「凶暴な天使?  外来種との闘い 中編」ー森の生活からみる未来 第75回
2019.11.28 UP

連載 | 森の生活からみる未来 「凶暴な天使? 外来種との闘い 中編」ー森の生活からみる未来 第75回

SUSTAINABILITY

 自然の森が広がる、うちのフォレストガーデンに入り込み、ひどく繁殖してしまったジャスミン。

 ぼくは、汚れてもかまわない、いつものガーデニングスタイルに身をつつみ、森に入ることに。ジャスミンが広がる範囲を把握するためだ。

 いつもは長靴を履くが、今回は登山ブーツを着用。1週間以上の長距離登山で使う、本格的なものだ。これは木への登りやすさ、森の急斜面での歩きやすさを優先しての判断である。

 我が家の敷地とはいえ、こちらサイドは完全なる森。

 山道はもちろん、ケモノ道もないので、草まみれ、土まみれになりながら慎重に入っていく。樹々に完全に囲まれた場所で一息つくと、濃密で重厚な空気がぼくの肺を満たしてくれる。登記上はぼくが所有する土地とはいえ、ここはもう自然の聖域、神の領域。人間はあくまで、謙虚な気持ちでそこに「いさせてもらうだけ」なのだ。

 森を見渡すと、99パーセントがこの国原種の植物だが、わずかに外来種の木や雑草が生えている。できればこれらも駆除したいところだが、原種の植物を殺したり、異常な繁殖力がないものであれば、しばらくはそのままで大丈夫だろう。こちらはまた後日、じっくり対処すればいい。ぼくが今日、闘うべきはジャスミンだ。

 ジャスミンの茎は自宅裏側の森の地面を格子状に覆い尽くし、そのツタは、周辺に立つ木々に、しつこいくらい巻きついていた。だが森のそれほど奥までは侵入していなかった。それがわかり、少し胸を撫でおろす。これなら数日あれば対処できる。

 太い枝まで切れる大型の剪定バサミ、片手用の枝切りバサミ、そして日本の草鎌を用意して作業開始だ。だがすぐに、鎌が一番効率的だと知る。

 まず、地面に張り付くジャスミンのツタ状の茎を鎌でざくざくと切っていく。それは、まるで網の目のように、我が物顔で縦横無尽に大地を支配している。ある程度切っては、全力で引っ張って可能なかぎりその長いツタを巻き取ってしまう。

ジャスミンが広がるエリアは実は急斜面。一足入れると、こんな状態で腰まで森の下草で埋まる。
ジャスミンが広がるエリアは実は急斜面。一足入れると、こんな状態で腰まで森の下草で埋まる。

 念のために言及しておくと、このツタ状の幹が植物とは思えないほど頑強なのだ。太さは、大人の小指から親指くらい。まるでナイロン製ロープのようで、決して手では切れない。極端に太い茎に遭遇した時は、全身の力を込めてそれを根っこから抜く。見た目には想像できないほど、地中深く根を張っている。

 ただし、それをそのまま地面に置くとダメ。そこからまた根をつけて成長を続けるという、まるでエイリアンのような習性があるからだ。地面から離した所にひっかけて乾燥させないといけない。とても地味で面倒だが、重要な作業である。

 これを、何度も何度も繰り返してゆく。続けることおよそ3、4時間。体中の筋肉と関節が悲鳴をあげた頃、もう一つの少し軽めの作業に入る。樹々に巻きついているツタの細い部分を取り除くのだ。

 ひどいケースだと、もともとの木がなにかわからないくらい完全に覆いかぶさっている。そんな木が20本ほどあるので、慌てずじっくりと続ける。

 そして初日の闘いが終了。革製の手袋をしていたのに、手のひらはヒリヒリ。服は数か所ほどすり切れている。そして、森の地面をずっと四つん這いになって徘徊していたため、膝はもう真っ黒だ。この工程をあと3日は繰り返さないといけない。 (次回へ続く)

記事は雑誌ソトコト2018年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

写真・文●四角大輔

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四角大輔

よすみ・だいすけ
ニュージーランドの湖で半自給自足の持続可能な、森の生活を営む執筆家。フライフィッシング冒険、世界でのオーガニックジャーニー、アーティスト育成をライフワークとし、会員制コミュニティ『Lifestyle Design Camp』学長、複数の企業の役員やブランドアドバイザーを務める。レコード会社プロデューサー時代に7度のミリオンヒットを創出。好評発売中の新刊『人生やらなくていいリスト』では、ストレス社会となった日本で、自分自身を守り抜き、軽やかに働き、自分らしく生きるために必須の「ミニマム仕事術」と世界一簡単な「人生デザイン学」を公開している。増刷を重ね、現在4刷。