地方で働く女性、都心で働く女性、子育てをしながら働く女性、さまざまなライフスタイルを送る女性たちを取り上げ、女性の健康課題や社会課題について考える対談コンテンツです。
株式会社陽と人の代表 小林味愛さん
慶應義塾大学を卒業後、衆議院調査局へ入局し、経済産業省に出向。その後、民間企業に転職し、地域活性化などのコンサルティングを行う中で、結びつきが生まれた福島県伊達郡国見町で農産物の流通・加工品企画販売・ 地域づくりを行う、株式会社陽と人を設立。フェミニンケア『明日 わたしは柿の木にのぼる』(https://ashita-kaki.com/)を立ち上げる。
デリケートゾーンのケアは、自分自身の体調のバロメーター
小林さん:30代になった頃、妊娠する前のタイミングだったと思います。
フェムテック tv:何かきっかけはありましたか?
小林さん:妊娠をちゃんと考え始めたっていうのは大きかったです。
フェムテック tv:妊娠の準備のためにという認識ですか?
小林さん:はい、私自身はそれが大きくありました。そもそもの問題意識としては、これだけ女性活躍、社会進出が進んでいる中で、女性が働くキャリアの話と女性の健康課題が、教育上まったくリンクしてないことだと思うんです。
デリケートゾーンのケアに関しては、私は自分自身の体調のバロメーターになると思っています。デリケートゾーンには多くの菌が存在します。それが日々の生活習慣、例えば、食事のバランスや寝不足、過度のストレスなどで菌のバランスが崩れて、かゆみや臭い、デリケートゾーンに関連する様々な不調が出てきます。女性の身体は、生物学上はそういった仕組みになっているんです。
今でこそフェムテックと言われ始めていますが、社会制度としてはまだ追いついてないですよね。
フェムテック tv:はい、そう感じています。
「これはもうそろそろ限界だな」とか、「最近疲れすぎているかもな」とか、「これは早めに検診に行ったほうがいいな」っていう判断、リテラシーを持つことが、今を生きる女性が自分を守れる手段ではあると思います。
社会制度を整えることに加えて、そして、現状、社会制度が追い付いていないからこそ、自分自身を大事にしていくライフスタイルを作りたいという思いを長年持っています。
フェムテック tv:確かに、リテラシーという意味では、女性同士でも恋愛の話はするけど、身体の話はしないですよね。
小林さん:本当にそうですよね。私は月経カップユーザー、もうなくては生きてはいけないって思うくらい。
フェムテック tv:そうなんですね。普段は、吸水ショーツと布ナプキンを使っているため、月経カップは、まだ未経験です。ぜひ、教えてください!
月経カップは自分の経血量が唯一分かる生理用品
正常の経血量は……と、よく書かれていたりすると思うんです。でも、何mlと言われてもよく分からないですし、普段の経血量が多いか、少ないかを他人と比較することでもないから、結局分かんないですよね。でも、月経カップはメモリのあるものもあるので、自分の経血量が正確に分かります。
フェムテック tv:小林さんが使ってみた月経カップでおすすめのメーカーはありますか?
小林さん:私は、ほとんどのメーカーの月経カップを試してみました。人それぞれ膣の形が違っているので、一概には言えないですが、まずは、オーソドックスなメーカーから試してみるのがいいかなと思います。私たちの会社のウェブサイトでもおすすめしているのですが、『EVE(イブ)』や『エヴァカップ』は、中でもスタンダードだと思います。
素材のシリコンが、柔らかいタイプなのに、柔らかすぎないからずれることもなくて使いやすいかなと思います。
結局、生理に関しては、ナプキンやタンポン、最近では経血カップや吸水ショーツといったアイテムを用いて「体外」で対処するか、低容量ピルやミレーナで「体内」で対処するかになりますよね。でも、体内での対処は不安な部分もあると思うんです。
フェムテック tv:そうですよね。ピルやミレーナは、少し敷居が高いという声もありますよね。
小林さん:そうですよね。でも、ナプキンだと蒸れたり、かぶれたりもしますし、こまめに変える必要もあるため、ゴミを増やしてしまう問題もあります。だから、私は月経カップをおすすめしています。
フェムテック tv:私自身もゴミの問題は気になるので、洗濯して使える吸水ショーツと布ナプキンにしているところがあります。月経カップもそうですが、初めて使うものに対してはどこか警戒心が出てきたりもするのかなと思います。
小林さん:実は、膣の中には無感覚ゾーンがあるので、長時間つけていても違和感がありません。
月経カップって大きいように見えても、折りたたんで入れるので、入れる時には感覚がありますが、入ったらぱっと手放して終わり。取り出すときもウズラの卵を産むくらいの感覚です。
フェムテック tv:確かに、ニワトリの卵と言われたら、ちょっと構えてしまうところがありますが、ウズラだったら大丈夫かもっていう気持ちになりました!
小林さん:色々な方とお話しているとタンポンが使える人は大丈夫な方が多いです。膣の入口と経血カップの口(リム)の部分にデリケートゾーンのケアアイテムでにあるオイルなどを潤滑剤のように塗ってから入れてみると、よりスムーズにはなると思います。
今は、布ナプキンを使われているってことだったんですけど、いつから使っているんですか?
フェムテック tv: 2年くらいです。洗うのがちょっと手間なので、そういう意味でも月経カップはいいですよね。会社でもこういった話はシェアされたりしますか?
