山形県・小国町で地域と自分の関わりしろを見つける連続講座「白い森サスティナブルデザインスクール」が2023年度で3回目を迎えました。受講生たちは、フィールドワークを通じて、町への思いを強めました。
TOP画像:小国町を代表する名所の一つ、飯豊連峰の壮大な風景を一望できる樽口峠展望台にて。自然の豊かさに一同感動した。
一歩進んだ関係性を紡いでいくために。
ブナを中心とした広葉樹の森が町の約90パーセントを占める山形県・小国町。この町と都市部の在住者をつなぐ「白い森サスティナブルデザインスクール」が開催された。“協働人口”を増やしたいという町の思いから始まり、これまでの2年間で多様なつながりが生まれている。「有名な観光地でもなく目立った特産品もない小国町は、全国的には知られていませんが、人口が減っても町を維持するには外から応援してくれる人が必要。交流人口や関係人口よりも一歩進んだ関係性をつくりたいと考えました」と同町役場でこのスクールの立ち上げに関わった遠藤愛さんは話す。四季と自然とともにある町だからこそ、現地のフィールドワークを夏と秋の2回実施することにこだわり、足繁くとまではいかなくても何度も町に足を運んでもらい、何らかの形で関わり続けていく、そんな関係性を紡ぐためのプログラムを実施した。
町で活躍する人から、暮らしや生き方を学ぶ。
1回目のフィールドワークは2023年7月に実施。9月末には2回目が実施されて受講生たちは小国町で3日間を過ごした。まず1日目はこの町をさらに深く知るためのプログラム。地域の自然の恵みが詰まった弁当でお腹も心も満たしてから、「磐梯朝日国立公園」内にある温身平へ。森での過ごし方を熟知する「森林セラピーアテンダント」の案内を受けながら受講生たちは森を歩き、リラックスして過ごした。その後、『マタギの郷交流館』に移動して、マタギを始めたきっかけや普段の活動の様子について本間義人さんに話を聞いた。そして、夕食後には弊誌編集長の指出一正と受講生らの一問一答タイム。車座になって地域との関わりの持ち方などについて考えを深めていった。
2日目は、今回のフィールドワークのメインとなる“弟子入り体験”の日。受講生は5か所に分かれて、町内で活躍する人に弟子入りした。そのメンバーはバラエティに富み、牛小屋だった場所を改装して週に一度開くおやつや『Naëbaco』、酒蔵の隣でコワーキングスペースやカフェを営む『カモスク』、ペレットストーブとペレットの販売を行う『ペレットマン』、季節に応じて必要な地域での仕事を紹介する『おぐにマルチワーク事業協同組合』、そして今回もスクールのメンターでこの町の自然を知り尽くす髙橋泰弘さんという顔ぶれだった。受講生たちは、“師匠”の仕事や暮らしに対する“哲学”を学んだり、“師匠”が直面している課題について対話を重ねたりするなど充実した時間を過ごした。
最終日は、この3日間の振り返りと、町と受講生の関わりしろを育んでいくためのプランづくり。今回の新たな発見や忘れられない人との出会いを通じて、等身大の自分に何ができるかをそれぞれが真剣に考えた。フィールドワークを終えプラン発表までの約2か月間、受講生たちは町のことを思い、自身に問いかける日々をそれぞれの日常の中に溶け込ませていった。
DAY1 小国を知る
DAY2 弟子になる
DAY3 プランをつくる
\ 最終発表 /
2023年11月23日、「小国町との関わり方プラン」発表会が開催された。その場での実演もあり、小国町の人の温かさをテーマに作詞・作曲をした歌、イワナ釣りを疑似体験できる自作装置の披露などユニークな内容ばかり。遠藤愛さんの「これが皆さんと小国とのつながりのはじまり。いつでも小国で待っています」という言葉で、会が締めくくられた。
photographs by Masaru Mizushima & SOTOKOTO text by Mari Kubota
記事は雑誌ソトコト2024年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。