竹内真二と指出編集長
2019.12.12 UP

連載 | デジタル地方創生記 くじラボ! | 6 地方創生における企業の力と「地方色」の意味について 指出編集長対談(後編)

WORK

くじらキャピタル代表の竹内が日本全国の事業者を訪ね、地方創生や企業活動の最前線で奮闘されている方々の姿、再成長に向けた勇気ある挑戦、デジタル活用の実態などに迫ります。

前回に引き続き、特別編としてソトコトの指出一正編集長との対談をお届けします。

くじらキャピタルが「企業」を通じた地方創生にこだわる理由

竹内 地方を回って投資先様と話したり、「くじラボ!」の取材をさせて頂くと感じるのですが、地方創生に取り組まれている方々は非常に意識が高く、感覚も鋭敏で話していて気持ちがいいんですけど、一方でそのご努力が継続的な成果に必ずしもつながっていない状況も散見します。イベントでの瞬間的な集客だったり、一発芸的な取り組みだったり。

先ほど指出さんが仰っていたクラフトハンバーガーのお店にしても、結局そのお店が儲かっていないと続かないし、「あ、ここでこの商売するとこんなに儲かるのか」と周囲に思われないと、その後に続く店も誕生しないと思うし、地域の活性化にもつながらないですよね。

そういう意味で、我々としては利益というものを非常に大事に考えていて、それを追求する母体として「会社」の単位で支援した方が地方創生にはより効果的だし、構造的に続きやすいんじゃないかという考えを持っています。

地域のために頑張ることは非常に尊いことですが、自己犠牲や利他が前面に出過ぎると自己満足に陥りやすいし、「利益」という指標がないと組織としての永続目標がないので、途中で空中分解しやすい印象があります。

指出 誰しも自分のビジネスが続くことを願ってやっていて、そのためには利益を出すことと自分がやりたい仕事とのバランスで楽しんだり、時に苦しんだりしているのだろうなというのは感じます。

ローカルベンチャーとして始めて、数年で収支トントンになったり、それなりに利益を出している人もいない訳じゃなくて、いない訳じゃないということはやり方によってはこの形で地域に盛り上がりを作りながら、自分のやりたいことをやりながら、それでいて持続可能なビジネスもできるんだな、と。

そういう意味では竹内さんの問いかけに対して僕が答えるとすると、懐疑的に見ていくのではなく、積極的・肯定的にうまくいく人たちが出て来て欲しいなと考えています。

「地方色」はどこまで必要か

竹内 ローカルベンチャーというと、地方色を出した方が分かりやすいとは思うのですが、一方でその地域で成立する商売ならば過度にその地域の特殊性にこだわらなくてもいいのかな、という点はどうでしょう?

これは指出さんがソトコトオンラインアカデミー(「ソトコト編集長指出一正と考える どこにいても参加できる地域の編集講座ラボ」)の推薦図書として挙げられていた「地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門」にも書かれていた話ですが、もちろんこの本はフィクションですけど、別にその地域の名産品を集めた訳じゃない、普通のセレクトショップだけど物凄く尖っていて、主人公の運営している商業施設の中で成功しているショップの事例がありましたよね。

元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門

これ、自分の経験からしても本当にその通りだと思うんです。商品選定やビジネスに普遍性があれば、ことさら地域性に極端に振らなくてもいいのかな、と。

指出 ローカルは個店の魅力と伝統の魅力と両方あると思っていて、ちっちゃいローカルベンチャーがその場所にこれまでなかったものを作ることで結果的に上手くいく事例はありますよね。

例えば高崎には、ガトーフェスタ・ハラダというラスクで有名な洋菓子メーカーがあります。別に高崎は昔からラスクが有名だった訳ではないし、何か産業史的な背景がある訳ではないんだけど、ハラダができた結果、「高崎はラスクの町」みたいにイメージがガラッと変わったりする訳です。

そういう意味では、個人経営者の着想から得たような、その土地に文脈はないし地域づくりや町づくりにも直接関係ないけど発展性があるものがビジネスとして出てきた方が頭打ち感がないですよね。

うちは茨城だからもう納豆しかない、と思い込んだらそこで終わってしまうので。

なぜ事業が承継されないのか

指出 竹内さんに聞きたいのは、100年続いているような企業は日本各地にざらにあるんですよ。そんな歴史があっても後継者がいない企業が沢山ある。これはどうしたらいいんですか?

