まちじゅうステージ
2020.01.21 UP

豊橋のまちを気軽に楽しむ、「まちじゅうステージプロジェクト」。

LOCAL

愛知県豊橋市で2018年にスタートした「まちじゅうステージプロジェクト」は、豊橋駅前の「まちなか」と呼ばれるエリアを使っておもしろいことに挑戦したい! という人が、すぐにでも挑戦・実行できる心強い仕組みです。肩書や立場を超えて結成された事務局メンバーに話を聞きました!

まちづくりは、遠い世界のことだと思っていました。

人と人とがつながることでまちが身近なものになる。

西前 こうして顔を揃えると、まちのことについて若手が頑張ってる! みたいなイメージがあるかもしれないけど、実際、現場ではまだすごく手探りですね。僕はこれまでサラリーマンとしてまちに関わってはいたけど、急にまちづくりなんていうぼんやりとしたテーマのもとで事務局の仕事をすることになったので、現場で起こるさまざまな問題や課題に戸惑うことも多くて。

小川 僕も会社の仕事の一環ではあるんですけど、現場で起こることや対応がこれまでやってきたこととはまるで違いますからね。

西前 そうそう。正直、まだ楽しいとか楽しくないっていう段階まで行き着いてない。でも、これまでは会社のサービスや商品を提供することが仕事だったのに、それとは違う枠組みの中で動くことがすごく新鮮。

山田 私もこのまちで働いて11年になりますが、会社で仕事をして用がなければ帰るという毎日でした。地元の方に対しても、会社の名前で挨拶をしていたころと今とでは親近感が全然違います。

辛島 僕の場合、大学で都市計画や地域計画を学ぶ学生を指導しており、豊橋駅前の「まちなか」での活動が彼らの研究や教育の活動に直結します。『まちなか会議』のおかげで相談や提案の入り口が明確になり、とてもスムーズに進むようになりました。

小川 黒野さんは、僕たちよりもずっと早い時期からまちの取り組みに関わってますよね。

黒野 僕は2003年頃、独立を機に豊橋へのUターンを考えていたときにアートイベントがあり、そこから豊橋のまちづくりに関わるようになりました。2008年にまちづくりの組織を立ち上げてビジョンをつくったはいいけど、HPで情報発信するくらいしかできてなくて。もっと実働の伴う活動にしていこうということで、地元を代表する企業の『サーラ』などが本格的に乗り出してくれて、そこから独立する形で『まちなか会議』という組織ができ、小川さんたちのような若手が加わってくれました。

「愛着のある地域で、誰もが活躍できる   機会が増えるといいよね」(黒野さん)
「愛着のある地域で、誰もが活躍できる機会が増えるといいよね」(黒野さん)

小川 商店街のある「水上ビル」に面したエリアで進んでいる大規模な再開発も大きなきっかけになりましたね。数年後には公共の広場ができ、官民の機能組織が入るビルが建ちますが、まちのためには単に建物や広場ができるだけではだめだよね、という声も聞こえてきて。それなら地元の活動や組織が一緒になって、人や会社や行政を立体的に運用し、まち全体を活発に機能させていくことはできないか、という機運が高まり『まちなか会議』が結成されました。

西前 本来接点がなかったかもしれない僕たちが、お互いの肩書や立場を超えて話し合い、まちづくりに取り組むことになった。「まちじゅうステージプロジェクト」はそこから自然な流れで生まれた発想です。

小川 検討会で「場所をつくる」と「機能をつくる」を結びつけることが必要では、という意見が出て、それがアイデアの基礎になってますね。

「常に挑戦できる場があり、意見が   交わされる状態こそが活性化では」(小川さん)
「常に挑戦できる場があり、意見が交わされる状態こそが活性化では」(小川さん)

西前 2018年12月に、すでにこの地域で活動をしていた人や団体に集まっていただいて最初の説明会を開きました。「まちなか」にあるいくつかの公共空間をステージに見立て、そこをみなさんがやりたい企画のために使ってください、僕らは場所を斡旋するだけでなく企画のブラッシュアップも一緒にやります、と。

