食べる、飲む、癒される…?国連機関も注目する、食用サボテンに秘められた可能性とは

食べる、飲む、癒される…?国連機関も注目する、食用サボテンに秘められた可能性とは

みなさんは、“サボテン”にどんなイメージをもっていますか?「観賞用の植物」ということは共通認識の事実ですが、実は、食用としても活用の幅が広がっているんです。特徴は“ねばり”と“酸味”。栄養豊富で、健康・美容への効果も期待大です。さらには、世界の食料危機の救世主となるという見解も…?自社でサボテンを栽培・加工・販売して普及活動を行う、ジェイエヌエス株式会社の出口美紀さんに“食用サボテンの可能性”について話を聞きました。

健康野菜として、加工食品や飲食店のメニューとして

愛知県春日井市の勝川大弘法通り商店街にて、「春日井さぼてん ラボ&ショップ こだわり商店」を構えるジェイエヌエス。食べるサボテン「太陽の葉」の紹介記事でも取材にご協力いただきました。

春日井市は、サボテン生産が盛んなまち。特に、種から育てる実生栽培の生産量においては日本一の実績を誇ります。また、食用サボテンも名物。学校給食でサボテンが使われたり、サボテングルメを提供する飲食店もあったり…。

出口 美紀さん
●出口 美紀(でぐち みき)さん/夫の出口 元彦さんが立ち上げた食品加工会社「ジェイエヌエス株式会社」をともに運営。「春日井さぼてん ラボ&ショップ こだわり商店」店長。食べるサボテン「太陽の葉」生産者。

ジェイエヌエスでは、自社栽培の食べるサボテンや加工食品、飲食業者向けの中間加工原料を販売。春日井市のサボテン特産品開発にも携わっているといいます。そもそも、サボテンを事業の主軸にしたきっかけは何だったのでしょうか。

出口さん:「熱帯の植物は厳しい自然環境でも力強く生きる力をもっていて、人間のからだにも有益な作用をもたらしてくれます。以前から健康食品の製造に携わっていた関係もあり、こうした植物のひとつとしてウチワサボテンの機能性に着目し、健康食品にならないかと考えたんです。そのためにも、まずはサボテンの魅力を周知しようと、2010年にラボとショップを開きました」

現在まで、春日井特産品認定業者協議会(春日井商工会議所内)とともに、さまざまなサボテン商品の企画・開発を行っている出口さん。日々、サボテンの有効な使い方を検証し続けています。

サボテンラーメン、サボテンナンカレー、サボテンどら焼き、サボテンメロンパンなど…市内の飲食店・食品小売店で食べられるサボテン商品はどんどん増えているそう。その多くに、ジェイエヌエスが加工卸をしているサボテンが使われています。

中間加工原料
サボテンの中間加工原料を各種販売(業務用)。

出口さん:「元々、食品加工の技術があるので、中間加工原料も作りやすかったんです。調理用に扱いやすい冷凍ブロック、冷凍ピューレ、エキス、粉末を飲食業者向けに販売しています。春日井市内はもちろん、県外に卸すこともありますよ。関東のボタニカルスイーツの店では、ジェラートにサボテンのピューレを使ってもらっています」

サボテン

はじめのうちはサボテンを仕入れて加工していたものの、2013年からは自社で食用ウチワサボテンを栽培しているそう。食品加工会社であり、サボテン生産者。そこまでサボテンへの関わりを広げた理由とは?

出口さん:「自社商品も含めて数多くの商品を企画・販売するなかで、いかにおいしく味わうか、いかに安心・安全で健康に良いものを届けられるか、ということをずっと考えてきました。やはり自ら栽培してみないと、こうした課題を追求できないだろうと。露地栽培にこだわって、できるだけ自然に近い環境で育てています。私たちが栽培したサボテンを飲食業者さんが使う。できあがった商品をまた私たちが仕入れて、ショップやイベントで販売する。そんな良いサイクルが生まれるようになり、サボテンを通じて仲間が増えました」

太陽の葉
ジェイエヌエスが自社で育てたウチワサボテン「太陽の葉」。フレッシュリーフ(生の葉)に限っては「春日井さぼてん ラボ&ショップ こだわり商店」の店頭やオンラインショップで一般販売されており、誰でも購入できます。

土産品の枠を超えて、幅広い層へアプローチ

出口さんは近年、サボテンの販路拡大に手ごたえを感じているそうです。たとえば、自社商品の「はじけるサボテン炭酸水 SABOTEN SUI」。こちらは、商工会議所のメンバーと取り組む「春日井サボテンプロジェクト」の一環として企画・開発された商品です。

