容易に二拠点を移動できなくなって感じた「できる」ことのありがたさ。ー 田舎と田舎の二拠点生活18
2019.11.17 UP

田舎と田舎の二拠点生活 容易に二拠点を移動できなくなって感じた「できる」ことのありがたさ。ー 田舎と田舎の二拠点生活18

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 二拠点生活を続けるにあたり、産後一番もどかしく思うのは、容易に移動ができないことだ。赤ちゃんに負担がかからないよう移動頻度を減らし、移動のタイミングは赤ちゃんの用事に左右される。わかってはいたけれど、やるべきことができない……ということがぐんと増えた。

家族みんなをがっかりさせてしまった12月。

 昨年12月の理想のスケジュールはこうだった。前半は小豆島で赤ちゃんの予防接種をし、後半は幡豆で過ごし、年末に夫と娘の3人で小豆島に渡って正月を過ごし、年明けに3人で幡豆に帰る。

 そうすれば16日の夫の誕生日とクリスマスを家族3人で祝い、正月は1年以上ぶりに夫が私の親族に挨拶をすることができる。

 実家の両親も「初孫の初正月だ。貴史さん(夫)も来るなら賑やかだ」とデパートで羽子板を買い、例年の手作りのおせち料理をやめて高値のおせち料理を注文するなど、驚くほどの張り切りぶりを見せた。

 しかし、思いがけず12月は娘のことで病院通いの日々になった。夫の誕生日にも幡豆に帰れず、クリスマスも帰れず……。年末になってやっと解決してきたものの、年末に幡豆に帰って2、3日で島に戻るには短期間すぎて娘への負担が大きい。夫が一人で小豆島に来れば済む話かもしれないけれど、実は夫はパニック障害を持っており、一人で長距離の移動をすることができない。私が一人で迎えに行きたいけれど、娘が哺乳瓶拒否をしているので娘から離れるわけにいかず、迎えに行くこともできない。誰かに夫を島に送ってもらう手も考えたけれど、流石に正月にお願いするのは難しく、悩みに悩み、年末に娘と私が幡豆に渡り、そのまま幡豆で過ごすことにした。

できることすべてに感謝する。

 仕事でもキャンセルや延期が続くことで、結局、私以外の人に頼むことになった案件がいくつかある。友達とも約束をしづらいし、買ったものが無駄になることもある。

 赤ちゃんがいれば、「予定が崩れる」ことが日常茶飯事。それが二拠点生活になるとグッと増える。産前までは何か問題が発生しても強行突破で二拠点を移動しながらなんとかしてきたが、産後はなんともならない。二拠点生活を初めて、ここまで自由に時間を組み立てられないのは初めてで、申し訳なくて何度も泣いた。

 しかし、幸いその事情をわかって依頼してくれる新しいクライアントや友達も増えた。その気持ちに深く感謝し、産後も関わってくれるすべての人や、力を貸してくれる家族を一段と大切にするようになった。

 人と会えること。話せること。動けること。健康であること。日常の些細な「できる」に感動すら覚える。「足るを知る」。今はそんな時期だ。

ある日の新米夫婦

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 仕事が好きな私だけれど、産後は仕事をする時間がほとんどなく、働くことを我慢してばかり。そんな中、夫に訴えたわけでもないのに、夫が「ぽん酢作りワークショップ」の場を自宅で設けた。私の代わりに娘を抱っこし、私は準備と講師を務める。赤ちゃんがグズツくこともあったけれど、参加者のほとんどが夫の友達だったこともあって、「かわいい」と温かく見守ってくれた。ありがたい時間だったな。

記事は雑誌ソトコト2019年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

文 ● 黒島慶子
イラスト ● 宮本貴史

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黒島慶子 

くろしま・けいこ
醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときから小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、様々な人やコトを結びつけ続ける。2017年7月6日に、愛知県の幡豆で無農薬で大豆と米を育て、米・豆・麦の麹を作る『宮本農園・みやもと糀店』の宮本貴史と結婚。高橋万太郎との共著『醤油本』を出版。