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ケニアのお母さんと子どもたちのために -パナソニックと塩野義製薬が協力-

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途上国の無電化地域に、ソーラーランタンや太陽光発電システムを届けるパナソニックのLIGHT UP THE FUTURE(LUTF)。貧困の解消という“あかり”を掲げて10年以上にわたり活動を続け、アジア、アフリカ、中南米など30か国以上に広がっています。

目次

電気を利用して健康な暮らしを

ソーラーランタンや太陽光発電システムが活用される場所はさまざまで、そのひとつが診療所です。「診療所に照明や電気がないため、十分な検査や治療ができず、遠くの病院まで通わなければなりません。電気があれば適切な医療を受けられ、地域の人々が健康に働くことができます。それが貧困の解消につながると思います」とLUTFを担当しているパナソニック企業市民活動推進部無電化・学び支援ユニットのユニットリーダー、多田直之さんは、電気と健康・医療の関係について語ります。

実際、ソーラーランタン10万台プロジェクトでは、ミャンマーやフィリピンなどの診療所に灯りを届け、夜間の出産や手術ができるようになりました。2018年から実施されたパナソニックの創業100周年記念事業「無電化地域ソリューション」では、国際NGOワールド・ビジョン・ジャパンとともにケニアで「電化による生活改善支援」に取り組みました。太陽光発電・蓄電システム、ソーラーポンプ、ソーラーランタンなどを提供。学校では子どもの学習支援や大人の識字教室、敷地内でのトマト栽培とその販売を行い、診療所では夜間診療ができるようになり、冷蔵庫の活用でワクチンの接種数も増えています。

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フィリピンの診療所では妊産婦の検診にソーラーランタンを利用。
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小学校の敷地内につくった畑で、生徒や職員たちが野菜を栽培。太陽光パネルを備えた電動ポンプで川から水を汲み上げて利用しています。
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©World Vision
巡回診療による赤ちゃんへのワクチン接種

危険をともなう妊娠・出産

今、パナソニックは、塩野義製薬、ワールド・ビジョン・ジャパンと協力し、ケニアのお母さんたちが安心して妊娠・出産でき、子どもたちの健康を守るための取り組みを進めています。

そもそも、お母さんと子どもの健康は国際的な優先課題の一つであり、途上国での妊娠・出産は、私たちが考えている以上に過酷です。ケニアの妊産婦死亡率は出生10万人あたり342人で、日本の68倍*に上ります。5歳未満児の死亡率は、日本では出生1,000人あたり2人であるのに対し、ケニアでは43人*。新生児の死亡要因は、早産合併症、出産時仮死および出生時外傷などで、母親の出産時の要因が大きく影響しています。いまだにケニアでは出産は危険を伴うものであり、赤ちゃんの命が失われてしまうことも多いのです。

途上国で安全に出産できない理由はいくつかあります。水や衛生環境がよくないこと。医療施設が遠く、出産前の検診などが不十分で、自宅出産が多いこと。出産施設はあっても医薬品や医療スタッフが足りず、十分な医療サービスが受けられないことなど。また、亡くなってしまう新生児や5歳未満児の多くが、低体重や下痢症、マラリア、肺炎、敗血症といった予防可能な死だと言われています。安全な水が得られる仕組みや衛生環境の整備、栄養状態の改善、医療へのアクセスや栄養への知識の必要性が感じられます。

*The State of the World’s Children 2021 On My Mind: Promoting, protecting and caring for children’s mental health.(UNICEF)

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LUTFとM2M-PJの出会い

さて、ケニアで進んでいるパナソニックと塩野義製薬の協力。「無電化地域ソリューションは、2021年に終了。継続してできることはないかと考えていたときに、塩野義製薬の『Mother to Mother SHIONOGI Project(M2M-PJ)』と出会いました」と、多田さんはその始まりを説明します。

M2M-PJは、2015年から塩野義製薬が取り組んでいる社会貢献プロジェクト。社会の持続的な繁栄の基盤となる“子ども”の健康を願い、お母さんと子どもたちを応援する取り組み。第1期ではケニア南西部のナロク県イララマタク地域に診療所や産科棟を建設し、コミュニティの保健人材や地域住民へ保健、衛生教育なども行ってきました。そこで、地域の医療が自立的かつ持続的に行なわれるために課題となっていたのが、電気でした。