竹内 すごく重たい話ですよね。日本には300万社以上の中小企業がありますが、その3分の1以上に後継者がおらず、廃業の危機が迫っていると言われています。

竹内真二

それぞれの会社固有の事情はあるにせよ、産業構造的に活路を見出しにくい業態が多く、かつ儲からないので後継者が敬遠するという、ある程度共通する姿は見えます。

300万社中小企業があると言っても、日本はどうしても戦後、自動車とエレクトロニクスの国として発展してきたので、多くの会社がその産業構造の中に組み込まれている。技術が優れていたとしても独自に顧客を開拓できる訳ではないし、下請け的な振る舞い、端的に言うと安い値段で耐え忍ぶ力が求められてきました。

それでは将来の展望が描けないので継ぎたいと思う人は少ないでしょうし、我々もファンドとして投資が難しいという現実があります。

指出 ここ結構大事な視点ですね。僕はやはり、その地域に紐付いた話題ばかりを認識して吸収しているんですよ。和菓子屋さんの跡継ぎをどうするとか、それこそ漆器だったり伝統工芸だったり、神主さんだったり。こんな面白い仕事ばっかりなんだから誰かやればいいじゃんっていう短絡的な考えでいたんですけど、それは氷山の一角で、日本の抱える産業構造上の課題を見て、そこから抜け出すにはどうすればいいのか、という視点ですよね。

竹内 そうです。事業承継を巡っては、カラフルな業種がメディアでもてはやされがちです。歴史のある和菓子屋さんとか、神主さんは分からないけど(笑)、伝統工芸だったり、分かりやすい業種が取り上げられやすい。

一方で、ほとんどの中小企業はそういう事業分野ではなくて、例えば金属加工会社で、某自動車メーカーのエンジンのこの部分を加工しています、プラスチック射出形成でこの部品を作っています、顧客は自動車メーカーの3次受けです、みたいな構造です。これは完成品ではないので外部からは事業内容が分かりにくい上、地味なのであまりメディアには出ません。

指出 僕、町工場やらせくれるなら、自分の釣り用のリールを作りますけどね。

竹内 そういう人は強いんです。最近拝見する事業承継で成功したパターンって、元々何かのメーカーで、東京に出た子供がITかメディアみたいな会社に就職したんだけど戻って来て、親が「どうせこのままだと廃業だから、お前、継いで好きにしていいよ」という感じのパターンです。

で、その後継者がマーケティング的視点を持って、顧客目線で好きなことに取り組むと、それがブレークしたりする。もし指出さんのご実家が金属加工会社だったら、世界的にも有名な素晴らしいリールが作れたでしょうね。

指出 それも自分の夢の一つにします(笑)。

課題解決における「編集」の凄さと未来

竹内真二と指出編集長

竹内 先日、ソトコトオンラインアカデミーに参加させて頂き、新鮮な刺激を受けました。この新鮮さの源泉はどこにあるんだろうと考えた時、僕らが常日頃やっている「課題を具体的に解決する」という生々しい日常の世界と、指出さんやオンラインアカデミーの皆様が向き合っている「編集」という視点、その発想のユニークさや切り口の斬新さとの違いもあるのかな、と思いました。

指出 竹内さんのいう「課題解決」というのは、どのようなことを指していますか?

