と家事をすることにした。

 私の仕事は合間と夜中に行った。小豆島にいないとできない仕事を予定どおりやるために、トンボ返りもした。後にずらせそうなものはずらし、代理が利きそうなものは依頼した。最初はへっちゃらな顔で乗りきるつもりだった。が、遠隔でさまざまな人に依頼するのは自分でやるよりも何十倍も時間がかかるし、どれだけ頑張っても私の仕事が溜まっていく。心身の疲労がピークに達して、笑顔が消えた。夫は発熱後約1週間で仕事に復帰し、私は私の仕事に集中できるようになったが、お互いに溜まった仕事を終わらせるのは容易ではなく、3月初めまでさまざまな依頼主に頭を下げ、無理をしながら仕事をする日々が続いた。心身共に過酷だったうえに出費もかさんだ。

時間に十分な余裕を持つ。

 しかし、一つの想いが私を支えた。「今後子どもが生まれたら予定どおりいかなくなる。この先の体制を考えるよい機会だ」。個人事業主は融通が利きやすいので二拠点生活に向いているが、自分の身に何か起こったら一変する。距離があったとしても、なんとか家族で支えなくてはならない。どうすれば「距離」に対応できるか考えた。

 何かが起こっても夫の仕事がスムーズに進むよう、私とご近所さんが、夫の仕事(農業と麹造り)を覚えることにした。私は仕事量を減らすことに。子どもが生まれるまでは3割減。生まれたら5割減にし、空いた余白で「何か」に対応する。これが正しいかわからないが、やってみることした。

 結婚したら家族の事情が影響で予定どおりいかなくなる。私たちのように二拠点だとなおさらだ。私の時間は私個人にあるものではなく、家庭にあるのだと学んだ。

ある日の新米夫婦

 今号発売日の段階で妊娠6か月目の私(安定期に入ったので記載します!)。つわりもおさまり、体調も平常どおりに。つわり期間は「移動」がまったくダメだったので幡豆に行けず、長期別居生活に……。「つわりを夫婦で乗りきることで子育てへの意識が芽生えるんだよ!」といろんな人に言われたけれど距離があるので諦めた。これから夫婦一緒に育んでいこう。

※ウーファー:仕事を手伝い、代わりに食事と寝る場所を提供してもらう人

記事は雑誌ソトコト2018年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

文 ● 黒島慶子
イラスト ● 宮本貴史

キーワード

黒島慶子 

くろしま・けいこ
醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときから小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、様々な人やコトを結びつけ続ける。2017年7月6日に、愛知県の幡豆で無農薬で大豆と米を育て、米・豆・麦の麹を作る『宮本農園・みやもと糀店』の宮本貴史と結婚。高橋万太郎との共著『醤油本』を出版。