武蔵野の水源に耳を澄ます。トロールの森2019「池の畔の遊歩音楽会2019」
2019.12.12 UP

武蔵野の水源に耳を澄ます。トロールの森2019「池の畔の遊歩音楽会2019」

PEOPLE

 中央線沿線エリアは、東京の中でも特異な立ち位置にある。この沿線には江戸の生活用水だった神田上水の水源が点在し、現代ではそのほとんどが公園になっている。

 東京都杉並区西荻窪にある善福寺公園ではアートフェスティバル「トロールの森」が2002年より開催されている。その中の鳥越けい子氏による「池の畔の遊歩音楽会2019」は、鎌倉時代初期に江の島から勧請されたと伝えられる市杵島神社と源頼朝が弓で汲み上げた伝説のある水源「」では神楽が展開され、音楽会もこの水源を中心にストーリーが組み立てられる。「耳を澄ます」ということに主眼が置かれ、解説もマイクを使わず小声でささやかれ観客は耳を澄ます。サウンドスケープの手法に、目を閉じて聴こえてくる音に集中する「ブラインドウォーク」というものがあるが、ここでは女人のための立山信仰の儀式「布橋灌頂会」(布で目隠しをしたまま橋を渡る)を模して、観客は布で目隠しをしたまま落ち葉を踏む音や鳥の声などを聴きながら池を巡るうち、普段は聞こえていなかったものが聞こえてくるという体験をする。

 西荻窪には江戸開府以前の痕跡が露頭し、江戸の町人文化とはまた違った文脈の世界が広がっている。21世紀にはすっかり見えなくなっているが、よくよく耳を済ますと列島には中世(鎌倉〜室町時代)の記憶が聞こえてくる地点がある──。中央線の特異な立ち位置もこのことにつながっているように思う。

記事は雑誌ソトコト2020年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

text by Kenichiro Hoshi

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