愛嬌たっぷり、ユーモア満載の振る舞いで10年以上も人気を博し続けている、山形県・朝日町の非公式キャラクター、「桃色ウサヒ」。その“なかの人”の佐藤恒平さんに、キャラクターのおもしろさやあり方を知り、楽しめる本を選んでもらいました!
佐藤恒平さんが選ぶ、キャラクター×ローカルデザインのアイデア本5冊
お薦めする『惑星のさみだれ』は、漫画ソムリエを自称する僕がいちばん好きな作品。大学院でウサヒを考案していたときに連載しており、自分の取り組みにも多大な影響を受 けました。この漫画は、悪の魔法使 いとの戦闘シーンよりも、多くのページが獣の騎士団と「メンター」として騎士団を支える動物の「従者」 たちとのミーティングのシーンに費 やされているのがおもしろい。従者は、カジキマグロ以外は カマキリや猫など小動物で、 騎士たちはまるでペットのような感覚に心を開き、言いにくいことも平然と投げかける「雑さ」を許せる関係ができあがっていきます。地域にもそういう存在が必要なのではと気づかされ、自分の企画にも生かしました。地域おこしに取り組んでいる人たちが騎士団で、従者がウサヒです。「ご当地キャラにこれくらいならさせても許されるだろう」という「雑に扱える安心感」が、地域の人とウサヒを結びつける力にもなるからです。
また、この漫画を全巻読めば「U理論」も理解できるでしょう。U理論とは、過去に例のない解決策を見出し、イノベーションを起こすための理論。悪の魔法使いを倒すために、騎士団は自分たちの能力を開発し、未来のために今どんな修行が必要かと対話を重ねながら、進むべき道筋を構築していきます。これは、ご当地キャラクター以外の地域おこしにも役立つ知見になるはずです。
もう一冊も漫画で、『トクサツガガガ』です。キャラクター業を営むとき、アクターと観客の2つの視点を持つことを僕は大切にしています。例えば、「アクターとしては新しい技で演じたいのに、観客は"いつもの"を望んでいる」といった二律背反する困難に対して、その両極の視点を行き来しつつ、いかに折り合いをつけ、おもしろい現場をつくっていくか。それはまさに、特撮現場と着ぐるみの現場に共通するテーマで、強い共感を覚えます。同時に、仕事や人生の困難を乗り越えようと頑張っているすべての人にも、愛と勇気を与えてくれるに違いありません。