普通に読める日本語の雑誌 トラベシア Vol.3 ーリトルプレスから始まる旅 volume78
2019.12.03 UP

リトルプレスから始まる旅 普通に読める日本語の雑誌 トラベシア Vol.3 ーリトルプレスから始まる旅 volume78

DIVERSITY

「おかあさん」を読む。

 今回紹介するリトルプレスは、「普通に読める日本語の雑誌」を標榜する『トラベシアVol.3』。

 1号は「顔」、2号は「労働」を特集し、今号の特集は「おかあさん」。

 『トラベシア』には、発行者の鈴木並木さんが、映画作家、映画監督、看護師、ホステス、音楽家、会社員、イラストレーター、配達ドライバーなど、有名無名を問わないさまざまな顔ぶれに声をかけ、テーマに基づいて、エッセイ、フィクション、コミック、インタビューなどを収めている。

 テキスト中心の誌面ながら、それぞれのテキストに呼応するように、ページレイアウトやデザインが施され、読者を飽きさせない。

 ハイヒールでキッチンに立つ「おかあさん」にインタビュー。

 16歳から2歳までの5人の子どもを持つ、目まぐるしいであろう毎日を、「おかあさん」はどんな風に過ごしているのか、写真とともに紹介されている。

 そこには、読む前になんとなく想像する「おかあさん」像ではなく、興味深く、個性的な一人の女性が見える。

5人の子どもの「おかあさん」も、やはり特別な人。
5人の子どもの「おかあさん」も、やはり特別な人。

 earとyearの発音の違いを、英語のネイティブではないにもかかわらず、苦労もなく区別できる姉妹は、幼少の頃の「おかあさん」の読み聞かせにあったことに気づく。

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 自分でやっているレコードイベントに母娘で来てくれたお客さんに、つい「もう大きな娘さんを誘ってはいけませんよ。仲良し親子の愛の繭は共依存につながり……」と余計な説教を垂れてしまう、いい加減、「おかあさん」の説教を忘れてしまいたい息子。

 「あんたほんまぶちゃいくやなあ」が母親の口癖だった女性。美人だった母親に植え付けられた「コンプレックス」とつき合いながら、ホステスという職につき、日々を過ごす。

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 ガールスカウトのリーダー、保護司でもあり、2人の息子の母でもある女性について、漫画によるレポートとインタビューが掲載されている。栄養士から保護司になった経緯や、その活動。また、男の子2人の子育てのエピソードなど。

 22の記事に22人以上の「おかあさん」が登場し、それぞれの姿を垣間見せてくれる。その多様性は予想以上のものだった。

 まず、「おかあさん」の特集と聞いて、違和感があった。「おかあさん」という言葉には「女性」を枠にはめ込む価値観がつきまとう。

 今回の『トラベシア』に登場するさまざまな「おかあさん」は、たくましく生きる「女性」でもあり、生きにくさを持つ「女性」でもある。

 自分自身にある「社会的な役割」についての思い込みや、偏見について改めて考えてみたい。

『トラベシア』編集・発行人から一言

 なるべく役に立ちそうもない、ただ読んで楽しいだけの文章を集めた雑誌があったらいいな、と思って創刊しました。毎回たくさんのみなさんの力を借りて、贅沢な遊びをさせてもらっています。創刊号「顔」は完売品切れ、第2号「労働」は好評発売中です。

今月のおすすめリトルプレス

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『普通に読める日本語の雑誌 トラベシア Vol.3』

 編集人の人選でつくられた、日本語で読むための雑誌。

編集・発行:鈴木並木
2018年6月発行、148×210ミリ(82ページ)、540円

記事は雑誌ソトコト2018年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

文●根木慶太郎

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根木慶太郎

ねき・けいたろう
岡山県玉野市で新刊や古書、洋書、リトルプレスを扱う書店『451ブックス』を経営。地元では「絵本を読む」教室なども開催。全国から取り揃えたリトルプレスはネットショップでも購入可。www.451books.com