Q&Aからお役立ち情報まで。農業をもっと知りたい!
2019.11.29 UP

Q&Aからお役立ち情報まで。農業をもっと知りたい!

WORK

私たちの生活に欠かせない農業。興味はあるけれど、どうやって始めたらいいんだろう……
という未経験の方から、何十年もの経験をもつベテランさんまで。一歩踏み込んだ最新の農業トピックをお届けします!

農業って大変そうだな。私でもできるの?

 体力勝負のイメージがありますが、実は老若男女問わず農業に従事できます。体力が必要な仕事もありますが、機械化が進み、作業が楽になっていることも。また加工場などの仕分けや荷詰めなど、女性ならではの繊細さを活かせる仕事も多数あります。しかし、仕事内容に関わらず、農業を生業にしたい動機がしっかりしていることが一番大切です。

家族を養って生活できるかな?

家族を養って生活できるかな?

 生活していけます! ただ、新規就農の場合、しっかりとした事業計画が必要です。利益率の高い作物に注目したり、六次産業化まで取り組んだりと特色ある農業で確実に買い手がつけば、家族を養える収入を得ることは可能です。一方で初期投資が難しい場合は、雇われる形態での就農も選択肢に入れてください。都心より収入が下がる可能性はありますが、家族手当や格安で広い社宅、野菜の支給など、待遇充実のところも。

どんな人が向いてるんだろう?

どんな人が向いてるんだろう?

 前提として農業は農作業だけではありません。スマート農業化が進み、パソコンを使って数字と向き合うこともあります。日々の生育管理や出荷状況などのデータを取り、さらに過去のデータを元に翌年の作付け計画を立てるので、特に大規模化の場合はこれまでの経験や勘に頼る農業に比べて、データ管理ができることが重要になってきます。

 また、農業は一人で黙々と作業をするイメージを持たれがちですが、実は人と関わることも多く、コミュニケーション力が必要です。スタッフをはじめ、資材、卸先、販売先、専門家など大勢の人と接します。また、異業界でもものづくりの経験がある人は有利です。生産物に愛情を持って接しながら、品質管理がしっかりできるスキルを持っていることが農業でも役立ちます。

仕事にしたいけど、まずはどうしたらいいですか?

仕事にしたいけど、まずはどうしたらいいですか?

 どの地域で、どんな作物を作るかを決めることからスタート。栽培作物によって収入も変わってきますし、米や果樹のように年に一度しか収穫できないものもあるので、慎重な判断が必要です。

 下調べや決定の方法はいろいろとあり、例えば「第一次産業ネット」のようなサイトで求人を見てみるのも手でしょう。季節ごとに短期アルバイトの募集もあり、全国各地を回って自分に合う土地柄、作物を探すツワモノもいます。

 そして、地域、作物を決めたら、まずは雇用就農で始めるのがオススメです。まったくの未経験からでは農地を貸してもらえないことがほとんどです。独立志向のある人はその地の農業法人で数年経験を積んで周りの信頼を得てから土地を入手するのが確実です。また、助成金や補助金、農業研修などの独立支援をしている自治体もあります。どんなに下調べしても、実際に働いてみて地域や作物が合わないと感じることはありうるので、まずは設備投資などの金銭的な負担をかけずに始めましょう。

最近よく聞く、「耕作放棄地」って何ですか?

最近よく聞く、「耕作放棄地」って何ですか?

 耕作放棄地とは、農林水産省によると「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」と定義されています。農地面積は年々減少し、宅地に転用されるケースもありますが、耕作放棄地とされる土地の面積は2015年で42.3万ヘクタールにも上ります。

 年々増え続けている耕作放棄地には問題が多く、雑草や害虫が増えて野生動物の行動圏になったり、水はけがよくないなどの理由で災害の危険が高まったり。また、廃棄物の不法投棄場所にもなり、犯罪の温床に。そうなると農地再生も難しくなってきます。

 国土の7割を森林が占める日本では諸外国に比べても1人当たりの農地面積が少ないのが難点です。よって、狭い日本で農業復活の鍵は、耕作放棄地の改善にあると思います。農地バンクを介して農地を入手し、再生利用すると交付金が下りるなど国や自治体の後押しがあるので、農業で独立したい人にはチャンスです! ただ中には、耕作難易度の高い土地もあるため、選定には注意が必要です。

農業分野でITはどのように使われているの?

