指出一正が選ぶ、道の駅をつくる本5冊
コロナ禍の中では、朔がいてくれたことに助けられました。人と人の間に生き物がいるとギスギスした気持ちがなくなるし、朔が真ん中にいることで家族のつながりを再確認できる気がしました。朔は間違いなく家族の一員で、息子は朔のことを兄妹だと言っています。
僕たちは家族のありようが変化している時代に生きています。家族はいちばん小さな社会の単位。家族のあり方が変われば、そこからまちが変わっていくこともあるでしょう。
だからこそ、家族の変化というものを見つめるのは大切です。最近は僕たちのように、人間以外のメンバーも家族に含める人が多くなってきたように思います。かけがえのない存在としての生き物と人間の関係が、社会の基盤をつくるうえで参考となり、応用されていくことが、これからは重要になっていくはずです。
家族で車で出かけるときは、朔も当然一緒です。最近の道の駅は犬同伴で入れる休憩スペースがあったり、ドッグランが併設されていたりするところもあり、家族としては非常にうれしいです。道の駅が、家族としての犬や生き物のことを考え始めてくれたのでしょう。これもひとつのウェルビーイングです。犬に限らず、そういう新しい家族の形を見据えた道の駅づくりはさらに広がってほしいですね。そんな道の駅をつくろうとするのであれば、人間以外の生き物のための設備を充実させることで、結果的に人間のウェルビーイングの度合いも高まっていくでしょう。
今回ご紹介するのは、僕の考える「人間と動物の関係性」を捉えた本で、『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』は、猫と少女の交流の物語です。万城目学さんの人を幸せにする文章の運びが好きで、この作品でも優しい気持ちになれました。
『化け猫あんずちゃん』は長生きしているうちに化け猫になってしまったお寺の猫の話。村の人たちはあんずちゃんを怖がるわけでもなく、そこに普通にいる人間と対等なものとして一緒にお互いに困ったり喜んだりします。バイトでお給料をもらったり、マイペースでおもしろいんです。人間と動物の関係のひとつの答えだとしみじみ思っています。