生駒市 竹田有希 | 10 | NEXTスーパー公務員
2019.04.23 UP

生駒市 竹田有希 | 10 | NEXTスーパー公務員

WORK

奈良県生駒市職員と地元・大阪市の住民団体「あべ若」代表という
二足のわらじで活動する竹田さん。公務員の副業が認められていく潮流の中で、
主体的に地域と関わっていく取り組みを紹介します!

地方公務員でありつつ、
地域で一般社団法人を設立。
副業と職務の相乗効果を生む、
新しい公務員のあり方。

 公務員は公のために仕事をするもの。しかし、目の前の仕事をしっかりやろうとしてさえいれば、今の時代に適応した仕事ができていると言えるでしょうか。今回紹介させていただくのは、奈良県生駒市の職員・竹田有希さん。竹田さんが働く生駒市では、一昨年から市の職員の副業が解禁されました。さらに、職員が市外でボランティアとして続けていた市民活動を、わずかでも報酬をもらいながら関わることができるように、昨年からは市外での副業も認められるように。それを受けて竹田さんは今年、地方公務員と経営者がタッグを組んで地域活性化に取り組む一般社団法人を大阪市で設立しました。「まず自分自身が地域住民として動かなければ」と竹田さんは言います。竹田さんの取り組みを通じて、公務員が地域で活動することの意義や、公務員の副業が進むことによってどういった価値が生まれるかについてお伝えできればと思います。

行政職員の前に、
まずは住民として。
地元で主体的に
地域づくりを推進!

 竹田さんは、あべのハルカスで有名な大阪市阿倍野区で生まれ育ちました。公務員を目指したのは大学院生の頃。社会学研究科で住民主体の地域づくりを学びながら気づいたのが、幸せの形は人それぞれ、地域それぞれだということ。だからこそ、行政が幸せの形を定義するのではなく、地域の人たちが自分たちで考えられる地域づくりが必要なんじゃないか。そうした仕組みをつくりたいと、当時、住民と一緒にまちをつくることに力を入れていた生駒市に就職することに決めました。
 そこで竹田さんが気づいたのは、地域づくりといいながら、自分自身が住んでいる地域とまったく関わりがないこと。地元・阿倍野区のさまざまな団体と積極的に関わっていく中で、若者がどこにも参加していない実態を知りました。そこで、阿倍野区役所が実施する、若者を巻き込むまちづくり事業に参加。事業終了後、『あべ若』として独立、自ら代表を務めることに。こうして、「『あべ若』代表」であり「生駒市職員」でもある竹田さんが誕生しました。
 『あべ若』では、若者が楽しみながら地域課題の解決をできる仕掛けをみんなで考えています。大切にしているのは、まずは若者が楽しめるイベントをつくること。そしてそこに、地域課題解決の視点を加えることです。例えば最近では、池のレンコンを制限時間内に採れた総重量を競う「レンコン掘り調査選手権」を開催。泥んこになりながら、多くの若者が参加してくれたということです。実は、イベントの裏テーマとしてあったのは、池掃除。「ごみが見つかった場合はごみも引き揚げること」というルールをつくり、池の掃除にもつながりました。メンバーのアイデアを元に、自らが行政や地域との調整役になることで、ワクワクしながら地域のためになる経験ができる仕組みになっています。

地域と行政の双方での
経験が役に立つ。
二足のわらじが
生み出していく価値。

 「『あべ若』代表としての竹田さん」と「生駒市職員としての竹田さん」。地域での活動の経験が公務員としての仕事に、公務員としての仕事が地域での活動に、相互にいい影響を与えています。今年1月、竹田さんは、生駒市民向けに「ファンドレイジング講座」を企画・開催しました。そこには、行政の事業予算がなくなって『あべ若』の活動をどのように維持していくか悩んだ際の経験が生かされました。地域での活動を自分自身が実際にやっているからこそ、そうした活動を行ううえでいかにお金が重要かがわかっているので企画した、と竹田さんは言います。また、「よるゼミ」という勤務時間外に行う職員の自主勉強会も仲間と立ち上げました。竹田さんは職場だとまだ5年目の職員ですが、地域での活動では代表の役割を務めているからこそ、その経験が生かせているのではないでしょうか。
 一方で、行政職員として身につけたスキルや経験は、地域での活動にも還元できるし、求められていると言います。例えば、自分のベースが公務員だからこそ、住民がどう動けば行政に協力を得やすいかがわかるし、動きやすい。「今でも壁にぶち当たってばかりですが、2つの立場で地域と関わることで、相乗効果が生まれていて、楽しくて仕方がない」と竹田さんは話します。
 生駒市では、竹田さんのような職員の地域での活動への参加を促し、副業をしやすくするために、報酬をもらってよい基準を明確化、市外での副業も認めています。これを受けて竹田さんは、これまで任意団体でやってきた「あべ若」に加えて、前述のように一般社団法人を設立し、副業としてやっていこうと決意。一般社団法人『ニューローカル製作舎』を大阪市・阿倍野区で経営者とともに設立しました。異なる職種の人と組むことで、経営者の視点での事業性やアイデアと、公務員としての自分が提供できる公共性というそれぞれの強みを、より多くの地域に生かしていこうとしています。サスティナブルに多くの人が関わってもらうためにも、お金が生まれる仕組みをしっかりとつくることも重要だと、竹田さんは考えています。
 地域活動を経験していく中で、改めて公務員という仕事が持つ「信頼」という価値が見えてくる。「公務員はもっと地域を盛り上げる力を持っているはず。そのためにも、副業という形での挑戦をしていきたい。いいことだからこそ、継続する仕組みをつくる必要があります」と竹田さんは話します。公務員として、そして何よりも地域を愛する住民として。
 みなさんのまちにも、地域を愛する公務員がきっといます。ぜひ一緒に動き出してみてください!

\首長は見た/
職員の副業や地域活動を支援。
新しい公務員像の体現を!

生駒市 小紫雅史市長

生駒市では、職員が職務外に報酬を得て地域活動に従事する際の基準を定め、職員による副業や地域に飛び出す活動を支援しています。これは、職務外でも地域を知り、楽しむことで、地域からの信頼を得ることができるとともに、積極的にまちづくりに取り組む経験が自らの成長にもつながるためです。竹田さんは、職場内では勤務時間外の自主勉強グループ「よるゼミ」を中心となって運営し、外では一般社団法人を立ち上げて活動するなど、これからの新しい公務員像を体現し、全国のモデルとなる頼もしい存在です。これからも活躍を心から応援しています。

text by Masaaki Waki
illustration by Masaki Takahashi

本記事は雑誌ソトコト2019年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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脇 雅昭

わき・まさあき
1982年生まれ、宮崎県出身。2008年に総務省に入省。神奈川県庁に出向し、現在は観光部長と政策推進担当部長を兼任。 47都道府県の地方自治体職員と国家公務員が集まる「よんなな会」を主宰。「47都道府県の大人たちを仲間に」をコンゼプトに、民間企業の経営層はじめ国、自治体の公務員など「誰かのために何かできる」セクターを超えた仲間づくりを進めている。http://47kai.com