農業分野でITはどのように使われているの?

 IoT、ICTを活用するスマート農業。農業従事者の高齢化による後継者不足や耕作放棄地の増加など、日本社会の課題を解決しながら成長産業へと発展させる方法として、国が後押しをしています。

 さまざまな導入事例がありますが、ポイントは“見える化”。長年の勘が頼りだった農業がデータ化され、誰でも取り組みやすい農業が可能になろうとしています。データ解析で自動化が進み、自動運転トラクター・田植え機に関しては販売が開始されました。熟練者と同じ作業ができるうえ、作業者の肉体的軽減にもつながり、新たに農業を始める人にもメリットをもたらします。

 また、センサーで作物の生育状態を確認してロボットで収穫したり、ドローンで空中撮影した画像から病害虫の発生状況を特定してピンポイントで農薬散布を行ったりも。さらには植物工場で生育環境を自動制御する取り組みもあります。国土が狭いにもかかわらず農業大国として成功しているオランダを参考に、日本のスマート農業化が加速しそうです。

農業が観光資源になるって、ほんと?

農業が観光資源になるって、ほんと?

 「世界農業遺産」を聞いたことがありますか? 伝統的農法や生物多様性、そこで育まれた文化や風景などの保全・継承を目的に、国際連合食糧農業機関(FAO)が認定する農地です。日本では、石川県・能登地域の里山・里海をはじめ11か所が認定されています。認定をきっかけに国内外での知名度が上がり、スタディツアーなどの観光資源として活用されたり、米や野菜がブランド化されたりしています。現代技術からすると非効率とされる農法が付加価値を生むこともあります。

日本の農業はこれからどうなっていくのかな?

日本の農業はこれからどうなっていくのかな?

 大きな流れとしては、家族経営から法人化・大規模化へ。10年前と比較しても、中・大規模農家の売上の割合が高く、現在も全体の8割を占めているほどです。大規模化により、肉体労働よりもパソコン業務が増える日もそう遠くないと思われます。ただし、大規模化が進むからこそ、小規模農家による稀少価値の高い作物にも注目が集まり、ブランド化が進む可能性も。

 また、生産・流通においては、従来の農業から、生産から六次産業化まで生産者が自由に選択できる時代にシフトしてきています。農業は食のビジネスとしてのチャンスをますます広げていくことになると思います。

 世界的なニーズは高く、農産物の輸出額は右肩上がり。成長産業であり、なおかつ新たな担い手を必要としている農業にはチャンスがいっぱいです。

答えてくれた人 佐藤汐里さん

佐藤汐里さん

さとう・しおり●1988年生まれ、秋田県出身。中央大学卒業後、外資系アパレルブランドや広告代理店を経て、2015年に第一次産業における人材リーディングカンパニーである『Life Lab』に入社。農林漁業専門の求人サイト「第一次産業ネット」などの広報・広告を担当。

農家さんお役立ちトピックあれこれ。
なんとなく聞いたことがあるサービスから、そんなものあるの!?
というユニークな製品まで。農家さんお役立ちの最新トピックをお届けします!

