レガシー産業をDXの力で変える挑戦に大型出資の追い風が吹く。

レガシー産業をDXの力で変える挑戦に大型出資の追い風が吹く。 目指すのは、持続可能で創造的な産業への転換。

2021.11.24


SBIインベストメント株式会社 投資部 次長 河村 暁氏(写真左)
株式会社Arent 代表取締役 鴨林 広軌氏(写真右)


創業100年を超える老舗企業が世界一多い日本。歴史と実績がものをいう建設業界もその一つ、いわゆる「レガシー産業」と呼ばれる分野です。脈々と受け継がれてきた技術の世界が直面するのは少子高齢化による労働力不足。そんな建設業界をデジタルトランスフォーメーション(DX)の力で盛り上げたい。

スタートアップ企業への投資を得意とするSBIインベストメント株式会社は10月、その思いをDXの力で創造的な産業成長を目指すITスタートアップである株式会社Arentに託し、総額11億円超(株式会社フソウとSBIインベストメントによるCVCファンド「FUSO-SBI Innovation Fund」含む)を出資しました。

課題解決への想いや今後の展望についてSBIインベストメント株式会社投資部次長の河村暁氏、株式会社Arent代表取締役の鴨林広軌氏にお話を伺いました。

互いに共感した「社会課題解決」への思い。共鳴したからこそ実現した大型投資

ソトコトNEWS Arent社との出会いと印象、また今回の投資への思いをお聞かせください。


河村 私は国内における社会課題を解決していくことを投資テーマとして投資活動を行っています。その中で、特に国内人口の減少及び少子高齢化による労働者不足の問題に対して、未だ事業承継または技術・ノウハウを人から人への属人的な伝達・教育により頼っている部分が多いと思います。これまでのやり方をテクノロジーの力を活用して解決し、このような技術・ノウハウの質を均一またはそれ以上にし、労働生産性の向上を図る必要があると感じていました。
このような視点でレガシー産業における真の変革が起きていない市場として建設業界を見ていました。建設業界は多重下請け構造となっているため、非効率な作業を人の力で継続している現状課題があることから私はこれを変えていくべきであると考えている時に、様々なスタートアップをリサーチしている中で、Arent社と出会いました。DXの力でプラント・建設業界へアプローチする試みが非常に面白いと感じました。


鴨林 日本の優れた職人さんの知識や技術を結晶化させたようなソフトウェアを創ることで、建設業界における労働環境を変えられれば。そんな自分たちのビジネスモデルに対して「面白いね」と言ってもらえることは本当に嬉しいことですね。SBIインベストメントさんという大きな会社からの出資をいただけたことで、さらに挑戦できる領域も広がっていきそうです。


河村 Arent社は、3D分野・自動最適化が得意で技術力・専門性の高い優秀なエンジニアが揃っています。例えば、京都大学卒の鴨林社長を筆頭に、東大院・東工大院、海外の大学院卒、数学オリンピックで優秀な成績を納めたエンジニアなどです。人材の質の高さはさることながら、大企業の顧客相手に寄り添いながら顧客ニーズ・課題にもとづき業界知識を念入りに調べ新たな視点の解決策を生み出し、0から1を生み出すことができる「デザイン思考」な会社であります。プラント事業の実態にも深く精通し、机上の空論ではなく現場で真に使えるCADを創り出すArent社は例えば総合エンジニアリング事業などを手がける千代田化工建設社の案件のように奥深く取組む。その結果がプラント・建設業界へ活躍の場を広げている証拠だと思います。


鴨林 建設現場で働く職人さんたちの目線に立つことでしか見えない課題があると感じています。その領域に入り込むためには、寄り添うことが大切だと感じています。

Arent社だからできるDX。「働くを楽しく」が創造性を生み出す根源


ソトコトNEWS Arent社の強みをどのような部分だと感じていますか?


河村 業界横断的に「再現性」のある最適化・自動化のノウハウを揃えていることがArent社の強みであり、先ほどお話しました人材の多様性に富んでいることに起因していると感じています。Arent社が千代田化工建設社とともに共同開発した3DCAD配管自動設計システム「PlantStream」を最初に見たときにゲーム会社なのかなと思ったほど「PlantStream」はUI/UXに優れており驚きました。パソコン上で配管パイプや各種ユニットを動かしながら立体的にプラント建設がイメージできるプラットフォームであり、プラント業界のニーズにも耐えられるクオリティだと思いました。フタを開けてみれば鴨林社長がスマホゲームなどを手がけるGREE社のエンジニア経験があり、更にはゲーム開発経験のある3DCAD関連知識を持つメンバーがArentに集っていることが当社技術の出自なのではないかと感じました。「ゲーム性×数学力×3D CAD(設計最適化)=Arent社のDXの力」というこれらが合わさらないとできなかった自動化システムですよね。
「PlantStream」がプラント業界の国内外の複数企業においてPoCが進んでいることは非常に喜ばしいことですし、時間がかかるでしょうが「バーティカルSaaS」として受け入れられていくことを期待しています。


