興味を持って、つくり、食べ、学ぶ。広がる夫婦の「食」ワールド。ー 田舎と田舎の二拠点生活10
2019.10.24 UP

興味を持って、つくり、食べ、学ぶ。広がる夫婦の「食」ワールド。ー 田舎と田舎の二拠点生活10

LOCAL

 「小豆島と愛知は食文化が違うから、料理も大変じゃない?」とよく尋ねられる。

 確かに違う。が、私たち夫婦は、違いを楽しみ、メリットに感じている。

趣味嗜好が同じなら、食文化の壁も越えられる。

 愛知を代表する味噌は八丁味噌などの「豆味噌」で、醤油も「溜醤油」や「白醤油」になる。一方、小豆島では「米味噌」、「濃口醤油」や「淡口醤油」を使う。他にも「地魚」など、食材も違ってくるが、基礎調味料が違うほうが食卓への影響が大きい。

 しかし、私は醤油ソムリエールなので、全国各地の醤油を使ってきた。麹屋の夫も、自家製の米や豆や麦の麹でいろんな味噌を仕込んでいる。お互いにいろんな調味料に興味があるし、食べて学びたいと思っているので、調味料の幅が増える状況がうれしい。

 また、夫婦ともに食の好みや両方の生活環境が似ていることもよかった。なるべく無添加の選りすぐりの調味料を使い、加工品は使わない。また、どちらの土地にも海と山がそばにあり、自家菜園がある。旬の食材や新鮮な地元食材に恵まれてきた。

 こだわりは変えずに、風味の幅が広がる生活は、夫婦ともに本望だった。今でも私が行き来するきっかけに、どんどん小豆島の調味料や食材を持ってきている。

家庭環境に応じて変える料理術。

 とはいえ、「慣れ」もある。なんだかんだ言って「豆味噌」や「溜醤油」を使って料理をすると夫は「やっぱこの味だなあ」と喜んでいるし、私も「淡口醤油」を使って、や食材の繊細な風味を楽しみたくなる。そこは使用頻度で調整。小豆島の特産品「オリーブオイル」も、夫は「食べたい!」と言うが、「たまに」使う程度にしている。

 また、地域性だけでなく、家の環境の違いでも料理の幅が広がる。幡豆の家は電子レンジがなく、私が運転できる車もない。シェアハウスに住んでいるのでキッチンが共同で、譲り合う必要がある。最初は実家で慣れた「パパッと料理。足りなかったらパパッと買い出し」ができなくて戸惑った。そこで代わりに増やしたのが「漬物」。塩や味噌、酒粕やみりん粕だけでなく、夫が造った麹で「塩麹」「醤油麹」「三五八漬け」などの漬け床をいろいろ準備し、肉や魚、野菜を漬けておけば保存も利くし、いろんな下味がつく。解凍時間も不要。田舎でよくある「食べきれないほどの大量の食材をもらった!」という状況にも対応できる。

 そんな食文化や生活環境の違いのおかげで、私の料理や知識の幅はグッと広がった。食卓を豊かにするだけでなく、醤油ソムリエールという仕事のうえでも役に立っている。なお、「食」の違いは二拠点生活に限らず、各家庭で発生しているはず。二拠点の距離以上に、「食の好み」の差が大きい。

ある日の新米夫婦

3種の漬床に漬けた鶏胸肉。
3種の漬床に漬けた鶏胸肉。

 宮本家の「漬物」において、私が一番の定番にしているのが「胸肉」。塩麹や三五八漬けにすると軟らかくジューシー。旨みもある胸肉に化ける。醤油麹に漬けると下味がついて唐揚げにもぴったり。胸肉がおいしくなるならお財布にも優しいし、肉を食べたい! という夫にも喜んでもらえるので常備している。ほかにも野菜や肉、豆腐やゆで卵も漬物へ。漬物は便利!

記事は雑誌ソトコト2018年6月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

文 ● 黒島慶子
イラスト ● 宮本貴史

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黒島慶子 

くろしま・けいこ
醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときから小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、様々な人やコトを結びつけ続ける。2017年7月6日に、愛知県の幡豆で無農薬で大豆と米を育て、米・豆・麦の麹を作る『宮本農園・みやもと糀店』の宮本貴史と結婚。高橋万太郎との共著『醤油本』を出版。