STREAM BASE(東京都渋谷区) ー ソーシャル系大学案内 第45回
2019.11.08 UP

STREAM BASE(東京都渋谷区) ー ソーシャル系大学案内 第45回

SOCIAL

ソーシャルでエシカルな関心をもつ人を惹きつける、街の中に広がる学びの場「ソーシャル系大学」。今回は、再開発が進む東京・渋谷区の渋谷駅南側の通称「渋南エリア」で、街の人たちが気軽に集まる大人の部活動、「渋谷ストリーム」の「STREAM BASE」を取り上げる。
「好奇心をカタチに、今日を未来に」を合言葉に、『東急』をはじめとする企業が主導する学びを通したコミュニティづくりをレポートする。

企業が学びの場を運営しながら新しいまちづくりを担う、生涯学習の活用事例。

 「渋谷ストリーム」は、旧・東横線渋谷駅のホームおよび線路の跡地に2018年9月にオープンした大規模複合施設である。施設のオープンをきっかけに、官民連携により渋谷川が再生・整備され、ビルの谷間に気持ちのよい水辺空間が現れた。「STREAM BASE」は、ここを、渋南に住む人、通う人、働く人が集まる基地にできないかと始まったプロジェクトである。「渋谷ストリーム」を運営する『東急』に地域のNPOが協力するという、企業が学びの場を運営しながら新しいまちづくりを担う、世界でも珍しい生涯学習の活用事例である。

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 「STREAM BASE」には現在、6つの活動がある。渋谷川沿いのプランターで農作物を育て神奈川県相模原市の里山で農業体験をする農業部、これからの働き方や生き方を考える渋南わたしのキャリアデザイン部、早朝からフットサルやトークイベントを楽しむ朝活部、ひまわりの種を蒔き、渋谷でハチミツを収穫するエコ部(ひまわり&ハチミツ)、プロメイクアップアーティストからメイクのテクニックを学ぶビューティー部、11月に開催される「SHIBUYA STREAM FES.」のステージを目指して練習を重ねるみんなのゴスペル部である。

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 8月の週末に始動したばかりのエコ部の活動に参加した。講師は、「渋谷のラジオ」の木曜日パーソナリティとしても知られるDJ勝さん。地元の不動産業者として、顧客の要望に応じて大型の空調機を何台も導入するうちに、年々加速するヒートアイランド現象を実感し、何か行動しなければと考えるようになったという。

 福山雅治さんの曲にちなんで、各地で受け継がれてきた種を育て、2020年のオリンピック・パラリンピックのときに渋谷をひまわりの花でいっぱいにしようという「渋谷ひまわりプロジェクト」を主催し、はちみつ専門店『ラベイユ』養蜂部も関わる「渋谷みつばちプロジェクト」を担ってきた。

 参加者は都内各地から集まった10名ほど。農業部で活動している人、通勤途中に見たデジタルサイネージの広告を見てやってきた人、食に関心をもつようになり、渋谷で何ができるのか知りたかったという人である。

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 ハチミツは、渋谷駅前の桜丘町のビルの屋上に設置された巣箱まで、ミツバチがせっせと運んできたものだ。蜜蝋で塞がれた重たい巣枠の面をナイフで薄く剥ぎ取り、遠心分離器にかけると、びっくりするくらいさらりとした蜜が流れ出た。渋谷のハチミツは、がつんと甘い、自然の味がした。

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 このハチミツで石けんをつくってはどうか、リップクリームもいいねと話が弾み、次回の企画が早速決まった。今後は「渋谷のラジオ」での報告も予定されている。渋谷のまちづくりには、こんなふうに人を惹きつける仕掛けとともに、まちの未来も描かれていた。

STREAM BASE
mail:info@shibuya-streamer.jp
HP:https://shibuya-streamer.jp/base

記事は雑誌ソトコト2019年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

写真・文●坂口 緑
illustration by Verve Iwashita

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坂口 緑

さかぐち・みどり
明治学院大学社会学部教授。2000年、東京大学大学院博士課程単位取得退学。研究領域は生涯学習論。共著に『ポストリベラリズム』、共訳書にアーリー・ラッセル・ホックシールド『タイム・バインド』など。