黒野 企画者を主体に事務局がサポートに加わり、やりとりをしながら練り上げていく。内容に合わせて平均10万円ほどの資金も援助します。原資は会議の参加企業が出してくれています。

西前 お金を出すだけなら企業はこれまでも協力してきましたが、人が意識を持って関わっていくことを大切にしないと意味がない。現場に直接人が関わらないと、まちのことが自分ごとになっていかないですからね。

「まちなかに、お互いの肩書や立場を   気にせず話せる場があるのが新鮮」(西前さん)
「まちなかに、お互いの肩書や立場を気にせず話せる場があるのが新鮮」(西前さん)

目に見える成功より、思いが行き交う状態こそが活性化。

小川 実際に企画を募集してみたら、多くの人が手を挙げてくれました。彼らの変化も興味深くて、企画の実現を目的にしていた人が徐々に地元への愛着を感じる場合もあれば、その逆もあったり。

山田 応募数は思っていた以上でしたね。基本的には届いたものは全部、実現を前提に進めます。その中で、地域への貢献が期待できるかというポイントは大切にしたいと思っています。

辛島 大学生で企画を実行した子がいます。駅前の何もない広場の空間に、こたつや椅子、テーブルなどを出して、行き交う人に自由に使ってもらうことで人の滞留を生み出すという狙いだったと思うのですが……。

黒野 実際には全然巻き込めなかったね。

全員 (爆笑)。

辛島 まだ慣れていないので巻き込み方がよくわからなかったんでしょうね。通る人も「いったい何やってんだ?」みたいな反応で。でも、うまくできなくても自由に挑戦できる場所と機会があることが重要で、周りがうまくバランスを取り、結果としてまちにも人にも良い効果が生まれたらいいと思うんです。

「継続が今後の課題。楽しく続けていける   仕組みも考えたいですね」(辛島さん)
「継続が今後の課題。楽しく続けていける仕組みも考えたいですね」(辛島さん)

小川 人数や売り上げなど、プロジェクト評価のスケールはいろいろあるけど、誰かの「こうしたらもっとよくなるんじゃないか」、「なにか手伝えないかな」という声が交わされる状態こそが、まちが活性化しているということではないかと。このプロジェクトによって、まちを常にそういう状態にできたらいいですね。

黒野 やりたいことがある人が、豊橋の「まちなか」でなら実現できる! と思えることが、本当の意味で活性化している状態なんだと思います。

小川 今後は、僕らの世代と直接関わりあう機会の少ない70代くらいの人たちが積極的に参加してくださるといいなと思っています。あとはサラリーマン。会社と家との往復になりがちな人たちが主体となって企画し、「まちなか」を表現の場所として活用してくれたらいいですね。

西前 僕は、大学生よりさらに下の世代の中学・高校生がもっとまちに関心を持ってほしいです。というのも、先日ある中学校で話す機会があって、「まちなか」に対するイメージを聞くと、「マックがある」とか「スタバがある」とかそんな答えしか出なかった。じゃあ、何があれば行きたくなる?って聞くと「イオン!」と(笑)。「まちなか」に行く理由がそれではあまりにも寂しい。まちのこれからを担う世代だからこそ、こういう機会をのびのびと使ってまちへの思いを深めてほしいです。

辛島 まちで事業を起こしたいと思っている人のトライアルの場として活用してもらうのもいいですね。やがては豊橋を中心に、東三河のキーマンのような人たちが集まって、地域が一体となって盛り上がる拠点のようになればと思っています。それにはまず豊橋の人たちが場所を使いこなし、楽しんでいくことが大切。そんな人たちの姿や言葉がインフルエンサーになって自然にみんなを呼び込んでいくのが理想です。

山田 企画も大募集中ですし、運営や実行のお手伝いなど関わり方の幅は広いので、ぜひ多くの方に「まちじゅうステージプロジェクト」に、楽しんで参加していただきたいです!

