「実践人口」を増やすための合言葉が「やってこ!」である。「やってこ!」が世代を超えたつながりを生み、ローカルをおもしろくする。畑つきの家を買って、タモリに近づこう!
長野市に移住して早4年。地方都市を拠点に東京から大自然まで縦横無尽に旅をしてきたが、コロナをきっかけに長野での滞在時間が増えたことで「もっと自由度の高い大自然のフィールドで暮らしたいな」と思うようになった。改めて地方移住の流れが加速しているが、2度目の拠点探しとなれば経験値が違う。各土地の特性を理解しながら、自治体の空き家情報を定期的にチェック。ここだけは譲れないポイントとして「庭から山の壮大な景色が見えること」を設定した。だって毎朝、四季折々の景色を見たいから。空に変化がないと、上を向いて歩こうなんて言えやしない。
理想の物件探し
一番おもしろいのは状態のいい古民家だろう。しかし、信濃町は豪雪に見舞われる影響なのか、なかなかイケてる古民家には巡り合えない。それでも執念で探した1軒目の候補は、古民家のリノベーション済み物件。そのまま住むことはできるが、どこか「余白」が少なく、つまらない。2軒目の候補は、湖畔沿いに建てられたボロボロすぎる元・民宿。50年以上前の法律で建てられたため、湖岸からすぐの場所に住める。一歩外に出たら海のような湖の景色が望めて、4000万円近くかけて改装すればとんでもない別荘になる……。そう、人里離れすぎたエリアにあるため、行政の除雪車が来ない。夏の別荘使いには申し分ないが、私は一年をとおして住みたい。定期的に家を空ける人間が、除雪ナシの家に冬場住んだら、もうジ・エンドだ。
悩みに悩み抜いて、決断に至るまで複数の物件に浮気し続けた。購入を決意したら、ライバルが現れて入札で争ったこともあった。それでも私の目の前に次々と「お、これは」とビンビンに感じる物件が出てくる。これは地方取材で培った理想の暮らしの物差しがしっかり機能したことと、長野県に移住した4年間の人との出会いが大きいのだろう。溜め込んだソーシャル・キャピタルが本命の物件を引き合わせてくれた。
オマケで新規就農
土地購入の煩雑な手続きを進めながら、仲間の建築士見習い(26歳)と天才と見込んでいる大工(25歳)とリノベーション計画を考える。人生初の住宅ローン2800万円を未来ある若手に託した。これもひとつの実践だ。野菜を育てて、薪を割り、火をおこす。全国で出合ったお酒や食材、調味料、知恵を継承し、料理を振る舞う自分が見えた。過去にこの連載で伝えた「タモリへの道」が、新たな家の中で叶うことだろう。