宮本貴史
2020.01.12 UP

連載 | 田舎と田舎の二拠点生活 | 29 多様な暮らしを楽しんでくれている娘。

LOCAL

 娘は常にさまざまな人々に囲まれて過ごし、いろんな現場を見たり、話を聞いたりしている。小豆島の実家と、幡豆のシェアハウスの二拠点生活。さらに夫の仕事場は自宅でもあり、夫の麹造りを手伝う人も我が家で寝食を共にする。夫は友人が多くて賑やかな食卓になることも多く、また冬のうちは、1000人以上の人が味噌を仕込みに来る。もはや、育児を代表するスタイル「ワンオペ育児」は滅多にない。

生まれてからの反応で、 不安が解消。

 幸い、娘は新しい場所、ヒト、コト、モノが大好き。1歳4か月なので、まだ自分の思いを言葉で伝えはしないが、見る限りはうれしそうだ。生まれた頃から多くの人や場所に触れているから、慣れて抵抗がないのかもしれない。また、刺激が多いと興味が湧いたり、やる気が出たりして、発育が早くなる傾向があると時々聞くが、娘も確かに早い。

 一方、まだ娘がお腹の中にいる時、年配の助産師に二拠点生活をすることを伝えると、辞めるよう何度も説得された。「子どもは『毎日同じ』がいいの。いろいろな生活スタイルを送っていたら、子どもの気持ちが不安定になって心の病気になるかもしれない。移動するとき、母は大変なもの。そんな姿を見せるのもよくない」と。二拠点生活を肯定する助産師のほうが断然多いが、否定する言葉が頭から消えなかった。

 蓋を開けてみたら、今のところメリットのほうが多い。

 「母が大変な想いをいている姿を見せてはいけない」と言われたが、世間一般では「ワンオペ育児」が一番大変と言われてい る。確かに二拠点生活に大変な一面もあるけれど、それ以上に世界が広がって楽しいし、娘がほかの人と接している時に、「こんなことが娘はできるんだ!」「こう娘に接すればいいんだ!」と発見を得ることが多く、育児を改良させることもできている。

多様な生活が与える、育児のメリットと今後。

 母はていねいに育児をする案を、夫は逆にうまく手を抜く案を出すのが得意で、両方の案が欠かせない。周りにいるみんなも育児を手伝ってくれ、育児の相談にも親身に乗ってくれる。年にわずかにある「ワンオペ育児」も、たまにだからか意外に楽しいし、ずっと娘と向き合っているからか、 娘もいつもよりご機嫌だ。

 二拠点生活が育児において悪いかよいかは、子と親が多様な生活を楽しむモチベーションとパワーがあるか否かで変わるのではないか。娘が楽しそうなのであれば、今は、このままの生活を続けよう。娘の心変わりがあったらその時に対策を練ればいい。

ある日の夫婦

ある日の夫婦

 昨年12月に家族で鹿児島県に研修旅行へ。今回は見学に加え「実技」やお堅い場での「座学」があり、娘がいては無理な内容だったので、娘を託児所に預けることに。家族以外に預けるのは初。それも朝8時に預け、夕方5時 か6時に迎えに行くという、9〜10時間にわたる長時間の試み。私以上に夫が終始ソワソワ。預けられた娘は、半分は泣いていたそう......。ごめんね。おかげでしっかり学べました!そして、その後はたっぷり抱きしめました。

記事は雑誌ソトコト2020年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

文 ● 黒島慶子
イラスト ● 宮本貴史

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黒島慶子

くろしま・けいこ
醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときから小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけ続ける。2017年7月に、愛ある日の夫婦知県の幡豆で無農薬で大豆と米を育て、米・豆・麦の麹を造る『宮本農園・みやもと糀店』の宮本貴史と結婚し、2018年7月に娘を出産。高橋万太郎との共著『醤油本』を出版。