「まちなか会議に参加して、まちに知り合いが   すごく増えました!」(山田さん)
「まちなか会議に参加して、まちに知り合いがすごく増えました!」(山田さん)

「まちじゅうステージプロジェクト」の実例。

出張! まちなかお昼ごはん

出張! まちなかお昼ごはん

 平日のランチタイムにキッチンカーが出現。煮込み料理、お弁当、デリカなど、駅前で働くビジネスマンたちのために健康的でおいしいメニューを提供。豊橋市内の地域密着型スーパーと、さまざまなイベントに出店して料理を提供するキッチンカーによるコラボ企画。

おしかけ! ラジオ体操

おしかけ! ラジオ体操

 月に一度、水上ビルのお店におしかけてみんなでラジオ体操をする企画。まちなかに継続的にゆるいつながりをつくることで、暮らす人、お店を営む人、工事現場の人、役所の人など、まちの人とまちの姿をちょっとずつ深掘りし、日常的なつながりを生み出すきっかけに。

CHILL OUT大作戦

CHILL OUT大作戦

 “CHILL OUT”とは、ゆったり過ごすという意味。イベントで多くの人が集まるのもいいけれど、日常的に人がいて、つながり合える場所があれば、まちはもっと魅力的になるはずとの思いで企画された。豊橋技科大の学生らの製作によるストリート・ファニチャーを配置。

monohito vol.1

monohito vol.1

 スプーンづくりワークショップを通じて参加者どうしのコミュケーションが深まり、さらには手づくりのマイスプーンを地元のお店で実際に使ってみることで、お店や工場のある郊外とつながることを目指している。「ものづくり」からさまざまなつながりを実現する企画。

愛知県 豊橋まちなか会議

事務局の小川直哉さんに聞きました!

事務局の小川直哉さんに聞きました!

Q.プロジェクトにはどんな参加方法がありますか?

 すでに企画があれば、応募してもらうことで事務局メンバーが一緒になって実現に向けて練り上げます。運営や実行を担うスタッフやイベント当日のボランティアスタッフも募集しています。

❶活動団体名
 豊橋まちなか会議
❷プロジェクト・スタート年
 2018年
❸ウェブサイトなど
 http://ekidesign.info/tmc
❹スタッフ・メンバーの中心年齢層は?
 30歳代〜40歳代
❺スタッフ・メンバーの募集
 有

記事は雑誌ソトコト2020年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

photographs by Masaya Tanaka
text by Ayuko Tani

キーワード

黒野 有一郎

くろの・ゆういちろう
豊橋で生まれ育ち、東京の建築事務所で活動したあと、2003年にUターンし独立。都市型アートイベント「sebone」実行委員、『豊橋駅前大通まちなみデザイン会議』常務理事、大豊商店街理事長などを歴任。『豊橋まちなか会議』副会長。

小川 直哉

豊橋出身。東京や海外で暮らしたのち、2016年にUターン。豊橋駅前の大通に面した一角で進んでいる『市街地再開発事業』の組合への出向で『豊橋まちなか会議』の事務局を務める。「まちじゅうステージプロジェクト」を立ち上げ、運営の全般を担う。

西前 正興

にしまえ・まさき
所属する『サーラグループ』系列の『中部ガス不動産』が『豊橋まちなか会議』の理事会社になっていることから事務局に着任。駅前再開発により建設されるビルにオープン予定の、自社プロデュースによる「食」をテーマにしたフロアを担当。

山田 隆介

やまだ・りゅうすけ
再開発事業の2期工事予定のビルを持つ『総合開発機構』の社員。普段は郊外型の住宅用の土地の販売、ビルの管理などを行う。小川さん、西前さんと同じく所属会社が再開発の組合員であることから事務局に着任。

辛島 一樹

からしま・かずき
『豊橋技術科学大学』建築・都市システム学系助教。専門は都市計画、地域計画、まちづくり。「まちなか」への関わりは自身の師匠の時代から続いており、それを引き継ぐ形で「まちじゅうステージプロジェクト」に参画。