なぜ研修を終えてもヒトはmachiminに残るのか
2019.12.20 UP

連載 | ながれやまlab. ‐まちをみんなでつくる‐ | 6 なぜ研修を終えてもヒトはmachiminに残るのか

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前回に引き続き、machiminが考える人材輩出とは。

まちのヒト研修が目指すのは、個人の「~したい」という望みを自分の力で実現できるヒトを増やすことです。いつか自分の店を持ちたい、個人事業主として独立したい、引っ越したばかりでまちにつながりが欲しい、まちにこんな機能が欲しい、コミュニティの作り方を知りたい...ヒトの数だけ望みがあり、それに応じて研修の内容や研修終了の定義も異なります。ただし、研修を終えmachimin・手塚の元を巣立つ準備が整ったか否かを見極めるポイントは共通しています。

今回は、前回の記事で紹介した橋本さんのその後に焦点をあて、研修終了のタイミングやmachimin・手塚との関わり方の変化について詳述し、私なりの人材輩出に対する考えをお伝えしたいと思います。

研修を終えるタイミング-ヒトの自立

ヒトの精神的・経済的な自立とそれを促す周辺環境を整えることがmachiminで行うヒト研修です。ヒトの自立=研修終了とした時に、個人の意志でmachiminや手塚との関わり方を決断することが研修(手塚による人材育成)の最終章です。

最終章に行き着いたかどうかを判断するポイントは次の3要素に集約されます。
①自信や自己主張がある
 -自分は何がしたいのか・何ができるのかを第三者に伝えることができる。
②物理的な条件が揃っている
 -経済的な自立の見込みがある、本人が必要とする収入を得る当てがある。
 -必要な仲間がいる。
③意思や判断軸を持っている
 -何に関しても自分で意志決定を行うことができる。

橋本さんの場合は単純にイラストが描けるという漠然とした状態ではなく、できること=「あるコミュニティに属しながらその内外で生じたことをイラストや文章、漫画で表現すること」、やりたいこと=「その活動を通じて地域や特定のコミュニティの課題を広く伝えること」だと、ヒト研修を通じて彼女自ら言語化できるようになっていました。日経DUALへの連載決定や賞の受賞経歴と関連業務の受注など、machiminを介さずともある程度の収入を得られるような環境も整いつつありました。
 
できること・やりたいことの詳細が明確になり、経済的にも自立の兆しが見え始めると、自身の「〜したい」を実行する物理的な時間を要します。同時に、研修はありがたいものではなく、時間を奪うものになるため、研修に割く時間を減らしたいと思うようになります。それでも本人が残りたいと希望するのは、machiminに居続けることに何かしらのメリットがあるためです。

橋本さんに関してはmachiminにいることで得られる経験が、フリーのイラストレーターとして受注している仕事(実在のエピソードを元に子ども食堂に対する世間の理解を深めるための漫画制作)にダイレクトに良い影響を与えているようです。

machiminに居て年代や性別も異なるいろんな方とコミュニケーションをとることで蓄積された情報が、漫画の登場人物やストーリーを考える際にとても役立っています。

みんなの意見

窓から見える電車

他にも、約2年活動を共にするなかで、うまく言語化しきれてはいないけど感じている居心地の良さやmachiminという場への期待も、居続けようと思う根拠になっているそうです。

ただただmachiminがうまくいってほしい、理想だけどみんな諦めていることが叶ってほしい、まちが元気になっていくことに貢献したい、沸き起こる不思議なワクワクを肌で感じたい、訪れるいろんな方から得られる多方面の学びが心地いい、コミュニケーション好きな自分がmachiminにいると良い精神状態を保てるなど、言語化できないけどここにいたい理由はまだあるかもしれません。

こうした本人にとっての利点を踏まえつつ、個人の意志でmachiminや手塚との関わり方を決断すること、それが決定的に重要です。手塚の提案やアドバイスは、あくまでも選択肢の参考程度に捉えてほしいのです。

手塚がmachiminの手綱を離すとき

machiminを運営するなかで、店員としての振る舞いや考え方、人との繋がり方、コーディネートなど、いろんな観点で自分より橋本さんがいるmachiminの方が、場としての理想のあり方に近いと薄々感じ始めていました。この記事を書くにあたり、橋本さんや第三者に話を聞いてもらい頭を整理して、想像していなかった本音をもらったり、気持ちが揺れ動き悩みました。研修の最終章の先にどんな関わりが待っているのか、研修が終わっても、彼女はなぜmachiminを辞めないのか。自分でも答えが見つからない問いに向き合う3週間で、未だに橋本さん本人も明確な答えが見つかってるようには思えません。

ただ、わたしのなかで一つの変化を感じています。半年前からmachimin2ができる場所はないかとゆるく探していましたが、このタイミングで次の拠点を決めにかかっている自分がいます。なぜなら、すでに現在のmachiminが手塚のバショではなく、橋本さんを店長とするオープンなアトリエになっているのではと直感的に感じていたからです。そう考えれば橋本さんが今のmachiminを辞める・去るという選択をしないことにも説明がつきます。

「ここから居なくなるのは私かもしれない。むしろ、それが必然な気もする。」

machiminという場からヒトが卒業し旅立ちいなくなるのではなく、ヒトとmachiminを育て、そのヒトが運営できる・手塚が任せられる状態になったら、手塚が次のステップへとシフトしていくのかもしれません。

みんなでたこ焼き

つまり、育ったヒトの数だけmachiminが育っていく。その場の空気感や活動内容は、そのヒトの個性で彩られていき、まちを良くする様々なmachiminができる。machiminの今後の展開として、このようなイメージが湧いてきました。以上のように考えると、すでに研修を終えつつあるヒトが橋本さん以外にもいるので、machimin4までの用意を視野にいれなければならないと感じています。

研修終了後の活動形態については橋本さん自身が決めることなので、現時点ではあくまで選択肢の一つにすぎません。他にもビジネスパートナーとして共同事業を立ち上げる・共同で商品開発をする、会社のメンバーとして社の広報業務や人材研修業務を担当する、個人として第2ステージの「自分の単価を上げる」研修に参加する、他にも関わり方の選択肢は多様にあるはずです。その中から、本人の「〜したい」という想いに基づいて自己決定してほしいのです。

この記事を書く中で、自分に向き合う機会を得られました。お読みいただいた全ての皆さま、ありがとうございます。

次回は、machimin2.3.4で何がしたいのか、年末年始を使って頭の中の考えをゆっくりと言葉にしていきたいと思います。

text●手塚純子
illustration●はしもとあや

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手塚純子

株式会社WaCreation 代表取締役社長(本社:千葉県流山市)
1983年大阪生まれ神戸大学経営学部卒業。人的資源管理を学び、体育会アメフト部で組織マネージメントを実践し、人や組織の面白さにどっぷりはまる。2007年株式会社リクルート入社、営業・人事・企画を経験。ビジョン策定浸透・採用・人材育成などの分野でプロデュースを強みとする2児の母。生牡蠣とオムライスが好き。