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小さな不思議を 可視化する写真。

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胃カメラを改造したカメラで魚が川で跳ぶ瞬間を写した「さかなとへび」、沖縄県の小さな島に通って、クジャクが飛ぶ瞬間を写した「クジャク」、大嫌いな虫と向き合う決心をして写した「クマンバチ」。『東京都写真美術館』で2023年1月22日まで開催されている個展「野口里佳 不思議な力」は、国内外で30年間制作活動を続けてきた野口里佳が、日常の中にある小さな謎を解き明かそうとしてきたここ10年の作品を中心に構成されている。

会場入口に入ってすぐのところに展示されている表題作「不思議な力」は、小学生の時に体験したような、ちょっとした科学実験をすることで見えない力を写真で可視化した作品だ。表面張力で逆さまにしても水がこぼれない紙のコースターが張り付いたコップや、磁石でこすることで金属に本来備わっているN極とS極を整えて、磁石に変化させたスプーンなど9点が展示されている。科学実験の様子なのにどこか温かさを感じるのは、その写真のいくつかに人の手が登場するからかもしれない。例えばスプーンを持つ小さな丸っこい手は、野口の娘のものだという。テーブルの上や家の中で行われた小さな実験が1400×1000ミリメートルに大きく引き伸ばされると、忘れかけていた日常のなかの不思議な力の存在を思い出し、幼い頃感じたワクワクした感情が蘇ってくる。
次の部屋に展示されている「父のアルバム」は野口の父親が写した家族写真を、父親が亡くなった翌年に野口がプリントした作品だが、「不思議な力」はその父親が使用していたフィルムカメラ「オリンパスペンF」で、現在の家族に手伝ってもらいながら撮影したものだという。野口はこの作品を「家族写真」でもあると語っている。
さまざまなつながりも感じる展覧会は、想像することの楽しさを思い出させてくれるだろう。

「野口里佳 不思議な力」

開催中~2023年1月22日(日)
 (152850)

《不思議な力 #8》2014年 アマナコレクション
©Noguchi Rika, Courtesy of Taka Ishii Gallery
text by Nahoko Ando

記事は雑誌ソトコト2023年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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