もくめんー地元の木材を使って、誇りある商品を生み出す。

もくめん

 「もくめん」とは、木材を糸状に削ったもので、果実などを箱詰めにする際に緩衝材として使用されている。これを60年近く専業で作り続けているのが、高知県土佐市の『戸田商行』だ。松や檜など地元の木材を熟練の職人たちが加工し、手間をかけて「もくめん」を製造している。天然素材ならではの保湿性や保温性はもちろんのこと、他にはない高級感や香りが好評で、フラワーアレンジメントや人形の詰め物、スピーカー内部の吸音材にまで幅広く活用されている。

ラジコンボートー田んぼを縦横無尽に走りながら、農薬を散布する。

ラジコンボート

 農薬散布は必ずしも空中からとは限らない。2019年春に登場した「ラジコンボート」は、福島県福島市の『イームズロボティクス』の担当者がたった一人で開発した新製品。水上を走りながら農薬を滴下することで、周辺に飛散させることなく充分に行き渡らせることができるのだ。田んぼを縦横無尽に走り回る様子とラジコン操作の感覚がやみつきになり、利用者はつい笑顔になるのだとか。面倒なものと思われがちな農薬散布の作業を、まるで遊んでいるかのように楽しく実現できる機械だ。

境界守ー天敵・スズメバチの音と臭いで、害獣を退治する。

境界守

 シカやイノシシが畑に現れ、収穫間近の作物を根こそぎ食べていく。そんな害獣による被害を防ぐのが、広島県福山市の『はなはな』による「境界守」だ。どんな害獣でも、蜂に刺されると痛いことはよく知っている。それを逆手に取ったこの仕掛けは、スズメバチの音と臭いを地中に埋設したパイプを通じて拡散させることで、近くにスズメバチがいると思わせ、害獣自らそのエリアを離れるように仕向けるものだ。景観を損なうことなく、環境に優しい害獣退治を実現することができる。

アグリウォッシュー車ごと消毒し、病気の侵入を未然にシャットアウト。

アグリウォッシュ

 豚コレラなどの伝染病は、一度罹患すると周囲に甚大な被害をもたらす。それを防ぐべく、畜産施設に入る車両を丸ごと消毒する装置がある。北海道札幌市の『日本仮設』が取り扱う「アグリウォッシュ」だ。地面に敷かれた装置の上を通過する車両をセンサーが感知し、1分間で約90リットルもの消毒剤を広範囲に噴霧する。1車両あたり15〜20秒かけて通過することで、満遍なく消毒することができる。装置は分解して移動させることができ、急な事案にも対応可能だ。

サポートジャケットー姿勢を矯正して、身体への負担を軽くする。

サポートジャケット

 前屈や起き上がりの動作を補助し、腰を守る「アシストスーツ」が注目されるようになってきた。しかしながらモーター付きのものは価格が高く、充電も手間がかかる。そんな方に試してほしいのが、東京都千代田区の『ユーピーアール』による「サポートジャケット」。これはモーターを使わず、「第二の背骨」となるボーン部分とゴムベルトの反発を用いて、身体への負担を軽減するものだ。背骨と腰が理想的な姿勢へと誘導されるため、いつもの作業がぐっと楽になる感覚を味わえる。

土壌診断ー土の栄養バランスをチェックし、収穫量アップと品質向上を図る。

土壌診断

 健康な作物は健康な土から育つ。土の栄養バランスを把握できるのが、大分県豊後大野市の『みらい蔵』による土壌診断サービスだ。圃場の土を採取しビニール袋に入れて送付するだけで、精密機器で細かな分析がなされ、各栄養分がどれだけ入っているかが分かる土壌診断分析書が5営業日で届く。また、土の栄養分に見合った肥料を投入するための「施肥設計書」(別料金)などを入手することも可能だ。これらを活用して土の状態を改善させ、収穫物の質や量を上げることができる。

メッセージライスーオリジナルパッケージで、採れたお米を素敵なギフトに。

メッセージライス

 自分の田んぼで収穫したお米を、オリジナルギフトとしてプレゼントしたいーそんな思いを叶えてくれるのが、大阪府住吉区に本社を構える『アサヒパック』による「メッセージライス」だ。まず無地の米袋をインターネット上で購入し、そのサイズに沿った好みのデザインをダウンロードし、自宅のインクジェットプリンターで印刷できる仕組みである。名刺データや引越しの挨拶文を印刷することで、初対面の相手に印象付けることもできる。ユニークなパッケージとおいしいお米の組み合わせは、誰からも喜ばれること間違いなしだ。

