みんなの尼崎大学
2020.01.10 UP

連載 | ソーシャル系大学案内 | 46 CCB Vol.5+みんなの尼崎大学(兵庫県尼崎市)

SOCIAL

 ソーシャルでエシカルな関心をもつ人を惹きつける、街の中に広がる学びの場「ソーシャル系大学」。今回は、兵庫県尼崎市で2019年11月に開催された、「みんなの尼崎大学 まちじゅう学祭2019」と、第5回「Community College Backstage (CCB Vol.5)」を取り上げる。
「まちじゅう学祭2019」の講座やワークショップには関西一円から学びたい人が、また「CCB Vol.5」にはソーシャル系大学を自主的に運営する全国の関係者が集まった。学びを支える楽しいステージ裏をレポートしたい。

人々の自発的な発意を大切に、新しいまちのプレーヤーを生み出す。

 2019年11月15日から17日まで、尼崎市内では「まちじゅう学祭」が開催された。これは市内のあらゆる場所をキャンパスに変える特別企画で、3日間、まちのあちこちで約60の講座やワークショップが開かれた。海釣りを体験するツアーから阪神タイガースの地域貢献、プログラミング教室にカンフー入門まで、海で、お店で、塾で、神社で、いつもの場所が一般に開放され、まちの人が新しい場所に出向いて学びを楽しむお祭りである。

みんなの尼崎大学

 同じ期間中に尼崎市役所開明庁舎では「CCB Vol.5」が開催された。今回5回目の開催を迎えるCCBは、年に1回、各地で自主的に「大学」を運営する人たちが集まる会合として定着している。今回は全国14校から40名あまりの関係者が集まり、濃密な2日間を共にした。最初に「みんなの尼崎大学」の概要を学んだのち、参加者はふたつのチームに分かれ、ワークショップを体験した。ひとつは「尼崎の未来を考えるカードゲーム アマガサキトゥザフューチャー2(ATTF2)」で、もうひとつは「対話と協働を学ぶRPG KOGAI QUEST」である。尼崎で開発されたカードゲームは、街にある拠点、人材、資源を活用し、工夫して地域の課題を解決するアイデアを競い合うという、小学生から高齢者までが楽しめるローカルなコンテンツである。またロールプレイングゲームは、公害に悩む一昔前の尼崎市を追体験するゲームである。

みんなの尼崎大学

 鋭い台詞をアドリブで繰り出す工場長、市役所職員、喘息の子をもつ親になりきった参加者のおかげで想像以上にスリリングな展開も見られるなど、外から来た人も短時間で尼崎の歴史の一端を知ることができる内容だった。その後、14校によるそれぞれの「わがコミュニティカレッジ」の紹介、運営方法や悩みを共有するワークショップなどを経て、一日の交流会があっという間に終了した。

みんなの尼崎大学

 場をつくる人たちを包摂する懐の深さが「みんなの尼崎大学」の最大の特徴である。3日目に開催された関西圏のソーシャル系大学3校による出張公開授業、「神戸モトマチ大学」による「みんなの福祉の舞台裏」、「交野おりひめ大学」による「百天満天物語」、「2畳大学」による「『留年論文』を書いてみよう」も、多様な学びに関心のある新たな人々を惹きつけていた。人々の自発的な発意を大切にする学びのプラットフォーム「みんなの尼崎大学」は、このようにして新しいまちのプレーヤーを生み出している。

みんなの尼崎大学

兵庫県尼崎市若王寺2-18-3 あまがさき・ひと咲きプラザ ひと咲きタワー9階 生涯、学習!推進課内

HP:https://www.amanokuni.jp/ucma/

記事は雑誌ソトコト2020年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

写真・文●坂口 緑
illustration by Verve Iwashita

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坂口 緑

さかぐち・みどり
明治学院大学社会学部教授。2000年、東京大学大学院博士課程単位取得退学。研究領域は生涯学習論。共著に『ポストリベラリズム』、共訳書にアーリー・ラッセル・ホックシールド『タイム・バインド』など。