ソーシャルでエシカルな関心をもつ人を惹きつける、街の中に広がる学びの場「ソーシャル系大学」。新緑の季節に訪れたのは初のシブヤ大学姉妹校にして、設立9年目を迎える「京都カラスマ大学」である。学びが根づいた京都の街で、独特な存在感を放ち、登録する学生も約3700名を数える。学長の高橋マキさんの案内で、縁のある3つの場所を訪れた。
授業後、運営スタッフが感想を共有し合い、次のアイデアを練る。
最初に訪れたのは京都御所の近くの有斐斎弘道館。江戸時代の儒学者・皆川淇園が設立した学問所趾である。約550坪にわたる数寄屋建築と見事な庭園は、有志によって管理され、茶事や講座の会場になっている。京都カラスマ大学でも授業開催をきっかけに、庭の草引きをするボランティアサークル「皐月会」が発足。月に1度集まっては、苔むす茶庭に出てくる雑草の芽をていねいに取り除く活動をしながら、日本文化に関する知見を深める自主活動を行っている。
続いて訪れたのは、京都カラスマ大学の人気シリーズ「食べることから世界を広げてみよう」の授業。今回は、ドキュメンタリー映画『いただきます─みそをつくるこどもたち』を監督のVIN OOTAさんといっしょに観賞する回だった。映画の舞台は福岡市の高取保育園。園長の教育理念のもと、日本の伝統食を基本とする献立を毎日提供している。上映後、ヴィーガンレストラン『浮島ガーデン京都』の中曽根直子さんが握った玄米のおにぎりとお味噌汁を頂きながら、グループ感想をシェアする。
教室に集まったのは食に関心をもつ20代から60代までの人たち。若い受講生は、こんな子育ての環境があることを知ることができてよかった、と話す。毎日大量の食べ物が捨てられるホテルで働いているという受講生は、「毎食、お米1粒も残さず完食する子どもたちの姿に圧倒された」という。
授業後には京都カラスマ大学の事務所が入居するシェアオフィスSOLUMへ。京都のクリエイターたちの集うリノベーションされた町家である。京都カラスマ大学では、授業後、当日の運営に携わったボランティアスタッフが感想を共有し合い、次のアイデアを練る。多数の大学や私塾がひしめき合う、学び感度の高い街だからこそ、一筋縄ではいかない。オリジナリティのある学びの場を、ひとつひとつ、ていねいにつくっていきたいという高橋学長。京都の真ん中で、学生から高齢の方まで多様な世代の人たちが関わりながら、京都の街と人がもつささやかな魅力に光を当て、発信し続けている。
京都カラスマ大学
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