カレンデュラに魅せられ生産量日本一位の千葉県・南房総へ移住。花を生業にする夫婦の夢とは?

カレンデュラに魅せられ生産量日本一位の千葉県・南房総へ移住。花を生業にする夫婦の夢とは?

2022.04.09

中央アジアのキルギス共和国で出会った五十嵐さん夫婦は、帰国後自然と共存するキルギスのような暮らしを求めて北海道へ移住した。酪農の道を模索したが、自分たちで始めるには高額の初期費用がかかるため断念。どうしようかと思ったときに思い出されたのは、キルギスの山一面がオレンジ色になる、カレンデュラの景色だった。カレンデュラ生産量日本一の南房総市で、カレンデュラ農家の門を叩いた五十嵐さん夫婦の移住と、今目指していることについて聞いてみた。写真:kaskip/shutterstock

カレンデュラ農家になったきっかけは、キルギス共和国での暮らし

新規就農してカレンデュラ農家になった五十嵐夫婦
新規就農してカレンデュラ農家になった五十嵐夫婦

五十嵐早矢加さんは、2011年からの2年間を青年海外協力隊としてキルギス共和国で過ごした。先輩隊員として1年早く現地で活動していたのが、五十嵐大介さんだ。早矢加さんは村のなかでホームステイをしながら牛、羊、鶏とともに生活し、毎日搾りたてのミルクを飲み、チーズやヨーグルトを作り、生みたての卵を食す暮らしを送っていたという。

キルギス共和国の村の暮らし
早矢加さんがホームステイしていた村のようす 写真提供:ベレケの村

早矢加さん「常に手作りのある暮らしでした。ジャム、コンポート、ピクルスを夏に仕込んで、冬はマイナス30度になるから働かずに家でゆっくり過ごす。夏は農作業をして、ニンジン、ジャガイモを大量に作って保管していました」

キルギス共和国の村で貯蔵されているジャガイモ
大量に貯蔵されているジャガイモ 写真提供:ベレケの村

キルギスで日常的に使われていたハーブが、日本ではキンセンカの名前で親しまれているカレンデュラだった。夏になると野生のカレンデュラで山一面がオレンジ色に染まったという。日本で多く見かけるカレンデュラよりも、花びらの数が少ない素朴なイメージのカレンデュラは、薬用ハーブとして現地の薬屋で売られていた。「体調が悪いなら、カレンデュラティーを飲んだら?」と言われるくらい、カレンデュラのハーブティは日常的に飲まれていたという。喉の調子が悪いときは、カレンデュラのハーブティでうがいをした。冬場は1カ月に一回程度しかお風呂に入ることが出来ないが、カレンデュラのハーブティで頭を洗うとふけが出にくいといわれているそうだ。

フレッシュカレンデュラティー
取材時に出してくれたフレッシュカレンデュラのお茶。キルギスの白い蜂蜜とともに

帰国後、酪農家を志し北海道へ。だがしかし……

帰国後結婚した二人は、キルギスのような暮らしを思い描いて北海道へ移住したが、大規模な酪農はキルギスでの暮らしとは違ったようだ。

収穫したカレンデュラ
写真提供:ベレケの村

酪農家の道を諦め今後について考えたとき、思い出されたのはキルギスで見たオレンジ色に染まる山の景色だった。カレンデュラについて調べてみると、日本での生産量一位は千葉県の南房総市だった。南房総市で新規就農する場合、小規模でも新規就農資格認定を受けられることが分かり、南房総市に注目した。

市内で多くのカレンデュラを生産している白浜町を2度ほど訪れたあと、2016年5月に移住。先輩農家の下で2年間の研修を受けたあと、白浜町で新規就農を果たしたのだ。カレンデュラ以外にも南房総の特産品をメインに、ナバナやソラマメ、トマト、生姜、落花生や花あわなどを育てて出荷している。

南房総市で見つけたカレンデュラ農家としての道。「ベレケの村」が新たに始動

北海道在住中の2016年に、2人は「ベレケの村」を立ち上げた。「ベレケ」は、キルギス語で「恩恵・贈り物」を意味する言葉だ。南房総へ移住後も、自然の恵みに感謝し、自然との共存共生を目指した商品や体験を提供できる場を目指して、ベレケの村を運営している。2人で調べ、研究員にアドバイスをもらいながらカレンデュラを使ったオーガニックコスメ商品も開発し、販売中だ。

早矢加さん「石けんとオイルはもともと自分が作っていたレシピで作ってもらっているのでスムーズにいったんですけど、化粧水と乳液、クリームに関してはOEM化粧品製造メーカーと相談しながら進めました」

カレンデュラを使ったオーガニックコスメ
写真提供:ベレケの村

できるだけオーガニックの素材で、赤ちゃんでも使えるものを目標に作られている商品たち。敏感肌や乾燥肌などで化粧品選びに悩む人たちから、使用後のいい変化について「これだと心配なく使えます」と、早矢加さんの元にうれしい声が届くそうだ。

耕作放棄地をカレンデュラ畑に。雇用を創出して地域を元気づけたい

カレンデュラの魅力を伝えるとともに、一面がオレンジ色に染まる南房総の畑を守っていきたいという思いで、「CALEN(カレン)」というカレンデュラグッズのブランドを立ち上げた五十嵐さん夫婦。南房総に移住してもうすぐ6年の今、どんなことを目標にしているのだろうか?

早矢加さん「もっと自分たちの商品であるカレンを知ってもらって、いろんな人に買ってもらって、その循環でもっともっとカレンデュラの畑を白浜に、耕作放棄地をカレンデュラの畑に変えていきたいっていうのと、雇用の創出をしたくて。障害者施設の方に一緒に働いてもらえるような雇用の創出をしていけたらいいなと思っています。花びらをちぎるとか、花びらの収穫とかをお願いできたらと思って。そのためにまず販売数を増やして、資金を増やさないと依頼することもできないと思っています」

商品を作ると同時に、手作りコスメのワークショップも行っている。将来的には、カレンデュラ畑の横でワークショップを行える場所を作り、体験しに来てもらえると同時に商品にも触れてもらう機会を作るのが目標だ。

ハウス栽培のカレンデュラ
写真提供:ベレケの村

カレンの商品はベレケの村webショップでも購入可能だが、「道の駅白浜野島崎」「道の駅ローズマリー公園」「里のMUJIみんなみの里」でも手にすることができる。カレンデュラの切り花は開花前に出荷されるが、切り花の出荷が終わる3月末ごろには、オレンジ色の花が咲き誇る様子を目にすることができるだろう。南房総を訪れた際は、「太陽のハーブ」と呼ばれ元気を与えてくれるカレンデュラ商品を、手に取ってみてほしい。

ベレケの村:https://www.berekenomura.com/

写真:ベレケの村、鍋田ゆかり
文:鍋田ゆかり
取材協力:ベレケの村