日本産科婦人科学会の調査で、2018年に体外受精で生まれた子供は56,979人と過去最多であることが公表されました。不妊治療に取り組むカップルが増えている中で、ついに2022年4月から不妊治療の保険適用がスタート。産婦人科専門医・婦人科腫瘍専門医の大島乃里子先生に、基本情報から不妊治療を予定している・していないに関わらず、知っておいたほうがいいことを教えていただきました。
INDEX
そもそも不妊の定義とは?
保険が適用される不妊治療の内容
保険適用が始まったことでの注意点は?
年齢に関係なく、不妊治療を選択肢に入れておく
そもそも不妊の定義とは?
①一定期間(1年)、避妊せず性交渉をしていても妊娠しない場合
(排卵日に限定せず、どのタイミングで性交渉をしていても)
②子宮外妊娠をし、卵管を取っているなど、何かしらの理由で自然妊娠が難しい場合
「日本の不妊治療を行っている年齢は40代が多いです。自然妊娠する力を示す妊娠率を見てみると、20~24歳をピークに年々低くなり、35歳でがくんと下がります。そのことから30歳以上は医師に相談のうえ、①の条件を待たずに治療を始めるのがいいと考えています」(大島先生、以下同)
保険が適用される不妊治療の内容
✓タイミング法
妊娠しやすい日時(排卵期)に性交渉を行う方法。
✓人工授精
子宮の入口から精液を子宮内に直接注入する。タイミング法の次のステップと言われている。
生殖補助医療
✓採卵・採精→体外受精・顕微授精→受精卵・胚培養→胚凍結保存
→胚移植
「生殖補助医療は、排卵直前まで成長した卵子、および射精により精子を体外に取り出す採卵・採精と、受精卵を作る体外受精や顕微授精などが一連の流れで行われます」
対象者
法律婚、事実婚の夫婦、カップル
年齢制限(治療開始時の年齢)
女性 42歳以下
男性 制限なし
治療の回数制限(治療開始時の女性の年齢/1子ごとにつき)
39歳以下 通算6回まで
40歳以上42歳以下 通算3回まで
※2022年4月2日~9月30日までに40歳を迎える場合:
40歳になってからでも9月30日までに治療を開始すれば、回数制限の上限は通算6回までとなる
※2022年4月2日~9月30日までに43歳を迎える場合:
43歳になってからでも9月30日までに治療を開始すれば、1回の治療に限り保険適用
負担額
自己負担は原則3割
例:1回30万円の治療だった場合、負担額は9万となる
保険適用が始まったことでの注意点は?
◎男女間で年齢制限が異なる
「年齢制限に違いがあるのは、エビデンスに基づいてのことです。やはり妊娠、出産は年齢の影響が大きく、人生100年時代と言われている現代は健康寿命が長くなっているものの生殖年齢(閉経年齢)は変わっていません。
また、女性は20代後半から、男性も40代から妊娠率が落ちていくことも知っていてください」
◎保険と自費治療は混合できない
「例えば、卵子を保存しておきたい場合やパートナーではない人の精子を使う場合などは、今後も自費診療になります。不妊治療における保険適用範囲は、先ほどの一般不妊治療と生殖補助医療の治療内容です」
◎不妊クリニックでもできることが異なる
「不妊治療はとても専門性が高いため、一般的な産婦人科ではなく、不妊クリニックへ行くことになると思います。また、不妊クリニックごとにできる治療内容が異なってきますので、まずはどんな治療ができるのかを聞くことから始めてみてください。
一般の婦人科外来から不妊クリニックへの受診をおすすめする場合もありますので、かかりつけ医に相談してみるのもいいと思います」
年齢に関係なく、不妊治療を選択肢に入れておく
10年先、20年先を見据えて自分の人生のライフプランを考えてみてください。現在は、子どもを持ちたくても妊娠しないカップルが5組に1組と言われています。今すぐ希望していなくても、いつかは……と考えている場合は、妊娠に関しては年齢因子が大きくかかわってくる分、今からその準備を始めても早くはないと思います。
不妊治療を選択する前の準備として、年に1回は婦人科検診を受けてください。不妊の原因になる子宮内膜症や子宮筋腫、子宮頸がんなどの検査をしておくことは今からできる大切な行動です」
●クレアージュ東京 レディースドッククリニック 婦人科顧問。日本産科婦人科学会専門医、日本婦人科腫瘍学会専門医、医学博士。婦人科腫瘍のほか女性医学の専門医でもあり、思春期から老年期までの女性の生涯におけるヘルスケアを担っている。
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