“リアル沖縄”を学ぶ、沖縄短期研修プログラム。
2019.12.08 UP

“リアル沖縄”を学ぶ、沖縄短期研修プログラム。

LOCAL

今、都会に暮らす若者が沖縄県について学ぶ意義はどこにあるのか?
沖縄県の大学や宜野湾市と連携し、沖縄県の課題を市民目線で体験する「沖縄短期研修プログラム」を実施する桜美林大学の先生に尋ねた。

 東京都町田市にメインキャンパスを置く桜美林大学と沖縄県の関係は、1980年代にまでさかのぼる。桜美林学園の創立者である牧師の清水安三氏は、沖縄戦で島民の約4分の1という多数の死者が出たことに強く同情し、教育事業を通じて沖縄県を支援したい、本土復帰する前から沖縄県出身の学生を大学に受け入れてきた。「全国に先駆けて沖縄で現地入試も実施し、沖縄からの入学者数は全国9位と他県に比べても多くなっています」と、副学長の長田久雄さんは桜美林大学と沖縄県のつながりを語った。

本プログラムの背景を語る長田久雄副学長。
本プログラムの背景を語る長田久雄副学長。

 そんな背景があるなか、2018年度の内閣府「地方と東京圏の大学生対流促進事業」に応募し、採択された。実施にあたって、従来の開講科目「地域社会参加(沖縄学入門)」を基礎に、事業協定を結んだ宜野湾市を中心に7日間程度のフィールドワークを行う「沖縄短期研修プログラム」を新たに加えた。参加学生たちは、沖縄県が直面する社会課題や受け継がれる歴史・文化を学んでいる。

FMぎのわん』に出演し、活動を報告。
『FMぎのわん』に出演し、活動を報告。

 「宜野湾市に暮らす一般の人々とふれ合えば、“沖縄=リゾート”だけではないことに気づかされます」と、沖縄学を教える教授の中生勝美さんは話す。「普天間基地のそばの建物の屋上に立ち、軍用機の轟音に耐えきれずに耳を塞いだり、沖縄県の子どもの貧困率は29.9パーセントと全国平均の2倍近い深刻な状況であることを子ども食堂を訪ねて知ったり。一方で、子どもの居場所にもなっている公民館で、配られるおやつを笑顔で手にする子どもたちとふれ合い、コミュニティの大切さに気づいたり。普通の観光では見聞きできない“リアルな沖縄”に刺激を受けた学生たちの沖縄を見る目は大きく変わっていきます」。 

実習先の宜野湾で、普天間基地に並ぶオスプレーを眺める短期研修参加の学生たち。
実習先の宜野湾で、普天間基地に並ぶオスプレーを眺める短期研修参加の学生たち。

 夕食後、2時間近くの振り返りミーティングを行い、体験や思いを共有する学生たち。「メディアに頼るのではなく、自分の目で見て、耳で聞いて、自分の頭で考えることが大切」「桜美林に戻っても、あのとき沖縄がどう見えていたかを意識することで、沖縄の問題を解決する第一歩を踏み出せそうに思う」と、沖縄県を見る目の変化をレポートに綴った。

 「こんな発見もありました」と、学務部長の和田満さんは言う。「学生たちは公民館に宿泊しました。布団は業者からレンタルしていたのですが、ある学生が地域の高齢者が暮らす家で布団を借り、さらには空いていた部屋で宿泊させてもらったのです。高齢者は、『孫のような年齢の学生と話す機会ができて楽しかった』と喜ばれたそうで、こうした宿泊のかたちも新たな民泊事業になるのではと宜野湾市に提案したりもしました」。

公民館のデイケアで「もやしのひげ取り」を行う高齢者とふれ合う。
公民館のデイケアで「もやしのひげ取り」を行う高齢者とふれ合う。

 桜美林大学としては、この短期研修プログラムをきっかけに、より深く沖縄を学べる長期研修プログラム(国内留学)の受講生の増加につなげたい思いもある。08年から沖縄エイサー部「桜風エイサー琉球風車」が活動しているが、長期研修プログラムで沖縄国際大学に学んだ学生がエイサーを習い、桜美林大学で立ち上げたのが始まりだ。11月に行われた「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」でも沖縄国際大学の学生とともにエイサーを披露した。そんな文化交流も、研修プログラムを行う一つの意義と言えるだろう。

記事は雑誌ソトコト2020年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

photographs by Hiroshi Takaoka
text by Kentaro Matsui

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