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ソトコトペンクラブ

フジツボを食べた。

PN アサミデスク

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フジツボを食べた。定置網漁船の乗組員を始めて5年目。予てから美味しいと噂には聞いていた、船底やブイ、岩場にくっついてる貝のようなあれ。あれが美味しいんだって。比較的都会育ちの私にとって、得体の知れないものを食したいという欲が湧いてくるはずもなく、特に気にも止めずに過ごしていた。

ある日船長が何の思いつきか「食べてみるか?」と定置網のブイからフジツボを削ぎ落としていた。まぁそんな機会ないだろうから「いいですね〜」なんて言いながら、慣れた手つきでフジツボを洗って湯掻いている様子を見ていた。

比較的都会育ち、といっても田舎暮らしも5年目を迎えた今、みんな大嫌いなあの虫だって丸めた新聞紙で一発で仕留めるくらいのスキルは身についている。調子が良ければ素足でもいける。フジツボを食べたいという欲こそないが、それほど拒否反応もない。むしろ田舎レベルを上げるチャンスだ。ということで食べてみた。

カニだ。と思った。

もっと言うと食感がクリーミーなカニ。

ほぼカニクリームコロッケ。

だいぶ言い過ぎたが思ったよりも美味しい。調べてみると貝ではなくエビやカニの甲殻類に分類されるそう。どおりで。ただ、めちゃくちゃ面倒。身を取り出すのは至難の業。爪楊枝と指を上手に駆使してつまみ出すのだが、船長はあんなに指が太いのになぜあんなに器用にポイポイ取り出せるのか。不思議だ。そしてフジツボは取り出したところで可食部が少ない。変な内臓とかでてくるし。とにかくコスパ・タイパが悪い。

またまた調べてみたが、商品として市場に出回ってる例は全国でも少ない。高級珍味として売られていた。なるほどなー。売り出し方を工夫すれば価値が上がるのね。それもそうだけど、フジツボの価値はもっと違うところにあるような気もする。

仕事終わりの漁師たちが、「うまく取れんけぇ」「けっ、殻の破片も口に入ったっちゃ」とか「出汁がうまいんよ」「もっとましな、カニとかエビとか食べたいわなぁ」なんて好き勝手言いながらウダウダする感じとか、一般的には食べないものを限られたコミュニティだけで楽しむアウトローな感じとか。果たしてそれに価値があるのか、と言われたらなんとも言えないんだけど、少なくとも私にとっては暮らしの中で出会えたときめく瞬間ではあった。

だからといって別に毎日食べたいわけでもないし、ウダウダする時間あるなら別のことしたいし、よく考えたらアウトローでもないし。比較的都会育ちの私は一歩引いて見てしまうこともあるけど、その分また一歩だけローカルの仲間に近づけた気がした。

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