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サスティナビリティ

連載 | 毎日がサスティナブル!? —アムステルダムとニッポンのSDGs—

結婚とパートナーシップ

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オランダのパートナーシップ制度は、日本のそれとは大きく異なります。結婚同様に、保険や相続など、多くの部分で法的に認められているのです。もちろん同性婚も合法。その中で、今回は主に結婚とパートナーシップ制度の違いにフォーカス。結婚の意味ってなんだろう……。

ほぼ結婚!? オランダのパートナーシップ制度。

 果林さん、真理子さん熱望のテーマ、結婚やパートナーシップについて語りたいと思います。そして今回はソトコト編集部の竹中さんも参加です!

編集部・竹中(以下竹中) ごぶさたしてまーす! よろしくお願いします!

桑原果林(以下果林) 東京・銀座『ATELIER MUJI GINZA』でのイベント以来ですね!

竹中 懐かしい! 2019年11月号のアムステルダム特集号の告知イベント、しましたね〜。

桑原真理子(以下真理子) 私はアムステルダム取材以来。よろしくお願いします!

 さてさて、竹中さんもこのテーマは前から気になっていたそうで、今回は4人で話していきたいと思います!

果林 早速ですけど、私は結婚していないけどパートナーシップ制度でパートナーとして登録しています。

 日本でも都市によってパートナーシップ制度が採用されていますが、日本のそれとはだいぶ違うんですよね?

果林 オランダではパートナーシップ制度によって、正式なパートナーとして認められていて、結婚するのと同じ扱いになっているんです。こっちのパートナーシップ制度は、もともと同性愛カップルのために生まれたもので、制度が誕生して今年でちょうど20年になります。公的な効力は結婚と一緒で、差がありません。

 世界で一番早かったんですね! そして法的にも認められているんですね。日本のパートナーシップは宣言をできるだけで、社会保険の扶養に入れなかったり、遺産の相続をできなかったり……。

果林 オランダでは、役所の担当官立ち合いのもと「I do(誓います)」というようなセリフを言うか、言わないかの違いかなあ、結婚との違いは(笑)。私はパートナーシップ登録の時に一応言っておきましたけど、結婚でなければ義務ではないです。若い人にはパートナーシップ制度のほうが人気ありますね。

真理子 果林たちはパートナーシップに登録したのは子どもが出来てからでしょ?

果林 そうそう。子どもが出来て、「すぐにやんなきゃ!」って。そうしないと、生まれた時の手続きが面倒になってくるので。

真理子 父親を書面で証明するとか手続きが多くなるんです。結婚やパートナーシップに登録していないと。

果林 あとどっちかが事故にあったときに、身内しか会えなかったり、見舞いに行けなかったりとか、そういうのが心配でもあるから、大事な関係の人とは、子どもがいなかったとしても、結婚かパートナーシップ制度には登録したいと思いましたね。

オランダでパートナーシップ制度が人気の理由。

竹中 なぜ若い人にパートナーシップ制度が人気なんですか?

果林 えー、なんだろう。結婚は古臭いと思うからかなあ(笑)。イメージですけど、結婚を選ぶ人は、結婚式をちゃんとあげて、苗字も変えて、たいていは旦那さんの苗字にして、って一通りやっちゃう。そこまでやりたくない人とか個としてのアイデンティティを大事にする人は、パートナーシップを選ぶって感じなのかなって。必ずしもそうじゃないですけどね。

真理子 2 in1でありたいか、1+1になりたいか、の違いですかね、あくまで感覚として。つまり例えるなら、2in1シャンプーリンスにしたいか、シャンプーとリンスを別々にしたいか、という違い(笑)。こっちでは、結婚やパートナーシップを選択する前から、当然だけど一緒に生活してるし、子どもを授かっている人もいるので、結婚やパートナーシップ制度に対してあまり意味というか、価値を見出していない人が多い。便宜上、パートナーシップを結んでいる人も多いですし。

果林 一方で、結婚をあえて選ぶ若者が増えているってニュースもありました。みんなパートナーシップ制度を選ぶから、結婚のほうがロマンチックってイメージがあるようで、盛大なパーティしたりする若者が増えているって伝えていました。

竹中 ちなみに、プロポーズ的なものってあるんですか?