「はじけるサボテン炭酸水 SABOTEN SUI」
モンドセレクション連続最高金賞を受賞した長良川上流の天然水を使い、まろやかな口あたりに。

ジェイエヌエスが栽培したウチワサボテンの成分をはっ酵抽出したエキスを使用。岐阜県関市の奥長良川名水株式会社にて、長良川上流の天然水と配合しています。爽やかな香りとすっきりした味わいが特徴です。

出口さん:「サボテンは緑黄色野菜と果物の栄養素を併せ持つ、めずらしい食材。カルシウムやマグネシウム、βカロテンを多く含み、食物繊維も豊富です。その有効成分を逃すことなくエキスにしています。最近では新聞に掲載されて、公式オンラインストアの売り上げや電話での問い合わせが増えました」

電話問い合わせ客のほとんどは高齢者だといいます。炭酸水というとやや若い世代の飲み物という印象もありますが、健康意識の高まりからか購買層が広がっているようです。

出口さん:「心とからだのストレッチをコンセプトにした特集で、女性向け雑誌に紹介されたことも。薄利多売ではなく、付加価値のある商品として成り立ってきた実感がありますね。“春日井市の特産品”としてスタートしたサボテン商品ですが、単なるお土産という枠から脱却したいです」

「なめるサボテン サボテンのど飴」

ウチワサボテンのはっ酵粉末入り「なめるサボテン サボテンのど飴」も出口さんイチオシ。パッケージに書かれた“心のトゲをそっと抜く”というキャッチフレーズが印象的です。

出口さん:「最初はご当地土産らしいポップなパッケージにしていたのですが、全国区で勝負できるようにデザインを変更しました。砂漠で生き抜くサボテンの力で、現代社会で働く人たちに癒しを届けたい。そんなコンセプトに共感してくれた化粧品ブランドが、オンラインと一部店舗で取り扱いをしてくれて。若い女性に手に取ってもらえるようになりました」

また、ウチワサボテンのフレッシュリーフ(生の葉)にも意外な販路が。

出口さん:「家庭料理用にとフレッシュリーフを販売しているのですが、違う目的で買ってくださるお客様も多いみたいで。実は、リクガメのおやつとして購入する人が多かったんです。リクガメに必要な栄養も豊富で、人間も食べられる食材だから安全。そこで、2020年からは“かめはめ葉”と名付けた新ブランドでも販売をしています」

サボテンが世界の食糧危機を救う?

身近なところだけでなく、世界的な規模でも食用サボテンへの注目度は高まっている様子。

2017年、国連食糧農業機関(FAO)は「ウチワサボテンが世界の食糧危機を救う答えになりうる」との見解を発表しました。乾燥地帯でも生育できることから、食糧安全保障に貢献する存在となっているようです。特に、2015年にマダガスカルを襲った干ばつでは、サボテンが食料・飼料・水分の供給源となったと報告されているそう。

出口さん:「ウチワサボテンはさまざまな環境に対応できる植物。砂漠のイメージが強いかもしれませんが、水が多い場所でも育つんです。実際に私たちも、水はけの良い場所・水の豊かな場所と2つの畑を運営しているのですが、どちらのサボテンも元気。水を含むとよりぷっくりと肉厚になります。世界の食糧危機問題だけでなく、 日本では大雨による農作物の冠水被害も課題になっていますよね。ウチワサボテンも根腐れが心配されますが、今のところ水耕栽培もできるのでは、というくらい雨の影響は受けていません。気候に左右されない作物として、農家にとっても有益なのではないでしょうか」

サボテンの活用範囲は、食用だけにとどまりません。サボテンから抽出したオイルを美容品に取り入れて販売する企業もあれば、植物由来のヴィーガンレザーとしてサボテンを利用する企業もあります。まだまだ、サボテンの可能性は拡大中。近い未来、私たちの、そして世界の人々の未来を支える存在になるかもしれません。


▼「春日井さぼてん ラボ&ショップ こだわり商店」公式サイト
https://www.kasugai-saboten.jp/

▼食べるサボテン「太陽の葉」公式サイト
https://taiyonoha.jp/


文・撮影:齊藤美幸
写真提供:ジェイエヌエス株式会社


■ライタープロフィール
齊藤 美幸|まちと文化が好きなライター。広告制作会社での勤務を経て、2020年からフリーランスとしてソトコトオンライン他で執筆中。地元・名古屋を中心に、都市の風景や歴史、地域をつくる人の物語などを伝えている。

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