三芳町 佐久間智之 | 7 | NEXTスーパー公務員
2019.04.10 UP

NEXTスーパー公務員 三芳町 佐久間智之 | 7 | NEXTスーパー公務員

WORK

スタイリッシュで楽しい広報誌の誌面づくりに全国の注目が集まっている三芳町。その変化を熱意を持って生み出した、一人の公務員を紹介します!

「住民主役」を掲げた
広報誌づくりで、
町内外のファンづくりを。

 今回取り上げさせていただくのは、東京に最も近い町、埼玉県・三芳町の職員、佐久間智之さんです。地方自治体等の広報作品を表彰する「全国広報コンクール」で内閣総理大臣賞を受賞した、日本一の町の広報誌の制作者として、そのノウハウを全国の自治体職員に広げる「全国広報会議」や「とかいな会」を主宰。「広報はラブレター」と語る佐久間さんは今年、ラブレターの完成度を高めようと民間企業への出向も果たしました。佐久間さんの広報にかける想いや取り組みに触れることで、自治体と住民をつなぐ自治体広報の可能性や、公務員の仕事の魅力についてお伝えしたいと思います。

「広報はラブレター」。
試行錯誤の末、
住民主役の内容で
親しみのある広報誌に。

 きっかけは、ごみ箱に捨てられていた三芳町の広報誌『広報みよし』でした。せっかく税金を使って住民の人たちに向けて発信しているのに、読まれずにマンションの郵便箱横のごみ箱に打ち捨てられている広報誌を見て、「税金の無駄だな」「何とかしなければ」という使命感を抱いた佐久間さん。ちょうどあった庁内公募に立候補し、2011年4月から町の広報担当となりました。「広報はラブレター。想いを伝えて住民に恋をしてもらうもの。いくらよい事業をやっていても、住民や国民にその情報が届かなければ意味がないんです」。ところが経験と言っても、プロを目指していたバンド時代にチラシをつくっていた程度。何をすれば、住民の方々が手に取ってくれ、思いを伝えられるようになるのか。試行錯誤の連続でした。
 最初にやったのは、それまで外部に委託していたデザインやレイアウトを、自力でやってみることでした。デザイン、写真、レイアウト、文章表現など、印刷以外のすべてを独学で勉強したと言います。そのうえで、若い人にも読んでもらえるよう、タイトルをひらがなの「みよし」からローマ字の「MIYOSHI」に変えたり、お知らせ欄をより読みやすいよう、縦書きから横書きに変えてみたり。考えられるすべてのことをやってはいましたが、それでも何か足りない部分を感じていました。
 その時に出合ったのが、どこまでも住民目線で作られている福岡県・福智町の広報誌。町が発信したいことではなく、住民が「これなら読みたい」と思うような「住民が主役」の内容にしなければいけないことに気づいた瞬間でした。それまで住民が特定できないよう配慮して使っていた小さな写真をできるだけ大きくし、町の人たちを積極的に掲載するように。佐久間さんの撮る写真は、いつも住民がまっすぐ正面を向いています。それは、一人ひとりを佐久間さん自身が撮っていることの証しであり、常に住民と読んでいる人の目が合うようにすることで、まるで会話をしているような親しみのある誌面になっています。

広報誌の役割は、
まちづくりにもつながる。
民間に出向し、
ノウハウを全国へ広げる。

 佐久間さんは、広報誌の役割とは、町の魅力発信だけではなく、まちづくりにつながるものだと話します。町を楽しく(FUN)する人を増やすことを目指しながら、その想いが外にも伝わり、循環して、三芳町のことを好きな人(FAN)を増やすことで、シビックプライド(地域への住民の誇り)の醸成にもつながると考えています。「三芳町産とほかの産地の同じ値段のさつまいもがスーパーにあった時、選ばれる町になりたい。そのためには町のFAN=FUNが必要なんです。町民には誇りを、町外の人には憧れを持ってほしい」。そういう意味では、広報誌は町の魅力と話題を伝えることができ、予算をかけずとも、愛情と熱意をかければ、まちが好きになるきっかけを与えることができる。実際に三芳町では、町内外のファンは増え、広報予算は半分になり、ゴミ箱行きだった広報誌が全国から取り寄せられるまでに変わりました。今では、町の内外の思いをつなぐ存在として大きく成長しています。
 佐久間さんが今、新たな挑戦として取り組んでいるのは、民間企業への出向です。広報担当になった1年目に、「文字が小さい」「読みにくい」という声が多く、翌年からUD(ユニバーサルデザイン)書体を導入したところ、文字の大きさを変えていないのに苦情がゼロに。「文字で社会に貢献する」を社是に、そのUD書体を含めた、フォントなどをつくるメーカー『モリサワ』へ出向しています。三芳町と協定を結んだことをきっかけに社是を知った佐久間さんは、日本を文字で優しい社会にしたいと思ったこと、民間の仕事方法などを町に還元したいということ、全国を回って広報のノウハウを広げることが三芳町のPRにつながるのではないかと思ったことから、なんと林伊佐雄町長に直談判。見事熱意が通じて、町では前例のない、研修としての民間への出向が決まりました。民間企業のノウハウを得ることで、広報誌の魅力をさらに上げるだけでなく、日本全体の広報誌の魅力を上げていきたい。今ではそう考えているそうです。
 自治体が持つ広報の力や信頼の力。それを知り尽くした佐久間さんが、今度は民間の側から行政を見ることで、町にとってより大きな価値を生み出すのではないでしょうか。それが官民連携を進める価値なんだと思います。そんな佐久間さんに、そもそも公務員を志望した理由を聞くと、「三芳町を受けた理由は倍率が低そうだったから」とのこと。ごみ箱に落ちていた広報誌から変わった佐久間さんの公務員人生。人生はどんなきっかけで動いていくか、そして変わっていくかわからないとすると、公務員の持つ価値はまだまだ無限だなと感じる取材でした。

\首長は見た/
失敗を恐れずに
挑戦を続けることが、
魅力ある公務員になる第一歩。

三芳町 林 伊佐雄町長

8年前、広報と政策に重点を置き、内部職員の公募を行いました。そこで手を挙げたのが佐久間くん。「おもしろい」「変わっている」それから「やる気がある」という印象を受け、広報にぴったりな人材だったので、広報担当になってもらいました。彼は今、民間出向をしています。稼ぐ力や民間の経営感覚を学ぶ。それをまちづくりに還元することが職員にとっても、三芳町にとっても非常に有意義だと思ったからです。失敗を恐れずに挑戦を続けることが、魅力ある公務員になる第一歩。多様化する行政、住民サービスに対応するには、現状を打破していく行動力や発想力が必要です。佐久間くんには、より成長してまちに還元してもらい、彼のような職員を増やして、まちづくりにつなげていければと思います。

text by Masaaki Waki
illustration by Masaki Takahashi

本記事は雑誌ソトコト2019年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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脇 雅昭

わき・まさあき
1982年生まれ、宮崎県出身。2008年に総務省に入省。神奈川県庁に出向し、現在は観光部長と政策推進担当部長を兼任。 47都道府県の地方自治体職員と国家公務員が集まる「よんなな会」を主宰。「47都道府県の大人たちを仲間に」をコンゼプトに、民間企業の経営層はじめ国、自治体の公務員など「誰かのために何かできる」セクターを超えた仲間づくりを進めている。http://47kai.com