美少女戦士レイワヤン
2020.01.19 UP

連載 | ゲイの僕にも、星はキレイで肉はウマイ | 39 真面目に、おもしろいコントを。

SUSTAINABILITY

 あけましておめでとうございます。この原稿が読めるのは仕事はじめの頃かと思いますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。怒濤のように押し寄せるあれやこれやに、だるくて仕方がないでしょうか。ちなみに私はだるいです。多くの方と同じように、急にテンポを上げはじめた社会に自分も合わせていかないと、と思うところでまずだるくなり、その後、「いや待て、自由業だし別に寝てても誰にも怒られねえ」と孤独を感じてまただるくなります。孤独はつらいです。月並みですが、僕は僕のペースで2020年を始めていこうと思います。

 さて、そんな話はいいのですが、この度、私のように骨の抜けてしまった方にぴったりのゆるいコントを作りましたので、今日はそのお話をさせてください。NHK総合の新ジャーナル番組「不可避研究中」と、僕がやっているLGBTクリエイティブチーム「やる気あり美」で制作し、昨年末に放送したものです。インターネットで「美少女戦士レイワヤン」と検索したら動画が出てくるはずです。

 僕は主に脚本を担当したのですが、正直に告白すると、デスクに腰を下ろしてほんの15分ほどで書いてしまいました。基本的にだらしない僕は「よっしゃー! ラッキー! 飲みにいけるー!」と出掛けてしまったのですが(その後大変になったのですが)、真面目な話、スラスラと書けたことは僕にとっていい前兆なのです。

 前にテレビでスピードワゴンの小沢一敬さんが、楽屋であーでもないこーでもないとネタを書いていた時、おぎやはぎの矢作兼さんに「今書いてるやつ、おもしろくないでしょ。おもしろそうに書いてないもん」と言われた、と語っていました。「おもしろいもの」というのは、誰もが直感的に分かるものであるように、書いている側も直感的に書き進められて、思わず笑ってしまうものなのだろうと思います。真面目に考えるのは、おもしろいことを考える時には向いていない。僕は彼らのように売れっ子ではありませんが、その話にいたく共感したのでした。

 だけど「やる気あり美」は、何かを作る時に「おもしろい」だけでは終われない立場でもあります。「LGBT」や「ジェンダー」といったセンシティブなテーマに片足を置いて活動する身なので、今回もゲラゲラ笑って15分で書いたものに、その後、時間をかけて新たな要素を足したり、引いたりしていきました。今作で伝えたいメッセージは何なのか、そもそも誰に見てほしいと思っているか、そんなことを侃侃諤諤、みんなと議論しながら作り込んでいきました。

 今回特にったのは、3人の登場人物にそれぞれ別の人格を託すということです。一人は空気を読み過ぎてしまう弱さを持ちながら、いつでも調和と共感を重んじられる強さを持っています。また一人は、時に自分勝手になってしまうところがありながら、誰に笑われても自分を愛すること、人をリスペクトするこができる強さを持っています。そしてもう一人は、自分の気持ちを大切にできない不器用さをもつものの、合理的にそしてフェアに判断していく強さを持っています。調和・共感・自愛・尊重・合理性・フェアネス、これらはすべて力であり、力であるからぶつかって、同時に持ち合わせることが難しいものですが、LGBTやその他数多あるマイノリティに対する差別を社会からていねいに取り除いていくためには、どれも必要になってくると僕は思っています(少々おおげさかな)。3人の会話の先に、誰のことも踏みにじらない社会のヒントが見つけられればと願って、今回はそれぞれに振り分け、おしゃべりをしてもらったのでした。

 なんだか結局、真面目に語ってしまって、笑える気配がなくなってきてしまいましたが、とにかく僕はみなさんに観ていただきたいんです。どうか何も考えず、まず楽しんでいただけたなら幸いです。ちまちまとTwitterでエゴサーチもしている小心者ですので、ぜひ「#レイワヤン」とつけて、感想もつぶやいていただけると喜びます。よろしくお願いいたします。

記事は雑誌ソトコト2020年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

文・太田尚樹
イラスト・井上 涼

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太田尚樹

おおた・なおき
1988年大阪生まれのゲイ。バレーボールが死ぬほど好き。編集者・ライター。神戸大学を卒業後、リクルートに入社。その後退社し『やる気あり美』を発足。「世の中とLGBTのグッとくる接点」となるようなアート、エンタメコンテンツの企画、制作を行っている。