大都市・名古屋で 村づくり? 『On-Co』がつくる、 懐かしくて新しいコミュニティ。
2019.04.05 UP

大都市・名古屋で 村づくり? 『On-Co』がつくる、 懐かしくて新しいコミュニティ。

LOCAL

地域のつながりや支え合いは、都会にも求められているはずだ。
大都市・名古屋で多世代が関わるコミュニティをつくる『On-Co』に、
場づくりの秘訣や、これからの地域のあり方について伺った。

古民家を改装して感じた新しい文化。

東海道線・名鉄名古屋本線の線路沿いに位置する「LongRoof」。
東海道線・名鉄名古屋本線の線路沿いに位置する「LongRoof」。奥には名古屋中心部の高層ビルが立ち並ぶ。

愛知県名古屋市を舞台に、1キロ圏内で7軒の物件を運営するクリエイティブ集団『On-Co』。発起人の吉原旭人さんは、学生だった2011年、バンドの練習場所を探す中で、名古屋駅から徒歩15分に位置する築70年の空き家を発見。大家さんと相談してセルフリノベーションを行い、活用を始めた。

これが、後に「LongRoof」と名づけられるシェアハウスのはじまりで、『On-Co』の活動のきっかけだ。バンド活動を終了した2012年にはFacebookで住民を募り、友人で、現在は『On-Co』の代表を務める水谷岳史さんと共同生活を始めた。祭りごとが好きな二人の元には、日々多くの友人が遊びに来て、リノベーションを手伝ってくれたという。「改装した空き家に人が集まる様子を見ていて、みんなでつくってみんなで暮らす、新しい文化を感じていました」と振り返る水谷さん。楽しい雰囲気に惹かれ、会社員や学生、アーティスト、旅人、留学生など、多様な人たちが集まり、やがて住民も増えていった。「『LongRoof』は、実家のような心地よさと、住民同士が与え合う刺激が混ざった、不思議な場所です。それぞれの道に進んだ後も、相談し合う関係は続いています」と吉原さんは笑顔で語る。

これからの家族や地域の形を描き続けていく。

『On-Co』が手がけるシェアハウス・シェアスペース。
 

年齢、性別、職業など、ライフスタイルが違う人同士が共に暮らすことは困難も伴うはずだが、驚くべきことに、『On-Co』が運営するシェアハウスには個室やルールがない。「今のベストをみんなで話し合うことが唯一のルールです」と吉原さん。だからこそ、住民同士のコミュニケーションが活発に行われ、食事や外出をともにしたり、お互いを思いやる空気が自然に生まれている。その関係性を水谷さんは「友達以上、家族未満。いや、家族以上かも」と表現。『On-Co』の共同代表を務める藤田恭平さんも、学生時代に「LongRoof」と出合った際、「いつかこれが家族の形になるはずだ」と確信し、『On-Co』2軒目のシェアハウス「Fyume」を2015年に立ち上げた。

その後も多くの来訪者を迎え入れている『On-Co』。2017年には吉原さんが北海道札幌市での就職のために名古屋を離れたが、「文化はいろいろなものが積み重なってつくられるもの。今までのやり方だけにこだわらず挑戦を続けてほしい」と、水谷さん・藤田さんに思いを託した。そして現在、名古屋でシェアハウス3軒、シェアスペース3軒、飲食店1軒を運営するまでに活動は拡大。加えて、愛知県・東栄町での拠点づくりにも挑戦している。

どうして名古屋の中にここまで多くの場所をつくるのだろう。その理由を水谷さんは「コミュニティは狭く深くあるべき」だと説明する。

「フリーランスで働く人やクリエイターが同じ地域に安い家賃で住めて、ご飯も食べられれば、クリエイティブなことがもっとできるはず。僕らは名古屋を、何回でも挑戦できるまち、そして失敗できるまちにしたいんです」

『On-Co』の活動を見守る、名古屋・西区栄生の前自治会長・古橋義兼さん
『On-Co』の活動を見守る、名古屋・西区栄生の前自治会長・古橋義兼さん(中央)と近隣にお住まいの寺西さんご夫妻(左)。

また、名古屋の中でも『On-Co』の物件が集まる栄生駅周辺は人口減少が著しいエリアだ。空き家の数も多く、彼らの活動は地域課題の解決にもつながっている。この地区の前自治会長・古橋義兼さんは、騒音の苦情を伝えたところから『On-Co』との関係が始まり、今では応援者の一人だ。「道路の清掃など、地域の活動に積極的に協力してくれています。今では地域の人気者です」と、彼らに好感を寄せている。
 

photographs by Kei Fujiwara
text by Gaiichiro Yoneyama(SOTOKOTO)

本記事は雑誌ソトコト2019年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。