小林さん:弊社は、プロジェクトメンバー含め関係者に女性は多いですが、農業もやっているので男性もいます。男性社員とも普通にフェムテックの話をします。
フェムテック tv:そういう展開があるのは素晴らしいですね。
フェムテック tv:頼もしいですね(笑)。弊社はマネージメント業務もあるのですが、マネージメントしている女性とどこまで共有するのがいいのかを探っているところがあります。小林さんはどう思いますか?
小林さん:男性の上司とか、会社で男性と共有するのはけっこうハードルが高いと思います。理解のある場合はいいですけど、生理の仕組み、生物学的になぜ生理があるのかを理解している男性はまだまだ少ないですよね。そんな中でフェムテックの流れがあるからと、生理の話をするのはびっくりして思考が停止しちゃう人が多いと思います。
フェムテック tv:そうかもしれないですね。そういった話を振った瞬間、心を閉ざしちゃって対話にならないところはあるかもしれません。特に独身男性や世代が上の方の場合は難しいところがあります。
社会が動き始めたことで、女性自身も生理や更年期の話題を口できるようになった
フェムテック tv:今は福利厚生として生理休暇がある会社もありますが、「生理休暇を取ります」というのは恥ずかしいから言えないという女性も多いですし、そもそも生理休暇は有償、無償なのか問題もあります。どうすれば制度の普及に繋がるんだろうって。
小林さん:本当にそうですよね。生理休暇だと思われない仕組みがあった方が今は良いと思います。何らかの条件をつけて有給は生物学的女性のほうを多くするとか、データ上では働いてる女性の8割は生理の不調を訴えているわけですから、それくらい思い切ったことをやってもいいと思うんです。
フェムテック tv:生理で生活に困難が生じる日があることで、「女だからしかたない」って思われたら嫌だなとか、「だからこれは任せれられない」と思われたら悔しいなっていうのを、どこかで思っていて。
小林さん:分かります。
フェムテック tv:こういう話題になるたびにぶち当たるのは、システムの柔軟性が先か、女性の考え方の柔軟性が先かっていう。ベクトルの違う話を同時に動かしていかなくてはいけない難しさがある気がします。
小林さん:今まで言われてきたことは、女性の考え方だけだったと思うんです。でも、ここ1、2年で経済産業省の広報誌でフェムテックを取り上げたり、まだ制度は追いついてはいないけど、社会として動き出そうというメッセージがようやく出てきましたよね。
フェムテック tv:はい、その動きは大きいと感じています。
小林さん:そうすると不思議なもので、女性自身も、生理や更年期の話題を口にしたり、SNSでの発信が増えたりと、社会が少しずつ動き始めたことでタブーだと思ってたことを徐々に開示するようになってきた。相乗効果が起きていますよね。
社会の動きがあって、女性のマインド変化も起きてくる。この両軸がすごく大事だと思います。
フェムテック tv:そう思います。男性にも知ってほしいと思う反面、女性自身も意外と知らないことが多くて。
小林さん:本当に!
フェムテック tv:私たち自身もこのメディアを作っていると、「こういう仕組みだったんだ」と、驚くことがまだまだあります。フェムテックというワードが、それこそブームになっているから、意識も変わってきているのかなと思います。
以前、編集部でアンケート調査を実施したときも、女性側は男性に「こういうことをしてほしい」ということではなくて、単に知っていてほしいよね、という結論になりました。要望したいわけではなくて、「今、生理だからちょっと不調です」ということを男性が知っているだけで、状況は変わるんだなと。
そうしていくためにもコミュニケーションがキーワードになるかなと思っています。小林さんは先ほどいろんなところで生理の話をしているとのことでしたが。
小林さん:弊社は小さな会社だからなんでも言い合える環境というか。それはベンチャー企業の特性なのかもしれません。
ここ最近は、経済産業省のフェムテック事業にも弊社が採択されていることもあり、医療監修を頂いて働く女性やマネジメント層が知っておくべき基礎知識をまとめた講習を弊社で作っています。世代や性別関係なく受講できる内容になっています。
約1時間の内容で、それを企業だけではなく、自治体でも講演をやっています。そうするとおじいちゃんとかも、「こんなに大変だったんだ」「母ちゃんも大変だったんだな」って。
また、コロナ禍になって働き方が変わったことで、「どんなに生理痛がつらくても重要な会議があるから出社しなきゃ……」というのが、「今日はオンラインで」となったり、気持ちに余裕が生まれるのかなと思いました。
小林さん:うんうん、そうですよね。こういう話は、女性の健康課題だけではなくて、働き方全体、組織自体の変革みたいなのも絶対必要だと思います。
フェムテックの流れができたことで、女性がだんだん開示できるようになってきたけど、女性の健康課題の研修をやった時、定年まで頑張って働いてきた女性たちに、「生理は自己責任。私たちだってどんなにつらくても耐えて働いてきたのに、今の若い人たちだけ弱音を吐いて、生理を社会の問題だっていうのはおかしくないですか?」って言われたこともありました。
これまでの時代背景がある中で様々な方に分かってもらうためには、根拠となるデータも必要になりますし、これまでの時代に頑張ってこられた方々を尊重しながらも、これからのために新しい未来をつくっていく地道な努力が大切なんだなっていうのはすごく感じています。
フェムテック tv:そうですね。男性だけではなく、女性みんなに生理はあるけど、症状はひとりひとり違いますから共有しにくい部分もあり、さらには世代によって異なる時代背景もあります。尊重しながらもどう進めていくかが大事ですよね。
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