TOKO DRONE SCHOOLードローン初心者が、5日間でスイスイ操作できるようになる。

TOKO DRONE SCHOOL

 ドローンによる農薬散布は普及してきたが、初心者にとって法令の理解や操縦免許取得のハードルは高い。秋田県南秋田郡にある『TOKO DRONE SCHOOL』は廃校となった小学校を活用したドローンスクールであり、参加者は5日間の集中講義で法令や病害の座学、ドローンの取り扱い方法、そして操縦訓練まで学ぶことで操縦免許を取得することができる。また運営元の『東光鉄工』は、さまざまな種類のドローンを製造しており、購入の相談にも乗ってくれる。

農業を楽しもう!
週末に身近なところでやってみたい人から、本格的に転身したい人まで。
始め方はさまざまです!

まずやってみたい人は▶▶▶週末に手ぶらで通える貸し農園『シェア畑』。

今回取材で訪れた、さいたま市中央区にある農園。採れた野菜を使った食イベントを開催するなど、人気農園の一つだ。子どもが遊べる畑も。
今回取材で訪れた、さいたま市中央区にある農園。採れた野菜を使った食イベントを開催するなど、人気農園の一つだ。子どもが遊べる畑も。

 まずは農業を趣味としてやりたい人にチェックしてほしいのが、初心者でも安心してチャレンジできる貸し農園『シェア畑』だ。野菜づくりに興味はあるけど、何から始めたらいいのかわからないという人でもご安心を。種や苗、道具の準備から育て方まで、専門スタッフが手厚くサポートしてくれる。野菜はすべて有機栽培で、安全性はもちろん、その味も格別だ。

5年前の開園時から利用している宮内さんご夫妻。野菜が成長するまでの過程が楽しいと話す。
5年前の開園時から利用している宮内さんご夫妻。野菜が成長するまでの過程が楽しいと話す。

 利用者層は20代から70代までと幅広く、定年退職後の方々や、子育て世代のお母さん方のコミュニティが広がる場にもなっている。関東・近畿を中心に93か所に展開(2019年9月時点)。家族やグループでの利用も可能なので、自身のライフスタイルに合わせて一度チャレンジしてみてはいかがだろうか。

青柳和夫さん (アドバイザー)

 サラリーマン時代に趣味で始めた野菜づくりの経験を活かし、退職後はシェア畑のアドバイザー(農園スタッフ)に。「利用者の喜んでいる姿がやりがいです」と嬉しそうに話してくれた。

本格的に転身したい人は▶▶▶未来の農業を創る人材を育てる『SEADS』。

舞台となる鶴岡の農場。『SEADS』のロゴは出羽三山をイメージしている。
舞台となる鶴岡の農場。『SEADS』のロゴは出羽三山をイメージしている。

 農業で食べていきたいけれど、やり方も土地やお金のこともわからない──そんな人におすすめなのが、2020年4月に山形県鶴岡市で開校する農業経営者育成学校『SEADS』だ。「有機農業を中心に、経営に必要なすべてを座学と実践を通じて学ぶ」をコンセプトに、2年間のプログラムを設けている。大きな特徴は地元自治体・JA・農家・大学、そして地域のまちづくり会社『ヤマガタデザイン』が、それぞれ農地の斡旋や融資、事業計画づくり、農作物の販売などを一貫してサポートできる体制を備えていることだ。研修生は、自らが目指す農業の新たな可能性に最大限挑戦することができる。

元・旅館をリノベーションした宿舎兼研修施設で学ぶことができる。
元・旅館をリノベーションした宿舎兼研修施設で学ぶことができる。

 第1期生の募集は2020年1月末まで(定員になり次第締め切り)。HPから応募が可能だ。

SEADS

鶴岡市立農業経営者育成学校
住所/山形県鶴岡市千安京田龍花山1−1
HP/https://tsuruoka-seads.com

記事は雑誌ソトコト2019年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

photographs by SOTOKOTO
text by Mari Kubota & SOTOKOTO
illustrations by Yosuke Kitamura

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