肌荒れ女子を助けたい!父の想いから始まった猪の脂から作る無添加石鹸【松岡磨貴子・中屋祐輔対談】
2019.11.28 UP

体験にはいったい何があるというんですか? | 1 肌荒れ女子を助けたい!父の想いから始まった猪の脂から作る無添加石鹸【松岡磨貴子・中屋祐輔対談】

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 物や情報が簡単に手に入りやすくなった今、便利になっているはずなのに心が満たされず、どこか物足りなさを感じている人が多いように感じます。モノ消費からコト消費へと変わって行く中で、どんな体験をするかによって人生の豊かさや経験値が大きく変わっていくのではないでしょうか。
 今回は、東京を拠点に活動しながら、地元の岡山県で猟師が仕留めた猪の脂から「TATSUMA SOAP」を作っている松岡さんにお話を伺いました。

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”けもの”との出会い

中屋 突然ですが、松岡さんにとって「けもの」ってどういう存在ですか?

松岡 これはすごく大きいテーマですね。けものとはどんな存在か。なかなか難しいことを聞きますね(笑)。

中屋 お父さんが元々狩猟をされていたんですよね?

松岡 そうです。それがきっかけで猪の石鹸が誕生したのもあります。私が住んでいた岡山は地方なので山も畑も多く、猪の作物被害が頻繁にあったので、駆除に困ってるって話を聞いた父が猟をするようになりました。

中屋 お父さんは何年くらい前から猟をされているんですか?

松岡 もう17年前くらいになりますね。

中屋 それはもうベテランですね。

松岡 私の父は今70歳ですが、猟銃免許を持っている人の6割くらいは65歳以上なので、70歳って言ったら割とひよっこの方です(笑)。

中屋 上には上がいますね。

松岡 一人では猟ができないから10人くらいで山を囲って、できるだけ若い人が山に入って「ねぐら」から猪を出して仕留めるみたいな。歳を取ってる方は登山ができないので、大変だなって思います。

中屋 高齢化が進んで猟をする人が少なくなってきてますもんね。

松岡 それに加えて、猟銃で撃つけど最後まで仕留める工程には抵抗があるという人もいると聞いています。

中屋 それ、一番かわいそうですね。

松岡 引き金を引いたからには、心臓を一突きするのが最後の仕事なのにそれを嫌がる人が少なからずいるようです。
初めは猟で動物を殺すのはどうなんだろうという想いもありましたが、猪を獲ることによって助かる人がいることも事実です。今は頂いたものがこうやって形になって、人の役に立つのであれば良いなと思ってやっていますね。

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猪の脂から作るTATSUMA SOAP

けもの×石鹸を作ったきっかけは?

中屋 けものを身近に感じていた松岡さんが、TATSUMA SOAPを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

松岡 元々猟師の間では、猪の脂は火傷やあかぎれに良いということが知られていました。父が経営している会社にアトピーで悩んでいる女の子がいて、彼女の肌を治すために猪の脂でクリームを作るって父が言い始めたんですよ。
その時に私が、「毎日使える石鹸にして洗いながら保湿できたら最高だし、無添加にしたらいろんな方にも使ってもらえるんじゃないかな」って提案をして、出来上がったのが固形石鹸です。
そもそも無添加って合成界面活性剤、防腐剤、合成着色料、酸化防止剤、合成香料の5つのうち、1つでも使っていないと無添加と言えるのですが、TATSUMAはどの化学成分も使うのを辞めました。

③

中屋 そんな背景があったんですね。猪の脂って匂いが強いイメージがありますが、どうやって匂いを取ったんですか?

松岡 脂って、生成するとほとんど匂いが取れるんですね。父は血や肉が付いた部分を取り除き、真っ白な脂の部分だけを生成するように業者に頼んでいるので、脱色しなくても真っ白だし、脱臭しなくても匂いはほとんど無いんです。

中屋 なるほど。香料は後から足したんですか?

松岡 父のこだわりでヒノキやヒバっていう香りの石鹸を作ったんですが、今は脂の含有量を増やし、オリジナルの香りを調合した「Gibier Soap」の石鹸を開発中です。

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当時はヒノキ・ヒバ・ラベンダー・無香料の4種類を製造

中屋 それはとても楽しみです。TATSUMA SOAPを作る時に苦労したことはありましたか?

松岡 初めの頃、私は携っていなかったのですが、父が日本全国の石鹸屋さんに問い合わせて、動物系の脂で石鹸を作ってくれる会社を探していました。なかなか作ってもらえそうな場所がなかったのですが、福岡に馬の脂で石鹸を作っているメーカーさんがいらっしゃって、そこで作って頂けることになりました。

中屋 馬は昔からシャンプーとか馬油とかで使われることがありましたもんね。

松岡 馬や牛の脂の石鹸って、食べる時に余る部分の脂を使っているので、私たちが牛とか馬を食べている限り、供給がストップしないんです。ただ、猪は野生なので安定供給がすごく難しく、年間4ヶ月(11月中旬から3月中旬)しか猟期がない中で、どれくらいの猪が捕れるか分からないし、猟師さんがいなかったら商品ができないっていうのもあります。

⑤
けものと生きるをテーマに開催した「けものカフェ」のイベントにて

中屋 たしかに野生ならではの苦労ってありますよね。そういえば、僕と松岡さんとの出会いって表参道のカフェでしたよね?

松岡 そうそう、そうです!