果林 私はされてません(笑)。

真理子 子どもができたタイミングで「じゃあ、パートナーシップする?」「結婚する?」って感じじゃないですかね。こっちでは婚約もないし、指輪もないですし。プラクティカルな国民性なので。

竹中 そこはロマンチックではないんですね(笑)。

結婚の意味とは。

 話を聞いていて、結婚やパートナーシップは単なる制度的なものって感じがしました。

真理子 結婚したにせよ、パートナーシップを選択したにせよ、銀行の口座も別だし、仕事も続けるし、日本でもだいぶ変わってきたとは思いますけど、結婚してその家に入る、みたいな感覚はこっちではないと思いますね。だから、結婚やパートナーシップって、普段の生活にほとんど影響がないんですよね。

 日本だと、結婚=相手の家に入る、という雰囲気はまだだいぶあります。

真理子 結婚式でお嫁さんになる人が、涙しながら両親に感謝の手紙を読むのがあるじゃないですか。オランダだったら感謝とか愛情表現は普段の会話の中でしていることだから、私は日本の家庭でも普段からそういう風にできたらいいのに、って思います。そんな披露宴の風習も、「向こうの家に入ります」みたいな印象を受けます。

 花婿側は手紙を読んだりすることはあまりないですもんね……。

真理子 本人がやりたいならやるべきだと思うけど、みんなが同じことをしているのが不思議。あれを見ると、日本って女性がまだまだがんじがらめなのかなあって思ってしまいます。しかも結婚って、本人のためというよりは、親族のためにやる感じが強い。竹中さんはそういうプレッシャー感じませんか?

竹中 日々プレッシャーしかないです(笑)。東京に住んでいると、私のちょっと上の40代のお姉さま方世代にも結婚していない人が多いですが、すごく楽しそうにしてて。なんなら「40代が一番楽しい!」って、みんな自立し、今を謳歌し生きている。私も「そうだよね!」って思いつつ、でも都市を離れたり、地域によっては“行き遅れ感”を感じることがすごくあるんです。

真理子 だって、メディアでもそうなんですもん! 行き遅れとか、結婚できないとか、誰も貰ってくれない負け組、とか。それを女性コメディアンがお笑いにしちゃっているし、あれは不快。オランダでは、一人で寂しそうねって思う人もいるかもしれないけど、少なくとも口には出さないです(笑)。

果林 結婚は個人の選択だから、一人でいられることへのリスペクトの感覚もあります。それに、離婚している人もたくさんいますからね……。

真理子 ちなみに、竹中さんはパートナーにはどういう条件を求めます?

竹中 よくわからないと言われるけれど、いろんなものを加味して“ジャガバターみたいな人”って言っています。いつ何時でも思考がネガティブになる、という人が苦手。だから芯からあったかい人という意味で……。お金でも、背丈でも、容姿よりもまずは。だから極論を言えば、仕事がなくてもいいです(笑)。ちなみに結婚相談所で結婚した友人によると、収入は大きな要因の一つみたいですね。まあ、それがすべてではないでしょうけど。

真理子 でも、本当の意味で安定を求めているのなら、自分で自立して生活の基盤をつくればいいわけだから、そういう意味ではパートナーはいらないと思います。オランダでも金銭的に自立している女性は全体の3割しかおらず、結果的に生活の面倒を見てもらっているオランダ人女性は多いですけど、パートナーに求めるものはやはり金銭的な安定ではなく、共有できる価値観なんじゃないかなって思います。

果林 私も相性のいいパートナー、人生のパートナーを見つけることが一番だと思います。

竹中 たしかに、そこに尽きますね……。結婚以前に、パートナーが大切なんだって、今日はそんな解が見つかりました。

 僕は結婚する意味ってあるのだろうかって、思ってきました……。

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桑原果林 くわはら・かりん
コーディネーター、翻訳者、通訳者。日本で日蘭バイリンガルとして育ち、2010年渡蘭。レインワードアカデミー美術大学文化遺産学科でミュゼオロジーを学び、在学中に姉・真理子と共に通訳・翻訳事務所So Communicationsをアムステルダムにて設立。メディア・教育・介護・農業・デザイン&アートなど多岐にわたる翻訳・通訳・コーディネート業務を行い、日本とオランダの交流のサポートにつとめる。
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桑原真理子 くわはら・まりこ
アーティスト。東京都生まれ。 父が日本人、母がオランダ人。19歳の時にオランダへ渡る。2011年、ヘリット・リートフェルト・アカデミー(アムステルダム)、グラフィックデザイン科卒業。過疎地域で出会った人々との対話を元に、ドキュメンタリー形式の出版物、映像作品を制作している。
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乾祐綺 いぬい・ゆき
編集者、フォトジャーナリスト。写真家でもあった祖父の影響から、幼少期より写真を始める。海、環境、暮らしなどを主なテーマに、日本各地はもちろん、海外への取材を続ける。未来をつくるSDGsマガジン『ソトコト』、ANA機内誌『翼の王国』誌上などで、写真と記事を掲載。日本と海外、それぞれのソーシャルグッドな文化や活動を双方向で伝えることをテーマに活動する株式会社ニッポン工房代表。

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