鴨林 ゲームって楽しいから続けたくなりますよね。働くことをゲームのように、それってすごく良い流れだなと思っています。触っていて楽しいという感覚が仕事のツールになれば遊ぶように仕事ができる。これって一番理想的な働き方だなと思います。デザイン思考、ゲームっぽいというのはArentにとって誉め言葉ですね。


河村 Arent社が持つDXの力を使って新しい切り口から最適化を図っていけば、削減された労働時間を創造性の高い業務へかけられる時間を増やすことができ、企業価値の向上に繋がるものであると思います。SBIインベストメントとしては、これまでの組成ファンドでLP出資いただいた企業様とArent社を繋いでいくことで、企業価値の向上に繋がるこの世界観を広げていきたい。

社会課題先進国な日本だからこそできるチャレンジ。温故知新が生み出す人間らしい働き方をテクノロジーの力で叶えたい


ソトコトNEWS レガシー産業の多い日本にとってArent社のDXは何をもたらすのでしょうか?


河村 建設業界のみならずレガシー産業はDX化が遅れている印象は否めませんが、世界の中でも日本の少子高齢化は顕著であるからこそ、日本発で世界に対して先行して解決策を見出していくことができる環境にあると思っています。その分、改善する幅も大きくやりがいがあるとも言えます。今の日本はDX化が遅れている部分は数えきれないほどあるでしょうが、5年後、10年後には世界のトップに立っていると信じています。そういった部分にArent社のDXの力が活かされていってほしいと思います。


鴨林 職人さんの高齢化もあり、熟練の技術を受け継ぐことの必要性を感じています。熟練の方々は非常に多くの暗黙知をお持ちです。彼らの業務は技術の高さ故、どうしても属人的になりがち。この人にしかできない、あの人にしか頼めない。どうしても働き方が偏ったり、無理が出てきたりしがちな労働環境だと感じました。

Arentは、熟練職人さんたちのノウハウをソフトウェアというカタチで結晶化し、誰でも使えるようなツールにすることでその労働環境を改善できるのではと考えています。持続的に働いていこうと思うと、厳しい労働環境では人は続けられない。これはSDGsにもつながる部分だと思います。DXによって労働効率が上がり、そこで生まれた時間を別の創造に使えるようになれば、もっと働くことへの価値も上がっていきますよね。


河村 SBIグループの経営理念の中に「セルフエボリューションの継続」という言葉があります。常に「創意工夫」「自己改革」を目指していく姿勢が大切ですね。DXの入口はコスト削減がスタートだとは思いますが、コスト、コストと言っているとどうしてもマイナス思考に向かいがち、でも目指すべきDXの本質はテクノロジーに任せられる部分は任せて、人は創造性豊かな仕事に時間を注いでいくことだと思っています。

活躍領域は世界規模、その先にたどり着くSDGsとの親和性


ソトコトNEWS SBIインベストメント×Arentが生み出す新たな世界への期待と目標を教えてください。


河村 Arent社にはもっと大きい世界観を持つ会社を目指してほしいです。ドイツ工学アカデミーと連邦教育科学省が2011年に発表した「インダストリー4.0」は、現実世界とデジタル世界を融合させたCPS(サイバーフィジカルシステム)によって第4次産業革命を起こすものでありますが、その一翼を担う会社になっていくことを期待しています。

Arent社の開発した3D設計最適化・自動化「PlantStream」は、デジタル化→最適化・自動化→汎用化という形から別の業界にも応用可能な共通項が存在し再現性のある「ものづくり3DCAD設計プラットフォーム」が完成するのではないかと思っています。
現状のプラント・建設以外として、水処理、デザイン設計、スマートシティ分野・製造業…など最適化・自動化が可能な応用範囲は広いと思います。そして、最近は海外企業との接点も出てきているようですし「Arent=世界の3D設計自動化工場」を目指し、Arent社と一緒に伴走していきたいと思います。

Arent社の力はSDGsで言うと「4. 質の高い教育をみんなに」「8. 働きがいも経済成長も」「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献できるのではないかと。
(4)の教育としては誰でも使えるような設計プログラムを学習し、先進国や後進国など国を問わずモノづくりへの貢献につなげることができますよね。(8)はまさに働き方改革、時間や費用のコスト削減を進めながら生産性を向上させて創造的な仕事へ。そして、(9)はArent社の持つ技術の力を用いて今後は都市開発やインフラ分野などにおいて、SDGsが目標とする部分へその力を活かしていけるのではないかと思っています。


鴨林 日本は課題の先進国とも言えると思いますが、スタートアップにとって「課題」はある意味チャンス。本当に何とかしたいと思える「課題」を探すことの方が実は難しい。それをいかに解決していくかが、スタートアップの使命だと思っています。まだArentと聞いて皆さんが頭に思い浮かべるようなサービスがありませんが、いつか「Arentと言えばこれだよね」とイメージできるような会社に成長していきたいですね。河村さんからは、Arentに寄り添う形で期待を超えるような多角的なアドバイスをいただいております。今後も更にご支援をいただきたいと思っています。