「菜園の大リノベーション 中編」 ー森の生活からみる未来 第72回
2019.12.09 UP

連載 | 森の生活からみる未来 「菜園の大リノベーション 中編」 ー森の生活からみる未来 第72回

SUSTAINABILITY

 DIYやガーデニングが一般的となっているニュージーランドでは、どの街にも必ず、日曜大工店、ガーデニングショップ、土・砂・石・岩を専門に扱うさまざまな販売店がある。

 どこも、「お店」というより、「巨大な展示場」と表したほうがいいほどの規模で、ぼくが暮らす湖畔の森から一番近い、人口約5万人の小さな街にも大きなのがしっかりとある。

 さて、「パワーショベル5杯分」のオーガニック腐葉土を購入した話は先月書いた。この量は、ぼくの車で牽引する大きなトレーラー(販売店で1日5ドルでレンタル)に1回では載せきれない。結局ぼくは、3往復することに。

 トレーラーを引っ張って公道を走ることには何の問題もないが、実は、ひとつ大きな難関がある。最後に、公道から湖畔のわが家まで、高低差50メートルほどを下りていく私道が、その問題の個所なのだ。

 かなり急勾配で、道幅は、乗用車1台がギリギリ入れるくらいの狭さ。さらに、ハンドルを完全に切ってやっと曲がりきれる180度のカーブを含むジグザグ道。しかも、木々が覆い被さる、暗い森の中を進まないといけない。乗用車でも、ゆっくりていねいに進まないといけないレベルで、10人乗りのバンだと進入できないほど。大量の土を載せた大きなトレーラーを引いて、そこを抜けないといけない、ということになる。

 もちろん、マイボートを載せたトレーラーを何度も出し入れしているので、初めてのことではない。ただ、借りたトレーラーは、いつものそれより横幅がある点が不安だった。

 いよいよその私道に入る直前、車を一度停め、ハンドルを握りながら大きく深呼吸。そして、慎重に慎重にその道を進む。もっとも急なカーブでは本当にギリギリで、1〜2秒ハンドルを切るタイミングを逸していたら、トレーラーのタイヤが道から落ちて面倒なことになっていただろう。大げさでなく、10センチのズレが致命的となる。3往復だから、この緊張の作業をあと5回繰り返さないといけないわけで、まだまだ道のりは長い。

トレーラーの大きさが伝わるだろうか。長さもさることながら、幅が大きい。
トレーラーの大きさが伝わるだろうか。長さもさることながら、幅が大きい。

 さて、何とか庭のオーガニック菜園の正面にトレーラーを置き、そこからは通常のショベルを使って、手作業で畑に土を移していくことになる。今回の菜園リノベーションの工程において、もっとも激しいこの肉体労働は、想像以上にたいへんだった。両手で握ったショベルに山盛りの土を載せ、全身を使って畑に投げ込む。この動作をいったい何度繰り返しただろうか。

 こちらは夏。暑くて、すぐに汗だくとなる。Tシャツを脱いで上半身裸になって作業を続ける。休憩とストレッチヨガを間に入れながら、すべての土を移し終えるのに最低3〜4時間。そして、このハードワークを計3回行うわけである。

 繰り返しになるが、ぼくは昔からこういった野外での肉体労働が大好き。木々に囲まれた自然の中、お好みの音楽をかけ、恍惚となりながら一つのシンプルな作業に没頭する。「ランナーズハイ」ならぬ、「ガーデニングハイ」状態。全身を無駄なく鍛え上げるトレーニングであり、心を完全に整えてくれるメディテーションだ。そして今回のリノベーションでは、土の入れ替えだけでなく、菜園自体の「容量アップグレード」も含まれている。それに関しては、次回で詳しく書きたい。

記事は雑誌ソトコト2018年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

写真・文●四角大輔

キーワード

四角大輔

よすみ・だいすけ
ニュージーランドの湖で半自給自足の持続可能な、森の生活を営む執筆家。フライフィッシング冒険、世界でのオーガニックジャーニー、アーティスト育成をライフワークとし、会員制コミュニティ『Lifestyle Design Camp』学長、複数の企業の役員やブランドアドバイザーを務める。レコード会社プロデューサー時代に7度のミリオンヒットを創出。好評発売中の新刊『人生やらなくていいリスト』では、ストレス社会となった日本で、自分自身を守り抜き、軽やかに働き、自分らしく生きるために必須の「ミニマム仕事術」と世界一簡単な「人生デザイン学」を公開している。増刷を重ね、現在4刷。