大都市・名古屋で 村づくり? 『On-Co』がつくる、 懐かしくて新しいコミュニティ。
2019.04.05 UP

大都市・名古屋で 村づくり? 『On-Co』がつくる、 懐かしくて新しいコミュニティ。

LOCAL

新しくも、どこか懐かしい“村”のようなコミュニティ。

近隣住民でにぎわう『ぶち』。
近隣住民でにぎわう『ぶち』。コミュニケーションを欠かさない店主の黒野さんは人から相談を受けることも多く、企画につながることも。

『On-Co』が地域の人とより関わるようになった大きなきっかけは、2017年に古民家飲食店『ぶち』をオープンしたことだ。活用の依頼を受けた空き家を、当初は各シェアハウスの住民が集まれる場所にする予定だったが、「住民の挑戦を応援できるよう、自分たちも挑戦しよう」と飲食店を選択。シェアハウスの住民は賄いを無料で食べられるようにした。

店主を務めるのは、以前から「LongRoof」を訪れていた黒野英二さん。移動販売飲食店の経験を生かし、新しい発想の中に懐かしい味を残す「ぶち飯」の開発や看板デザインを担当。また、お店の道路側にキッチンをつくり、テイクアウトも行う。「近所の人にあいさつができるお店にしたくて」と黒野さん。その言葉どおり、地域の人とのコミュニケーションが増え、子どもからご高齢の方まで、これまで関わりが少なかった人たちも多く集まるようになっていった。ここも「誰もが挑戦できる場所」を目指し、住民のアイデアから生まれたイベント「音BUCHI」や、地元の高校生が持ってきた企画書から始まった『高校生食堂 いりゃあせ』など、多くのコトが起きている。

懐かしい味がする「ぶち飯」
上段左/北海道産牛肉コロッケ 三重県桑名市の米油で揚げる看板メニュー。胃もたれしないと評判。上段右/陶板ナポリうどん 7種類の雑穀が入った「七穀うどん」でつくる、陶板焼きナポリタン。 下段左/清流クレソンのぶっかけ冷やしうどん 「うどんが食べたい」という声から生まれた一品。栄養満点の野菜「クレソン」を使用。 下段右/濃厚ソフトクリーム 募金や企業の協力によりマシーンの設置が実現。募金分でふるまいソフトクリームを実施。

「僕らがつくる場所は不完全だからこそ、挑戦の垣根が低くなり、人が主体的に関われる余白が生まれています」と藤田さん。庭師の仕事もしている水谷さんは「僕らは空間を“庭”として捉えて、植えた木が自然に育つように、場の成長も関わる人に任せているんです」と、場づくりの秘訣を語る。

多世代の人が関わっている『On-Co』。そのコミュニティの形には新しさを感じるが、以前『ぶち』を訪れた70代の男性はその様子を見て、「昔に戻っている」と言っていたそうだ。水谷さんも「僕らがやっていることは全然新しいことではありません。昔からある暮らしや祭りを、少し形を変えてやっているだけ。昔の生き方にヒントを得ています」と話す。『On-Co』という団体名が「温故知新」から名づけられたのは、そのためだ。彼らが古民家をリノベーションするとき、新しい材を使わず、元からあるものを使うのも『On-Co』流。だからこそ、新しさの中に、どこか懐かしさを感じるコミュニティが出来上がっているのだろう

『On-Co』は名古屋の中に、つながりと支え合いが息づく“村”をつくろうとしているのだ。「僕らのようなコミュニティが名古屋という都会で生まれているのがおもしろいし、求められているのだと思います。地域で育つ子どもがいて、おじいちゃんおばあちゃんの居場所があって、挑戦もできる。そんな地域づくりが広がっていったら」と黒野さん。彼らの挑戦は続く。

photographs by Kei Fujiwara
text by Gaiichiro Yoneyama(SOTOKOTO)

本記事は雑誌ソトコト2019年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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