一緒に住んでいるから生まれた、母に娘を預ける安心感。
2019.12.10 UP

連載 | 田舎と田舎の二拠点生活 | 28 一緒に住んでいるから生まれた、母に娘を預ける安心感。

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 秋に、1泊2日の東京出張の依頼が入った。「やりたい。でも、できるのか?」。

 産前は、年の4分の1以上泊まりで出張していた。思うがままにあちこち行く日々が楽しく、飛び回るから仕事の依頼もきていた。しかし産後は突然ハードルが高くなる。

 特に大きい要因が、頻繁に起きる「哺乳瓶拒否」。約2時間置きに授乳していたので、1時間半以上娘の側から離れることができなかった。ただ今回の出張時には1歳3か月。授乳しなくても問題ない。

 とはいえ、手がかかることには違いないので、ドキドキしながら母に預かってもらえるか尋ねたら、躊躇なく「行ってき」の一言が返ってきた。年のうち、200日以上一緒に暮らしているので、母も子育てに慣れ、「問題ない」という確信が湧いたのだ。

一緒に住んでいるから、私が不在でも娘はいつもどおり。

 離乳食など育児に必要な準備は万端にし、出張時間は最短、帰宅後は母が休めるよう仕事を調整するなど、母の負担が減る対策を練って出発。東京での仕事を終え、不安な気持ちを抱えながら約36時間ぶりに帰宅したら、ケロッとした顔で「あ、おかえり〜」と迎える母と娘がいた。お詫びと感謝を告げて「どうだった?」と聞くと、「え? いつもと変わらんで」と、あっさり母が答えた。詳しく聞くと、呆気にとられるくらい平和で拍子抜け。

 その理由を思い返せば、「孫と一緒に住んでいる」からだと確信した。

 「子どもを実家に預ける」こと自体は、世の中全般でよくあることだが、「たまに孫と会う」場合だと、グッとしんどくなる。

 近所にも近い月齢の孫を持つ人が何人もいて、私もその人の話を聞くことが多いのだが、「いやあ、久しぶりに面倒を見たけどしんどいわ。前に会った時から好みも行動も変わっているから、どう対応したらいいのかわからん。家の中も手が届く範囲に危ないものが多くて気疲れするしな。譲子さん(母)みたいに、一緒に住んでたらもっと平気なんやろな」や、「預かるにしても、場所見知りや人見知りで泣かれて大変」など、いろいろな苦労話が出てくる。子育て経験がある彼女らも、別に住んでいる乳幼児を預かるのは想像以上に大変なのだ。

 「会社」なら、いざとなった時に誰かが代わりに対応できることが当然のようにされているが、本来は子育てだってその状況が望ましい。しかし、私の周りの多くの母は「旦那は頼りないし、親に預けたら嫌がられる」と自分が犠牲になるばかり。そんななか、私は二拠点生活のおかげで、たまたま最強のピンチヒッターがいる状態になっていた。極論、産前くらい出張を入れることもできる(実際には母に申し訳なくてやらないが)。母に無理ない範囲で、少しずつ仕事を軌道に乗せてみようかな。

ある日の夫婦

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 先日、夫が福岡県に行くことになったので、私と娘も同行(ラッキー)。今回は、夫は幡豆から、私と娘は小豆島から出発し、博多駅で合流。途中で落ち合うのは初めてで、新鮮だった。しかももともと幡豆のシェアハウスに住んでいた子が福岡市内を案内してくれたり、これまでいろいろなところで知り合ってきた、何人もの地元の友人と会えてうれしかった! 帰宅後、私が38度以上の熱が出るほど盛り上がったな(笑)。

記事は雑誌ソトコト2020年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

文 ● 黒島慶子
イラスト ● 宮本貴史

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黒島慶子 

くろしま・けいこ
醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときから小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、様々な人やコトを結びつけ続ける。2017年7月6日に、愛知県の幡豆で無農薬で大豆と米を育て、米・豆・麦の麹を作る『宮本農園・みやもと糀店』の宮本貴史と結婚。高橋万太郎との共著『醤油本』を出版。