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『城町アネックス』経営者|新海康介さんが選ぶ、道の駅をつくる本5冊

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ホテル『城町アネックス』を福井市で経営する新海康介さんは、同ホテルを「地域の自然に根づき、地域の人に愛される場所として旅人にも好きになってもらえたら」と語る。そんな新海さんが選んだ、旅人の目線を忘れず「宿泊」について考えるための5冊。

新海康介さんが選ぶ、道の駅をつくる本5冊

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(左上から時計回りに)1.『住宅読本』/2.『ヨーロッパ退屈日記』/3.『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』/4.『酒と肴と旅の空』/5.『山下清 ─The 90th of his Birth』 
 僕はホテルを経営していますが、読む本は経営や接客術についてよりも、旅に行きたくなる、旅のよさを教えてくれる内容のものが多いです。今回はその中から「宿泊」について考えられる本を選びました。

『住宅読本』は、「居心地のいい住まいづくり」について書かれた本です。僕は瞬間風速的にいいものを提供するよりも、家族で経営することを長く続けて、それを結果的にお客様が安らげる場所づくりにつなげていければと常々考えています。この本でとくに共感したのは「住み継ぐ」ことについて語った部分。長く住み継がれて地域の風景となじみ、地域の人には安心感やノスタルジーを、旅人には地域の魅力を伝えていけるホテルを時間をかけてつくりたいという思いを新たにしました。駅や道の駅にも、きっと似た性質はあるのではないでしょうか。

『ヨーロッパ退屈日記』は伊丹十三さんが、独特のユーモアと科学者のように鋭い視点で語った、旅についてのエッセイです。この本を読むと、旅する人が持っていたいルールやマナー、心構えが理解できますし、それがわかるともてなす側も気持ちよく行動ができるのではないかと思います。より楽しく、充実した旅をするための一冊です。

『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』も読みやすい旅のエッセイ集です。村上春樹さんならではの巧みな表現で、この本の村上さんのようにアイラ島に行ってウィスキーを飲みたくなります。アイラ島は華々しい観光地があるわけでもない。そういう場所だからこそ惹かれるものがあるということを含め、「人が旅に出たいと思うときの心情」
を何度も反芻させてくれます。

 旅といったら食が欠かせません。それをしみじみと感じさせてくれるのが『酒と肴と旅の空』です。『城町アネックス』は、僕がシェフを務めるレストランを併設していますが、僕自身、旅と食はセットのほうが楽しくなるし、感動も大きいと思っているのが理由です。この本にはそれぞれの視点での感動が描かれており、この感覚は大切に覚えておきたいと思いました。

 僕の祖母が経営していた旅館には画家の山下清さんが何度か泊まってくれたそうで、山下さんにはずっと親近感がありました。『山下清 The 90th of his Birth』には、山下さんが旅先で描いた絵も多く収録されていますが、そこから「こうあってほしい旅の姿」などもよく考えています。

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しんかい・こうすけ●福井県福井市出身。関西の大学を卒業後、大阪の機械メーカーに就職。30歳のときにUターンして以来、家業として70年前から続いていたホテル経営に携わる。父が建てたホテルを継ぎ、現在は『城町アネックス』を経営している。
photographs by Yuichi Maruya text by Sumika Hayakawa
記事は雑誌ソトコト2021年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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