沖縄県中部に位置する北中城村(きたなかぐすくそん)は、3期※(15年)連続女性の平均寿命が89歳と、日本一の健康長寿の村として知られている。そんな北中城村で暮らすご長寿の日々の暮らしには一体どんな長寿の秘密があるのだろうか。2人の"キタナカマダム”の元へ伺った。※出典/厚生労働省:平成27年市区町村別生命表
【ご長寿No.その1】沖縄が誇る美魔女、伊藤洋子さん
しっかりと伸びた背筋にバッチリメイク。
今日もお洒落な洋服を着こなす伊藤洋子さんは御年82歳。
その美貌も去ることながら、大好きなヨガとフラを現役で続けながら村内でインストラクターとして活動している。

村名物のミスコン、『美寿きたなかぐすく』
洋子さんは、毎年80歳以上を対象とした村在住の女性から選出される「美寿(みす)きたなかぐすく」の10代目でもある。
- 美寿がんじゅう=頑丈、健康
- 美寿さらばんじ=全盛期、絶好調など
- 美寿ちむじゅらさ=美しい心
の計3名が毎年選ばれるこのコンテストは、そのユニークさから度々メディアでも取り上げられることが多く、1年間まつりやイベントに出席して村のPR活動を行う。
“美寿がんじゅう”でもある洋子さんは特産品の「アーサ(ヒトエグサ)」の初摘み式や県外からのメディア取材など、体力勝負の様々な仕事をこなし、村を盛り上げるために日々尽力してくれている。

美しさの秘訣は、ヨガと毎日のカラダづくり
洋子さんの1日は瞑想から始まる。
朝起きて毎日1時間のヨガとストレッチを必ず行い、午後はウォーキングやフィットネスバイクなどの軽い運動、毎週水曜日には、地域の高齢者が集まる「脳活体操サークル」で講師として中心的に指導している。


「ヨガの姿勢、“奢ることもなく おもねることもなく 凛として座る” それが私の生き方でもある『凛として生きる』に繋がっています。ありのままの自分が好き。」
週に2日、村の施設でヨガ講師として若い層にも指導を行う洋子さん。
「豊かに生きていくコツは、足りないものに不満を言うのではなく、あるものに感謝する事。 他人と比べないで自分のいいところを探しなさい。」
と教えてくれた。
【ご長寿No.その2】“ゆいまーる”な日常とともに 安里チヨ子さん
北中城村、熱田(あった)地区の公民館はいつも活気に溢れている。
庭の芝生では学校帰りの子ども達がキャッチボール、手入れが行き届いた花壇に水をやる近所のおじさん、室内では婦人会のメンバーが集まり楽しそうに談笑している。
安里チヨ子さん(79)は、公民館のすぐ目の前、沖縄の伝統的な赤瓦の屋根の平屋に長男夫婦と暮らしている。

小柄で物腰がとても柔らかく、誰にでも優しく接する姿が印象的なチヨ子さんは、約30年間地元の漁協で毎日6時間、アーサ(ヒトエグサ)の選別の仕事をしていたそう。
「立ち仕事だったけれど、皆が良くしてくれて楽しかったですよ」
と明るく答えてくれた。

大切な人たちに支えられて・・
そんないつも笑顔のチヨ子さんだが、3年前に旦那さんを亡くした当時は、ショックで1年ほどは外に出られなかったという。
「とてもいい人だった。周りの人が元気づけてくれたけれど、夜寝られないこともあった。」
話を伺った時は気丈に振舞ってはいたが、少し寂しそうな姿に胸が痛くなった。
小さい頃は“ナチブサー(泣き虫)”だったというチヨ子さん。
29歳で結婚し、うるま市から北中城村へ来てからは、2男4女の6人の子どもにも恵まれ、「夕食もお嫁さんが準備してくれるから」と趣味の畑と花の手入れに勤しめるそう。


辛い時期を乗り越えて、大事な家族と仲良しのご近所さんや地域の人たちに支えられながら、趣味の編み物やゲートボールなどを楽しんでいる。
「人間はいつも感謝の気持ちが大事だよ」
そう話すチヨ子さんの口からは、愚痴やネガティブな言葉を聞いたことがない。
人の良いところを大切にして高齢になっても謙虚な姿勢を忘れない、笑顔の素敵なチヨ子さんと出会って取材をしてからかれこれ半年が経った。
季節はちょうど、シーミー※(清明祭)の時期。
お墓の草刈りに行くという孫を気遣う姿は、いつもの優しい“チヨ子おばあちゃん”だ。
※沖縄地方で、旧暦三月の清明の節に行われる墓参の行事。
みんな集合!りっかりっか体操
毎週火曜日、熱田地区の公民館では近所の人たちが集う。高齢者を対象とした自主サークル「りっかりっか会」は、リーダーの安里春美さんが中心になって、1時間みっちり体を動かす。初めて参加する人も若い人も外国人の留学生も誰でもウェルカムだ。


毎週10〜20名程度の高齢者が集まるが、割合は女性がほとんど。
碁盤目になったマットを使って手足を動かし、次々と規則の変わっていく運動トレーニングでは、うまくクリア出来れば前の人とハイタッチをして、間違えてもみんなで声をかけてフォローする。
30分しっかり運動したら、みんなでおやつとお茶を飲んで休憩時間もしっかりとる。
そして残り30分、もう一踏ん張りして1時間の運動を終えた頃には若い人でも汗だくになる程。
リーダーの春美さんは、
「このサークルはできるだけ休まない。雨の日でも必ず公民館を開けます。休んでしまったら来なくなる人がいるから。だからどんな時も率先して続けることが大切。」
と話します。
定期的な運動に加えて、高齢者が住み慣れた地域で積極的に社会参加できる場所を作ることは、生きがいに繋がるのはもちろんの事、常に笑い声の絶えないその和気あいあいさに、北中城村の長寿の秘密のヒントを垣間見たような気がした。