古くてあたらしい仕事
2020.01.18 UP

ぼくは仕事がきらいだった。『古くてあたらしい仕事』

DIVERSITY

 20代のころ、ぼくにとって労働はお金を稼ぐ手段でしかなかった。人間嫌いで独りレコードを聴いたり本を読むことが好きだったぼくにとって、広告会社の営業という仕事は苦痛でしかなかったから、あくまで仕事は生活の手段と割り切ってたくさんのクライアントに会い、夜遅くまで残業をしていた。あの日々は今にして思うとまったく無駄ではなかったと思うけれど、もっと早くこの本が出版されていて、その頃に読んでいたならば会社を辞めていたかもしれない。それほどまでに、この本は自分の仕事にかける嘘偽りのない誠実さと人の心を動かす言葉の力にあふれている。

 きらめくような美しい本ばかりを復刊する、夏葉社という出版社がある。その夏葉社の代表島田潤一郎さんがやわらかく平易な言葉で、自身の仕事観やこれまでの生き方を綴っているこの本をどうか見逃さないでほしい。労働を金を稼ぐ手段だと割り切っている、そこのあなたにぜひとも一読してほしいのだ。朝起きて顔を洗い、誰かのために働く原動力とはどこからくるのだろう。すべてが合理的に、わかりやすく、簡単になっていく世界でぼくら人間は何を信じて、何を礎として働いて生きていくのか。その答えがこの本のなかにかすかにあるような気がしている。

『古くてあたらしい仕事』
著者:島田潤一郎
出版社:新潮社

記事は雑誌ソトコト2020年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

text by Daisuke Hayasaka

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早坂 大輔

はやさか・だいすけ
岩手県盛岡市の小さな本屋『BOOKNERD』の店主。書店経営のかたわら、出版も手掛ける。くどうれいん著『わたしを空腹にしないほうがいい』 (7刷目)引き続き好評発売中。