中屋 あの時に猪の石鹸を作っているって話を聞いた記憶があります。

松岡 その後、中屋さんから連絡を頂いたのですが、男性がまさか石鹸に関心を持ってくれるとは思わなかったので、とても驚きましたね。

中屋 なんでこいつは石鹸に興味を持っているんだろうって思いますよね(笑)。当時はパッケージをお父さんが作られていたから、それが松岡さんの意思でデザインなどを変更するのが難しいという話を聞いた気がします。

⑥
イラストレーター・おさだかずなさんが手掛けたオリジナルパッケージ

松岡 父のこだわりで、商品名やパッケージがどうしても変えられないという悩みが去年まではあったんですけど、パッケージを変えてWebサイトを新しくしてから父の気持ちも変わっていきましたね。

中屋 けものカフェのイベントにもお父さんが来てくれていましたよね。あの時はたしか、母の日が近いタイミングでしたね。

松岡 そうですね。プレゼントで購入して下さった方もいらっしゃって、あの時はすごく驚きました。人前で実演したのはあの時が初めてだったので、どうすれば良いのかが分からず手探りの状態でした。

⑦
パッケージ変更後のTATSUMA SOAP

中屋 あのイベントの後、大きく変わったことはありましたか?

松岡 2年前の当時は、この石鹸を使ってみて良さは体感しているものの、ネット販売のサイトを持っていませんでした。猪の脂が、何で人の肌に良いのかを研究する前だったし、周囲の肌が弱い友達に使ってもらって、「良いよ、良いよ」と、リピートしてもらえるようになる前だったので、そこから1年くらいはもがいていました。

中屋 そうですよね。どうやって進めて行くかを悩んでいましたもんね。

松岡 あれから1年後にパッケージを変えて、去年の10月頃にサイトが完成して、やっと落ち着いて来たって感じです。

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イベント出店時の様子

中屋 売り上げもだいぶ上がりましたか?

松岡 当時は年間3個くらいしか売れていなかったので、サイト維持費の方が高かったし、あの頃に比べたらたくさんの人に認めてもらえるようになりました。今は毎日インスタグラムの更新をしてて、そこから新規のお客さんが見付けてくれたり、友達が口コミでどんどん広げてくれています。無添加なのでアトピーのお子さんを持つお母さんのファンや、リピートしてくれるお客さんも増えました。
カフェで商品を置いてくれるようにもなりましたね。カフェだと他社の製品がないから、目移りせずうちの石鹸を手に取ってもらいやすいという気付きもありました。
販売店舗もこの1年くらいで増えてきています。あとは、香港に輸出をして販売してもらったり、最近は在米の友人が協力してくれてアメリカのサイトを立ち上げたばかりです。

中屋 劇的に動いているじゃないですか。

松岡 動かさないと、って必死な想いでやっています(笑)。

⑧

中屋 海外の話もありましたが、今後、松岡さんとしては、TATSUMA SOAPをどういう風に展開していこうと思っていますか?

松岡 TATSUMA SOAPはめんどくさいケアをしなくて済むということを知ってもらいたいし、無添加なので肌の弱い人に使って欲しいです。私は化粧落としや顔と体を洗う用途としても使っているし、化粧水や乳液などを使わなくても良いくらい肌質が変わりました。
中屋 肌ツヤツヤですもんね。

松岡 固形石鹸は日本の軟水に非常に合うと言われているので、固形石鹸がもっと人に広まるようになったら嬉しいです。
あとは、今ある3つの石鹸の中でも、脂の含有量が最も多いものが一番喜ばれているんです。なので、更に脂の含有量と肌の保湿力を上げて、香りも楽しめる「Gibier Soap」というのを今開発しています。今はその「Gibier Soapシリーズ」を早く完成させたいです。

体験には何があった?

松岡さんとの出会いはひょんなことがきっかけでしたが、一つ一つのつながりが新しい体験を生み出し、「けものカフェ」というイベントを手掛けることができました。当時は、TATSUMA SOAPの存在があまり知られておらず、手探りの状態でやっていた松岡さんですが、このイベントを通してTATSUMA SOAPの認知も徐々に広がり、今では海外進出を図っています。

けものカフェを手掛けるという体験創りをきっかけに、松岡さんの視野が広がり、これからの挑戦を手助けする一歩につながったのではないでしょうか。体験には一回りも二回りも成長する要素が含まれているのだと感じることができました。

TATSUMA SOAP

文・木村紗奈江

キーワード

中屋祐輔

体験を開発する人。
シナジーマーケティング株式会社にて「復興デパートメント」リブランディング、東北の若手漁師集団「FISHERMAN JAPAN」のファンクラブ担当、熊本地震の復興クリエイティブチーム「Bridge KUMAMOTO」理事。ほっとけないどう事務局。2017年4月よりdot button company株式会社を設立。

松岡磨貴子

「けものと生きる」をテーマに、良質な野生のイノシシ脂をふんだんに使用し、お肌を癒す自然(けもの)の恵あふれる「TATSUMA SOAP」を製造・販売。たつまとは、巻き狩りで射手が立つ場所を意味している。

木村 紗奈江

dot button company株式会社・エディター、ディレクター。大学を卒業後、ピースボートで初海外・世界一周の旅に出る。帰国後は日本中を約2年半旅しながら働く生活を送る。映像クリエイター、ライター、カメラマン、料理人など、多彩な顔を持つ旅を愛する自由人。
自らの体験が人生を変えたように、今度は自分がワクワクする体験を開発したいと思い日々奮闘中。