さまざまな活動を通して、動物に温かい眼差しと愛情を注ぎ続けている友森玲子さん。セレクトしてくれた本には、飼い主とペットが本当の意味での「よい状態の関係」を築くためのヒントが詰まっている。改めてペットとの幸せについて考えてみよう。
『ランコントレ・ミグノン』代表理事|友森玲子さんが選んだ、ウェルビーイングを感じる5冊
私は子どもの頃から動物と関わる仕事に就くと決めていました。小学生のときに飼育委員になり、増えすぎて多頭崩壊していたうさぎたちのケアや里親探しをした経験が原点にあると感じています。その思いのまま歩み続けて、現在は動物保護団体『ランコントレ・ミグノン』や、病院とサロン、保護施設がひとつになった『ミグノンプラン』で、動物と飼い主さんのための活動をしています。
今回「ペットとウェルビーイング」について考えたとき、思い浮かんだのは「お互いに幸せじゃないと、いい状態は続かない」ということです。動物の犠牲や人間の一方的な搾取の上に成り立つものではなく、飼うからには人間が正しい知識を得て、いい状態でお互いが暮らしていくために学び続けることが必要だと感じています。そこでまずおすすめしたいのが『犬と猫の問題行動の予防と対応─動物病院ができる上手な飼い主指導』です。動物病院のスタッフ向けに書かれた本ですが、たとえば子犬で怖がりな子はどう対処したらいいのかなど、動物側から見て「そうなんだよ、そうやって教えてほしかったんだよ!」ということがテーマごとにわかりやすく紹介されています。子犬・子猫だけでなく成犬・成猫、老犬・老猫の項目もあるので、どのような年齢の子を飼っている方でも読んで損はないと思います。
町田康さんの著書『猫にかまけて』は、すごく好きでよく読んでいる一冊。「動物と暮らすと、癒されるし、素敵な生活になる」というような内容のエッセイは多くありますが、この本ではおもしろおかしい場面もありながら、看取り方や“そのとき”がきた際の人間の精神状態がとても正直に書かれています。どの動物も最後は死にます。それは大変だし苦しい。ですが、そうした思いをしてもあまりある魅力が動物にあることが読んでいただけたら伝わると思います。
ある男性に飼われた黒いラブラドールが主人公の『どうして?』は、犬の視点で語られる大人向けの絵本です。悲しい話ですが、それだけではなく、人間が動物を家族として愛するのと同じように動物側も思ってくれていることや、動物にとっては一生涯にわたり飼い主がすべてであることを改めて教えてくれます。これから動物を飼おうとしている方に特におすすめしたいです。言葉が通じない生き物とお互いに歩み寄りながら暮らす。そこには大きな喜びがあります。そういう体験をできる人が増えたらいいですね。
▶ 『ランコントレ・ミグノン』代表理事|友森玲子さんの選書 1〜2
▶ 『ランコントレ・ミグノン』代表理事|友森玲子さんの選書 3〜5