竹内 これは先ほどの話に戻ってしまうんですけど、表面的な行為だけで言うと「会社を続け雇用を守るために、利益を出し続けること」と言いきれてしまうんですよね。もちろん解決すべき課題は他にもあるし、その方法も色々あるので、これだとひどく矮小化された物言いにも見えると思うんですけど、真意はこういうことです。

損益計算書を見ると、株主であるファンドの取り分は一番下の行、当期純利益やその先にある配当です。ただ、そこに至るまでには、まず顧客を見つけて売上を上げて、仕入先に仕入代金を支払い、従業員を集めて給料を支払い、銀行に金利を払い、さらに税金を払う必要があります。

利益を上げるということは、顧客を見つけ、商品を作り、自分たちより前に待っている人たちに先に支払うことが前提になるので、利益を上げ続けることは結果として全てのステークホルダーの取り分を増やすことにつながるよね、そうなると人も集まるし地域も元気になるよね、というのが我々の思想です。

ただ、それを実現するためには、日常の営みに翻訳すると金属加工の歩留まりをどれだけ上げるか、生産プロセスをどれだけ短くできるかみたいなことを延々とやる訳なので、これだけだと夢がないよな、楽しくないよな、という反省がありました。

その中で指出さんが提示する課題の切り口だとか見方、取り上げる地域や業種の豊富さ、それをベースに楽しそうに議論するオンラインアカデミーの皆さんを見て、「編集の力ってすごいな!」という感銘を受けた訳です。

指出 多分、みんな編集っていうことに関して、癒されたい気持ちもあると思うんです。

オンラインサロンに来て、自分の本業じゃない分野で、本業にも繋がるような話をする。少し居心地のいいアウェーに来て、他の業種の人たちも交えて、編集された切り口でみんなと話すと心が軽くなるとか、自分でも持ち帰ってやってみたくなる感覚で、これはないよりはあったほうがいいんじゃないかなと思っているんですよね。

僕は、編集って弱い技術だと思っているんです。

3Dプリンターみたいに何かを生み出せるわけじゃないし、ロケットで宇宙まで行けるような工学技術でもなくて、今あるものを「じゃあどうしようか」という感じで少し組み合わせを変えて、別のアイディアにするみたいな非常に弱い技術だと思うんですよね。

ただ、弱い技術だからこそ人に線を引かないでみんなが来てくれているのもあるので、0から1を作るイノベーティブな力というよりは、1+1で2にするようなものが編集なのかなと思います。

竹内 編集は、癒しと新たな視点を与え、みんなを引きつける。それに利益と持続性を加えることができれば、最高ですね。今日はありがとうございました!

文/企画編集:竹内真二  撮影:五十嵐真由子

※本連載で取り上げる企業様は、くじらキャピタルの投資先ではなく、また出資に関するご相談を受けている先でもありません。
くじらキャピタル: https://www.quzilla.co.jp

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指出一正

さしで・かずまさ
月刊『ソトコト』編集長。1969年群馬県生まれ。島根県「しまコトアカデミー」、静岡県「『地域のお店』デザイン表彰」、奈良県「奥大和アカデミー」、奈良県下北山村「奈良・下北山 むらコトアカデミー」、福井県大野市「越前おおの みずコトアカデミー」、和歌山県田辺市「たなコトアカデミー」、高知県津野町「地域の編集学校 四万十川源流点校」など、地域のプロジェクトに多く携わる。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「わくわく地方生活実現会議」、「人材組織の育成・関係人口に関する検討会」委員。内閣官房「水循環の推進に関する有識者会議」委員。環境省「SDGs人材育成研修事業検討委員会」委員。著書に『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ新書)。趣味はフライフィッシング。

竹内真二

たけうち・しんじ
くじらキャピタル代表取締役社長。外資系投資銀行、複数回の起業とExit、上場企業のバイアウトなどを経て2018年に「人を幸せにする資本」くじらキャピタルを創業。デジタルx資本で中小企業を元気にすべく、日本中を飛び回っている。1976年、横浜生まれ。