「変圧器の不調で電気が不安定でした。解決したいと思っても、電気は自分たちの専門外。現地の課題を共有しながら、共に取り組める企業はないだろうかと考えていました」と塩野義製薬CSR推進部で、M2M-PJを担当する谷由香利さんは振り返ります。

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©World Vision
2人目をイララマタクのエランガタ・エンテリット診療所で出産。安心してお産ができたと言います。
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©World Vision
同じくエランガタ・エンテリット診療所で子どもの身長、体重などを測定する准医師。
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©World Vision
顕微鏡や遠心分離機などの検査機器が揃うエランガタ・エンテリットの臨床検査室。着任した技師が検査を実施します。
どちらもワールド・ビジョン・ジャパンと一緒に、ケニアのマサイ族が暮らす地域で活動していたこともあり、ここに両者の思いが一つになりました。

そして2022年5月、ナイロビから520km離れたインド洋に面したキリフィ県に建設されたリマ・ラ・ペラ診療所と産科棟、スタッフの宿舎に、パナソニックが提供した太陽光発電システムが設置され、電気が使えるようになります。「いくら産科棟があっても、そこで適切な医療サービスが提供されなければ、妊産婦の安全は保証されません。電気が通ることで診療所にあるさまざまな検査機器が使え、1か所で検査、診断、治療が行えるようになります。また、ガス冷蔵庫を使用して保存していたワクチンを、電気冷蔵庫で安全に保管でき、夜間の診療や出産にも対応できるようになります」と谷さんは電気の必要性をあらためて実感しています。「生命関連企業の一員として、出産という命が生まれる瞬間に関わることが、ケニアの持続的な繁栄の基盤をつくることにもつながると信じています」と誇りをもって谷さんは取り組んでいます。

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©World Vision
2018年にケニア政府が開設したリマ・ラ・ペラ診療所。今回の支援で産科室とスタッフの宿舎が新設されました。

ここからがスタート

診療所が建ち、太陽光発電システムが設置されますが、ここがゴールではないと、二人ともが強調します。「むしろここからがスタートだと思っています」と多田さん。「私たちの取り組みによって、妊産婦や乳幼児の健康や栄養状態がどう変化したのかを検証することが必要ですし、より改善されるように継続的に協力していきたい」。谷さんも思いは同じです。「M2M-PJによって建設された診療所を住民たちが“自分たちのもの”と意識し、自分たちで『電気がない』『薬が届かない』などの不具合や要求の声をあげ、発信できるようになってほしい。そのための住民教育も行っています」

M2M-PJの診療所は、いずれはケニアの人々の手で継続的に運営されることが、地域全体の健康状態の向上につながるはずです。

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©World Vision
地域の医療を担うリマ・ラ・ペラ診療所。1か月に200件ほどの外来診療を行っています。電気が使えるようになれば、より充実した医療を提供できます。

コレクティブインパクトのある取り組み

健康や貧困はさまざまな要因が絡み合い、ひとつのアプローチだけで解決につなげることはむずかしいとも言われます。そんな課題に複数の組織(企業や行政、NGO/NPOなど)が協力し、効果を最大化することをコレクティブインパクトといいます。ケニアで行われているパナソニックと塩野義製薬、ワールド・ビジョン・ジャパンによる協業は、まさにコレクティブインパクトをもたらしている取り組みといえます。

さらに今回の協力を通して、それぞれに学びがあったと二人は言います。「LUTFの目的は、貧困の解消。そのために教育や健康、収入の向上につながるあかりや電気を提供していますが、対象がとても広い。ターゲットを母親と子ども、と明確に定めているM2M-PJの姿勢は、LUTFを進める上でも参考になります」と多田さん。谷さんも「LUTFと組むことで、電気があれば解決できることが多いと実感しましたし、解決までの時間も短くなりました。健康の大敵は貧困といわれるなかで、あかりや電気を届けるだけではなく、経済的な自立支援なども行うLUTFから学ぶところは多いです」と返します。

より多くの人に電気がない世界の現状を知っていただき、その解決に協力するためにLUTFが行っている「みんなで”AKARI”アクション」の話を聞いた谷さんは、「私たちも、そんな取り組みにもチャレンジしていきたいですね」と意欲を見せます。二人のやりとりからは、お互いが刺激し合うことで、支援が広がる未来が伝わってきます。

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「みんなで”AKARI”アクション」の古本・ディスク募金で、ミャンマーの首都ヤンゴン市内の児童養護施設にソーラーランタンを寄贈しました。学習環境の改善に役立っています。

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